第48話:「みゆきと、雨の日のポエム対決」
今回のテーマは「雨」と「詩」というちょっと文学的(?)な組み合わせ。
みゆきの素朴な表現と、くるみの謎ポエムセンスが光る回でした。
その日は朝からしとしと雨が降っていた。
傘を忘れたみゆきは、昇降口でうなだれる。
「うぅ……なんで今日に限って忘れちゃうのよ……」
そこに現れたのは、クラスメイトのくるみ。
「んー? じゃあ、私の傘に入れてあげる代わりにさ……詩で勝負しない?」
「は?」
■ポエム、それは心の叫び
くるみ曰く、「雨の日は感受性が高まる」とのこと。
「そういう日はポエムで感情をぶつけ合うのが一番なのよ!いくよ、第一句!」
くるみ、腕を広げて大仰に詠む。
「雨粒は 窓をつたって 涙のようね……くぅ~! エモい!」
「待って、それ俳句じゃないし!」
仕方なく、みゆきも挑む。
「……雨音に かき消されたのは お母さんの“洗濯しといてね”だった……」
「生活感~ッ!!」
■廊下ポエムバトル開催
何やら面白そうな様子に、通りすがりの生徒たちも集まってくる。
「ちょっとそれ、何やってんの?」「雨の日の詩バトルです」「へぇ〜おもろ!」
そして始まる即興ポエムバトル。
テーマは「びしょぬれ」「傘と恋心」「帰りたくない雨の午後」など多岐にわたり――
「びしょぬれの 心も服も もうどうでもいい」
「雨とともに 私の恋も 流れ落ちた」
「……みんな、案外詩人なのね……」
■そして、傘の下
放課後。
結局、傘を忘れた生徒たちは教室で足止めを食らっていた。
そんな中、みゆきのもとへそっと傘を差し出すくるみ。
「ほら、ポエムバトル、私の勝ちってことでしょ? だから送ってあげる」
「……その論理はよくわかんないけど、ありがと」
「詩は理屈じゃないのよ!」
二人は笑いながら、雨の中を歩き出した。
エピローグ:
放課後の図書室。
雨は、いつの間にか止んでいた。
「……あれ? 雨、やんでる」
窓の外を見たことはが、ぽつりと呟いた。
「えー! じゃあ私たちの詩、雨を呼んじゃったってこと!?」
くるみが大げさに言って、みんなで笑った。
「詩っていうより、呪文じゃなかった?」
さくらの冷静なツッコミに、みゆきはうつむきながらも、ふふっと笑う。
「でも、なんか……よかったかも」
小さな声で、みゆきが言った。
誰かに届かなくても、評価されなくても。
自分の中から言葉を紡ぐって、ちょっとだけ勇気がいることだった。
「またやろうよ。今度は“晴れの日のポエム対決”とかさ」
ことはが笑顔で言ったそのとき、
窓の外に、一筋の夕焼けが差し込んできた。
ページの間に挟まれた、ちょっとした詩みたいな時間。
それが、彼女たちにとっての宝物になることを――
きっと誰もが、うっすら感じていた。
そしてまた、日常という詩が始まる。
何気なくて、でもとびきり愛おしい“わたしたち”の物語が。
中学生って、こういう“よくわからないけど楽しい”イベントを
急に始めがちですよね。
まさかの詩バトルが廊下で始まるというカオス、もっとやれ感がありました(笑)




