第46話:「りんかと、ちょっと真面目なバレンタイン」
今回は、普段はサバサバ・クールなりんかのちょっと真剣な姿を描いてみました。
誰にだって「伝えたい想い」はある。
そんな気持ちに、季節の魔法がそっと後押ししてくれるようなお話です。
2月。空気がちょっと冷たくて、でもどこか甘い香りが漂う季節。
この日は――そう、バレンタインデー。
■バレンタインの朝は、戦場である
「ちょっと!誰か早く教室のロッカー開けて!わたし、すでに5個入ってるってば!」
「え、逆にそれ自慢でしょ!?」
女子同士のチョコの交換、いや、"戦"がすでに開幕していた。
そんな中、淡々と教室に現れるのが――りんか。
「……あれ、りんかは? チョコ持ってないの?」
「うん、今年は……ひとつだけ、あげる予定があるから」
■りんかの“本命”作戦
いつもはクールなりんかだけど、この日はちょっと違う。
「……お菓子作るの、苦手なんだけど。だから練習した」
そう言って彼女が取り出したのは、少しだけ不格好な手作りチョコ。
ことはが小さく目を見張る。
「……すごい。りんかがそこまで……」
「バレンタインって、みんなが騒ぐから苦手だったけど、でも……伝えたいこと、あるから」
■相手は、あの子?
放課後、りんかは一人で校庭の裏へ。
そこには、軽音部の先輩。
いつも廊下ですれ違うだけだったけど、ギターを弾く姿が印象的で――
「……あの、これ。受け取ってもらえますか」
少しの沈黙。先輩が、にっこり笑って言った。
「ありがとう。すごく嬉しい」
りんかは、少しだけ顔を赤らめて、深く頭を下げた。
エピローグ:
教室に戻ると、みゆきがからかってきた。
「おっかえり~!やった?成功?どうだった~?」
「うるさい。ちょっと黙ってて」
「顔真っ赤なんですけど~!はい、記録班です~!」
こうして、りんかの“ちょっと真面目な”バレンタインは、
静かに、でも確かに幕を閉じた。
バレンタインって、甘いだけじゃないですよね。
少し照れくさくて、ちょっと切なくて、それでも前に踏み出す力がある。
りんかの背中を押したあの一歩、きっと何かを変えたはずです。




