第38話:「かえでと、部活勧誘(という名の拉致)」
勧誘って、される方は大体びっくりするものですよね。
それが「りんか式」だと、もはやほぼ連行(笑)
放課後の廊下、かえでは何やら嫌な予感を感じていた。
「……この静けさ、フラグ立ってる気がする」
と、言い終わる前に――
「かえでーっ!!ちょっと来てぇーっ!!」
元気すぎる声と共に、りんか(生徒会兼陸上部の助っ人)が突撃してきた。
「まって、まだ何も言ってないのに!?」
「今、うちの部活、人が足りなくてね!?来て!お願い!今すぐ!」
「ちょっと!?ひっぱらないで!これは拉致です!!」
■突然の入部体験(予定になかった)
気づけば、かえでは陸上部のグラウンドに立っていた。
「私、文化部っぽいって、前に言ってなかったっけ……?」
「うん、知ってる。でもね、今日だけだから!走るだけ!それだけ!」
「……その“だけ”が信用ならないのは気のせいですか?」
りんかの笑顔は、なんだかんだで最強の説得力だった。
■予想外の身体能力
「じゃ、ウォームアップ代わりに一周だけ走ってみて~」
かえではしぶしぶ走り出した。
――数分後。
「……かえで先輩、普通に速い……」
「ねぇ、むしろ運動部向きなんじゃ……?」
「待って、なんか知らない才能発見されてる!?」
「やばい、これ本格的にスカウトされる流れ!?」
本人は完全に困惑していた。
■逃げ出すかえで
「よし、じゃあ次はタイム計測を――」
「や ら な い よ!?これ以上深入りしたら帰れなくなるって!!」
全力疾走で部室から逃げ出すかえで。
「さすが運動できる子は逃げ足も早いな……」
りんかは、なぜか満足そうだった。
エピローグ:
その日の帰り道。
「……結局、何だったんだ、あれ……」
かえではゼェゼェ言いながらも、何とか文化部の自分を死守した。
「私の平穏、奪わせないからな……!」
でも、少しだけ――楽しかったことは、秘密にしておこうと思った。
かえでの隠れた運動神経が垣間見える一話でした。
平穏を望むかえでの静かな抵抗と、りんかの明るい無茶ぶりが好対照ですね!




