第32話:「かえでと、まさかの体育祭代表就任!?(本人超困惑)」
今回は、完全に“運命のいたずら”で巻き込まれたかえでが主役。
走ることに苦手意識のある子が、仲間の応援でちょっと頑張る……。
そんな、青春っぽさもほんのり混ぜ込んだお話です。
昼休み、教室に響くアナウンス。
「2年1組の篠原かえでさん、至急職員室まで来てください」
かえではお弁当の箸を止めて固まった。
「えっ……私なんかやった……?宿題……出したよね……?」
「職員室呼び出し=事件」理論が発動した瞬間だった。
ことはは苦笑いしつつも、「大丈夫。たぶん通知表の記載ミスとかじゃない?」と慰める。
しかし、ことはの予想は半分当たりで、半分どえらく外れていた。
■まさかの体育祭代表
職員室で待っていた体育担当の先生が、笑顔でこう言った。
「かえでさん、今年の2年生リレー代表、お願いね!」
「はっっっ……???」
――話をまとめるとこうだった。
・去年の成績と、体力測定の記録から自動選出
・リレー代表は“体力が安定していて、転ばなさそうな人”優先
・足が速くない=転ばない、という謎理論が採用された結果、
⇒「無難な人材」=かえで に決定。
「え、いや私、50メートル走で“途中で鳩に驚いて止まった”記録持ってるんですけど……」
■作戦会議、開催
放課後、図書室に集まった3人。
「代表決定はもう覆らないらしい。これは、走るしかない」
「じゃあ、トレーニングだね!ことはの筋トレメニューで特訓しよう!」
「え、ことはってそんな体育会系だったっけ……?」
「いや、私が監修するのは“やらなくても痩せた気になる運動法”だから」
「だめじゃん!!」
結果、校庭でみゆきのノリノリ音楽に合わせて“リズムに乗るだけダンス練習”を開始する羽目に。
■当日、そして……
体育祭当日。バトンを受け取ったかえでは、息を呑む観客の視線の中、走り出す。
「リレーとか……中学入ってから初めてだし!!」
走りながら、いろんなことを思い出す。
“転んだらどうしよう”
“あの時、笑ってくれた二人の顔”
“もういいや、バカやってきたんだし最後までやろう!”
――結果は、まさかの2位。
「やっぱり無難な人材って、偉大だったのかも……」
先生のコメントに、かえではそっとため息をついた。
エピローグ:
その夜、かえではいつもの3人のグループチャットを開いた。
【ことは】
『おつかれー!ちゃんと転ばなかったのえらすぎ』
【みゆき】
『かえでの走り、マジで感動した!あと2位で喜びすぎて泣いた人初めて見た笑』
かえではスマホを持ったまま、布団の中で小さく笑った。
【かえで】
『うん、ありがとう。……次の体育祭は、応援席から全力応援する側がいいな』
画面の向こうで、また笑っているふたりの顔が見える気がした。
“選ばれること”って、自分が得意とか好きとか関係ない時もあります。
でも、その時に支えてくれる友だちがいれば、ちょっとだけ前に進める――
かえでの2位は、まさにそんな「友情の記録」でした。




