第2話:「お弁当を忘れた日のサバイバル戦争」
お昼ごはん、それは学生にとって聖なる儀式。
だけど、もしその神聖な弁当を忘れてきたら……?
今回は、お腹を空かせた天然少女・ことはが巻き起こす“サバイバル昼休み”をお送りします。
友情って、おにぎりの味がするかもしれない。
昼休み。
おなかが空く。それは人間として当然のこと。
「しおん~、ねぇ~……お弁当、分けてくれませんかぁ~」
「その声と顔やめなさい、ことは。何回目だと思ってるの、この展開」
ことはは、机に突っ伏したままお腹をさすっている。
さっきから「ぐぅぅ~……」という悲しげなSEが教室に響いていた。
「で、なに? またお弁当忘れたの?」
「うん。冷蔵庫に、昨日の夜ごはんと一緒に鎮座してた」
「冷たいままの弁当箱が泣いてるよ」
しおんは仕方なさそうに、自分のお弁当箱をことはに見せる。
中身は卵焼き、ウインナー、ブロッコリー、そしてお母さんが作ったという“鬼かわいいおにぎり”2個。
「見てるだけでご飯三杯いける」
「食べるのは三杯じゃなくておにぎり半分で我慢して」
そこへ現れる、桐谷りな先輩。
「……あげないよ」
「なにも言ってませんけど!? まだ一言も!」
「顔に『りな先輩にたかろう』って書いてある」
「どんな顔!? それどういう表情!?」
しかしりな先輩、実はお弁当ではなくパン派で、購買で買ってくるスタイル。
「じゃあことは、購買でパン買ってくればいいじゃん」
「それができたらこんなに餓死アピールしませんよ……財布、家に忘れてきました……」
「コンボかよ!!!」
するとそこに現れる、同じクラスの謎キャラ・朝霧ゆい(中1)。
無口で独特な雰囲気の1年生で、ことはに密かに憧れているとかいないとか。
「……これ、食べかけだけど」
「え!? 食べかけ!? いやありがとうだけども!? え!? 食べかけ!?」
彼女の差し出したパンは、確かにちょっと歯型がついていた。
「ご、ごめん。やっぱり自分でがんばる」
「……残念」
「なにこの哀しみのやり取り!?」
そして最後に、ことはが選んだ最終手段――
「……机の中に、非常用せんべいをしまっていたのだ!」
「って、それ去年のじゃん!? いろいろダメだよそれ!!」
「食べてみせよう、この意志が! 私の命の灯火となる!!」
パキッ
「――わぁ、せんべいって、こういう味だったんですね……世界が回ってる……」
「やめて!? それは“灯火”じゃなくて“消灯”だから!!」
エピローグ:
なんだかんだで、結局みんなで少しずつおかずを分け合って、ことはは無事(?)生還した。
「……お弁当って、温かいだけじゃないんだね。心が入ってるんだ……」
「深いこと言ってるけど、背景には賞味期限切れせんべいだからな?」
「むしろそのせんべいにこそ哲学があったのかも……」
何気ない昼休み。
だけど、誰かの優しさとツッコミがあれば、どんなハプニングも乗り越えられる。
「でもしおん、明日も分けてね?」
「明日こそ弁当持ってこいよ!!」
今回も読んでくださってありがとうございました!
お弁当って、ただの食事じゃなくて、その日の元気や温かさにもなるんですよね。
でもことはにかかると、なんか毎回騒がしい方向にいくのが不思議です(笑)
次回は「転んだ理由は“見栄”でした」。
またどうでもいいことで全力を出す彼女たちに、ぜひお付き合いください!