2.オニビト
「!!!」
藪を抜けた先には山の上まで続く長い階段があった。
「なに!ここ!」
「すごいでしょー!」
彼女は、まるで自分のことのように自慢げに答えた。
「まっ!行き先は階段の上なんだけどね!」
そういうと彼女は話はじめた。
「藪を抜けたら二又に道が分かれてたじゃん?」
「ここって昔は普通に使ってた道なんだって。いわゆる古道ってやつ。」
「で!この古道の途中にあるこの階段をのぼると神社があるの!」
「その名も!鬼神社!」
「鬼神社ー!!!」
俺は、その不気味な名前に少しびっくりしてしまった。
「オニってあの鬼って書くんですよね...?」
「そそ!」
「えっ...ちなみに階段の上にはなにが...?」
「鬼人がいるよ!」
「えぇ!階段あがると鬼がぁ!!!」
「え?いるよ?」
彼女は何事もないかのように答えた。
「えぇーーー!!!」
「って言っても鬼人ね」
「みんな鬼って聞いたら怖がるけど、大昔は私たち人間と一緒に生活してたんだって」
「で、上にいる鬼人は全然怖くないよ!」
そう言うと彼女はまた親指を突き立てながら自慢げにしている。
「あのー...鬼人って鬼とはちがうんですか...?」
「んとねー。一般的に鬼のイメージってモンスターみたいなイメージじゃん?」
「でも鬼人はどちらかというと、ほぼ人間なの!角があったり特殊な能力があったりする違いはあるけどね!」
「あとね!人間と鬼人は元々同じ先祖から派生してるんだって!だから元は同じ!」
「そうなんですね...」
俺は、その情報量の多さに頭が混乱していた。
「でもね...古来は区別されず共存していたのに、ある時突然迫害されてしまったんだって...」
「元々、鬼人の人口は少ないこともあってどんどん追いやられてしまって...」
「そんな歴史があったんですか...」
そういうと2人は再び歩き出した。
「到着ー!」
どれくらいの段数をのぼったのだろうか。
ついにカズトは目的地に到着した。
「...ここが鬼神社か」
到着した安堵と緊張をよそに目の前にいた彼女がスタスタと歩いていく。
「あれぇ〜。みんなどこ行っちゃったんだろ〜」
彼女はそう言うと社殿の方へ向かう。
「イチカ〜。ニコ〜。来たよ〜」
すると、奥から2つの人影がこちらに歩いてくるのが見えた。
「もしかして!鬼人...」
「...いきなり襲ってきたらどうしよう...」
そう考えているうちに、その2つの人影が目の前に現れ正体を現した。
「うわぁ!」
「思ってたよりちっちゃ!」
目の前に現れたのは、人間でいえば小学生くらいの大きさの2人だったのだ。
「お前、初対面なのに失礼だな」
角が1つ生えている1人が言った。
「ほんとほんと!失礼極まりないですぅ!」
角が2つ生えているもう1人も続けて言った。
「あ...ごめんなさい」
すると話に割って入るように彼女が話はじめた。
「一角の子がイチカちゃんで、二角の子がニコちゃんね。」
「あ!あとわたしの名前はフタバね。覚えといて!」
そういえば名前聞いてなかったなと思いながらカズトは頷いた。
そしてトドメを刺すようにフタバが言う。
「あとタメだから敬語いらないから」
「...はい」
今更言う?と思いつつカズトは返事をした。
「それでね。イチカとニコがカズトに話があるんだって」
「なるほど。それで俺はここにつれてこられたのか...」
「それで、お話って?」
カズトがイチカとニコに問う。
「お前見えてるんだろ?」
少し考えてからカズトが答えた。
「...見えてるって...黒いモヤのこと?」
「そうだ」
「今は黒いモヤかもしれない。だが、直にその正体がしっかり見えるようになる」
「だから今後気を付けろ」
「黒いモヤに気を付ける?」
カズトが聞き返した。
「あぁ。黒いモヤの正体、鬼人にな」
「鬼人!?」