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「ねえねえ、君、ギルドに入りませんか?」
振り返ると
「うわっ」
と声をだして人のよさそうな顔の男の人がびっくりした顔で固まっていた。
どうしたんだろう。
「わたしですか?」
一応聞いてみる。
「あ。うん。えと・・・。」
気を取り直したように話しかけてきた。
「綺麗だね。びっくりしちゃったよ」
「はぁ」
ん?ああそうか、そういえば私ってば美人さんに変身してたなー。
もしかして、周りから視線を集めているのは私が綺麗だから・・・なんてね。あっはっは。
「ギルドですか。特に決まりってありますか?」
「あ、みんな仲良くってくらいかな」
「んじゃ、体験で入ってみます」
「ずいぶんアッサリだね」
「楽しそうだから」
「ん、じゃあシステムブック出してね」
言われてシステムブックを取り出すと画面にメッセージが表示された。
ギルド:幻影騎士団から勧誘を受けています。入りますか?
う、なんてこっ恥ずかしい名前のギルドなんだ・・・。頭を抱えて悶絶したくなる。
この名前が意識したら見える名前の上に来るわけですか。
どうどうとこれを掲げて生きていけと・・・。
ギルド名くらいは聞いておくべきだったよね。
やっぱりやめますって言おうかと思って目の前の人をチラッとみると、ニコニコしている。
そうだよね。入ってくれると思っちゃってるもんね。
「変わった名ですね」
「ん?そう?僕がこのギルドのマスターなんだけどね。この名前は友達と3日かけて考えたんだ」
「そ、そうですか」
ここでギルド名がちょっとなんて言える人間は少数に違いない・・・。
清水の舞台から飛び降りる気持ちで、はいを選ぶ。
ギルド幻影騎士団に入りましたのメッセージが聞こえる。
「ようこそ。よろしくね」
「よろしくお願いします」
「システムの設定のギルドボイスをオンにするとギルドのみんなに声が届くし、みんなの声も聞こえるようになるからね。やってみて挨拶をしてみてる?」
ポンポンと画面を指でたたきつつ操作するとギルドボイスオンにできた。
えーと、ギルドボイスオンにしている人は18人か。結構多いんだね。
ギルドボイスがオンになりましたとの声が聞こえたかと思うと急にガヤガヤしゃべっている声が聞こえるようになってびっくりした。
「あーあー」
ついついマイクのテストみたいにしてしまう。
同じようにシステムをいじっていたマスターにくすっと笑われてしまう。
なんか恥ずかしい。
しかもシンとしてしまった。なんか緊張するなー。
「はじめまして。はじめたばかりのLV3のエルフるしふぇです。体験で入隊しました。よろしくお願いします」
「初心者の町で勧誘しました。めちゃくちゃ美人のエルフさんだよ。みんなよろしくしてあげてね」
「マスターどこで口説いてるんだよ。最近見ないと思ったらそんなとこまで足を伸ばしてたのか」
「ギルド員増やしたいしね」
「ねえ、美人なの?」
「え」
なんて答えようかと思っているとマスターが勝手に答えてしまう。
「みとれちゃうくらいにね」
「おー、なんか見てみたくなった」
「俺も」
「私も」
「いっちゃうか」
え・・・。なんか大事になってきちゃったなーと思いつつ。どんどん初心者の町までやってくるお話になってしまった。これないって言った5名を除くと13名!
この町の人口が一気に増えちゃいそうです。
「えーと、みんな来るみたいだから、来たらまた紹介するね」
「え、えと、見たらがっかりするかもしれませんが・・・」
「ないでしょ」
マスターは軽くいなすし・・。
そりゃ美人になってるのは知ってるけど、そこまで自信満々になれないよ。小市民だしね。
「大丈夫だよー。そのときはみんなでマスターをぼこるから」
「あ、あはは」
ま、マスターの責任になるならいっか。
「あ、町長さんに報告するクエの途中でした。みなさん来るまで時間かかりそうなら行って来てもいいですか?」
「いいよー」
「おk」
と、了承の声。よし、行って来ようっと。
「あ、ギルドチャットはオンになってる限りずっとしゃべっている内容はギルド員に聞こえちゃうし、ギルド員の声も聞こえるからおしゃべりをしたい気分じゃないときはオフにしておいてね」
「みんな来る人は初心者の町の入り口集合で」
「えーとじゃあ、報告したら入り口に行きますね。それまでは切っておきます」
ギルドチャットを切るといってらっしゃーいと手を振るマスターに軽く手を振って走り出す。
町長のとこ行かないとね。
なんか緊張したなー。