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ブンと空気が振動したかと思うと、目の前に一つのグループが現れた。
「お、アーチェご苦労様」
にこっとマスターが手をあげる。
真ん中にいた白いローブの人が軽く手を挙げかえしながら答える。
「どういたしまして」
すごいなー。みんなを移動させるようなスキルもあるんだね。
というか、一気に私のほうを注目するのはやめてほしい。
「エルフのメイド・・・」
誰かがつぶやいていた。え、やっぱりこの服メイドに見えるの??
キョロキョロみんなを見ると、すっと男性人は目をそらす。
な、なんなのよ・・・。
「ねえねえ、それって超レアなメイドリアン装備でしょ。なんで初めたばっかりの初心者が持ってるの?」
動きを止めつつ、そっとこちらを伺う男性人とは対照的に、その中にいたピンクの髪のエルフの女性が口を開いた。こちらを見てしゃべりつつも、青い髪をしたおとなしそうな感じのハーフエルフの男性にぴっとりくっつくように腕に手を回している。
う、ベッタリだね・・・。ちょっとヒク。
しかも、粘着質なしゃべり方は、正直同性には受け入れがたい感じ。
やっぱりピンクって選びやすい色なのかな。かわいいしね。
しかし、目の色も青いし、こっちは緑青だからちょっと違うけども、なんか私とかぶる色だなー。
私が美人のキャラだけに、なんとも申し訳ない感じ。
どうにかこの高まっているヘイトを低めねば・・・そう思案しつつ口を開く。
「えーと、ラジェさんが写真を撮りたかったそうで・・・着させていただいています」
貰ったことは言わないでおこう・・・。
そういう気持ちが通じたのか、ラジェさんがフォローしてくれる。
空気読めるんだね!意外だったよ!
「そうそう、レアすぎて売れないんで写真のお礼に貸してるんだよ」
ナイスです!
「そうなんだ。いいなー、かわいいなー、きてみたいなー」
食い入るように見ないでほしい。
でもこれは、写真を我慢した自分への御褒美なんだから、無視しようっと。
「みんな、紹介するよー。この子が今日入ったるしふぇさん。いろいろ教えてあげてね」
スルー率高し!なマスターがさらっと空気を断ち切る。
それとともに男性人もバラけて周りに集まってきた。
「よろしくお願いします」
ペコっと頭を下げる。
「じゃあ、軽く自己紹介していってね」
少し入り口から離れたところでおしゃべりをはじめる。
いつの間にか夕方になってきていた。
「まずは僕から。マスターをしているキースです。何か困ったことがあったら言ってね。人間で魔法戦士を目指している感じかな」
そいえばマスター名前聞いてなかったね。
「俺は今更だし、ラジェだ。よろしくな」
うん。ラジェさんはもう忘れようもない・・・。
「僕はアーチェ。魔法使いやってます。種族は人間。よろしく」
みんなを運んできたアーチェさんは人間なんだね。てことはもしかしたら転移魔法って種族固定だったら使えないね。後で聞いてみようっと。茶色い髪に茶色い瞳のアーチェさんは少し無口な感じだけど、人当たりのよさそうな雰囲気なので質問もしやすそうだ。
その次はちびっこちゃんダークエルフ2人組だった。
「僕はデールだよ」
「私はチップ」
このゲームは身長は現実の自分と同じくらいになるように設定されているので、二人は小学生くらいかもしれない。18歳未満は一日の接続時間も制限されているはず。
「ん?チップは女の子なの?」
「うん。デールとは兄弟なの。よろしくね」
にこっと笑うと愛嬌がこぼれるようで可愛い。
同じくにこっと笑い返した。
「よろしくね」
周りの男性が赤くなってたけど、んー、はやく慣れてねとしか言いようがない。
次がさっきの粘着質女性だった。
「姫ちゃんです。ヒールが得意などぢっこエルフです」
もう、どっからどう、突っ込んでいいのかわからんよ・・・。
これは俗に言うロールプレイイングってやつなのかな。そういうキャラを演じてるっていう・・。
本気だとしたら恐ろしすぎる。
ラスボスを目の前にしたような戦慄を感じつつ、じっと見ているととなりの男性が赤くなった。
それを半ば本気でつねりつつ、痛そうだな・・・、続けて言った。
「となりのハーフエルフ、銀河君と付き合ってます!」
そのとたん、周りがドワッと沸いた。
「散々否定してたけど、やっぱり付き合ってたのか」
「やっぱりな」
「おぉおおおお」
みんなが一斉にしゃべるので聞き取れない。
しかし、どうやらみんなには内緒だった模様。
嫉妬のあまりに言っちゃったということだろうか。
「言わないっていってたのに」
恨みがましそうな目でみている銀河君。君その女性を選んだ時点でもう終わってるから・・・。
しばらく沸いて収集がつかなくなったのもあって、その後の自己紹介何名かは正直覚えていない。
全員は覚えられないって。あっはっは。
まあ名前は意識したらキャラの上に見えるし、問題ないよね。
粘着さんとは別の、まともな女の子がいたのはすっごく嬉しかったけど。
「私はダークエルフのミーシャです。歌って踊れるファイターを目指しています。よろしくね」
粘着があまりにあまりな挨拶だったので、非常に好感が持てましたよっと。
思わず手を握ってブンブンしながら
「よろしくね!!」
と言ってしまった。
プッと笑われちゃったけど、なんか波長があいそうだし、いい友達になれそう。
LV高そうだけど・・・。
そうこうしつつも最後の一人の自己紹介になりました。