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村の入り口まで行ってみると、ギルドマスターが背の高い男の人と立っていた。
近寄っていって声をかける。
「おまたせしました」
「お帰り」
にこっと笑うマスターは優しげな人間の男の人。顔が整っているわけじゃないけど、なんというか雰囲気がちょっとだけ二枚目っぽい。それと対照的に、側にいた男の人ワイルドな感じ。ちょっと目がきついくて、全体に毛深い。大きな斧を背負っているとこをみるとファイター系なのかな。
目を見開くとニヤっと笑った。
「ひょ~びっくりしたぜ、こりゃー本当に美人なエルフだな」
「あ、ありがとう」
ちょっと引きつつ一応お礼を言ってみる。
「おい、ラジェ、いきなりその挨拶はないだろう?」
マスターがたしなめてくれる。
「ん、そうか。そりゃー悪かったな。俺はラジェって言うんだ。よろしくな」
「よろしくお願いします」
ペコッとちょっとだけお辞儀をしてみる。
「こいつは、こう見えてすごいプレイヤーだよ。なんせ普通はパーティーで入っていく洞窟に単騎で乗り込んで行って帰ってくるから・・・」
「く~、かわいいな。このゲームしててよかったぜ」
マスターの言葉をラジェさんが遮った。
「は、はぁ」
「そうだ、ちょっと待てな」
そういうとバッグオープンという掛け声とともに、いそいそと空中から2枚のカードを取り出した。
他の人のバッグの中身は見えないからまるで手品のようだ。
「ほら、これを装備してみな」
ぽんとカードを渡される。
「お、おまえ、カード渡すときはシステムのトレード使えよ。危ないだろう」
「まーまー、これを横取りするようなやつは俺が斧の錆にしてやるよ。さあさあバッグに入れて装備してみなって」
「は、はぁ」
バッグに入れてみる。えーと、メイドリンローブの上と下か。え、防御力+30と+20???
そのほかにもなんか色々と書かれてる。これってすごい装備なんじゃ・・・。
ワクワクしているラジェさんに追い立てられるように指をカードに乗せる。
「そ、装備」
そのとたん、服が黒いローブに変わった。
「うぉーーー!!エルフのメイド最高ーーーーーー!!!」
ラジェさんの激しい雄たけびが聞こえる。
な、なに???
ギルドマスターもなんか赤い顔をしてこっちを見ている。
え、え、え??と助けを求めてみると、困った顔をして視線をそらされてしまった。
なんなんですか?・・・。
しかも周りからもえらい注目浴びてるし。
自分の体を見下ろしてみると、上下とも黒が基調となったシックなドレスだった。ちょっとスタイルがよすぎて胸が苦しいけど。腕は七部袖で足はくるぶしの上までで露出も少ない。ほっと一安心。
男の人が叫ぶくらいだから、めちゃくちゃ際どい服着せられたのかと思っちゃったよ。
一見お葬式でも行きそうなくらい黒い。
ただ、ところどころに白と黒のフリルがあしらわれ、胸のところに落ち着いた赤色のボウリボンがついているので、全体的な服の印象としては暗くなく、むしろ可愛い。む、私この服好きかも・・・。
しかし、どこがメイドなんだろう?
メイドってあのメイドだよね。たしかミニスカでめちゃくちゃフリフリで・・・。この服はむしろ上品な感じもするし、メイド喫茶に登場しそうな感じはしない。
「メイドですか?」
コクコク頭を上下にふりながら肩をポンポン叩かれる。
「いいの、いいの。気にしない気にしない」
なんとなく腑に落ちないけど、まあいいのかな。
「はぁ」
「それより、この服欲しくない?」
悪巧みをしたような顔をして聞いてくる。
「欲しいですけど、始めたばかりでお金無いですし、なんか注目集めてますし・・」
「ノープロブレム!ノープロブレム!!」
叫んでるよ。テンションが高すぎてついていけない。
「エルフにメイド服、これを着せてあげないなんて世界に対する冒涜だ!!」
「は、はぁ。メイドリアンローブですけど・・」
周りの関係ない男性たちまで雄たけびにおーなんて答えてるのが、怖い。
「これはお兄さんのお願いを聞いてくれたらあげよう!」
「はぁ」
何お願いされるんだろう。もう限界まで心がヒキヒキなのにそろそろ気づいて欲しい。
「写真とらせて」
「はぁ」
この世界では写真をシステムで撮ることができるのだけれど、許可しないと撮っても人が写らないようにできている。ゲームのキャラとはいえ自分の分身だから、勝手に撮影されたくないという意見を反映したもののようだが・・。というわけで、ラジェさんが私を写そうとしたら私の許可がいるわけなんだけど
「そんなことでいいんですか?」
「もちろん!」
「下着姿で、とか下着が見えるような怪しい写真とかじゃないでしょうね?」
あやしい。高いものには訳があるに違いない。
しかし、そうは思うものの、この服欲しいなー。
「ばかなことを!服を着ている写真だから意味があるんじゃないですか!」
「はぁ」
「そんなことをしたら、すぐにセクハラでGM呼んでいただいて結構です!」
確かに、一定以上の恐怖を感じたりすると勝手にGMがでてくるようになっているし、これだけ言ってくれるなら大丈夫かな。
「えーとじゃあ、許可します」
システムをいじくってラジェさんに許可を出す。
「ひゃっほー!」
さっそくシステムの機械をカメラにして私の周囲を回りながらパシャパシャ写真をとる。
「いいねー、いいねー。最高だねー」
はやまったかもしれない・・・。
「服はもらっちゃいますよ」
「おっけー、おっけー」
まぁ、しょうがないか・・・。でもなんかヤダなー。
「二人とも、そろそろアーチェがみんなを運んでくるはずだよ」
マスターが言ってくれるまでラジェさんは壊れてました。




