表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/34

天才と天才 -ブラマンテの虚像-

「やはり、おかしいと思っていました」

声に振り向くと、若い男性が佇んでいた。研究者らしからぬ、黒いコートを羽織っている。


「建築士の篠宮です。IRISの次世代研究施設の設計プロジェクトを担当しています」

彼は静かに続けた。

「そして、あなたと同じものを見てしまった」


レオナは警戒心を解かない。

「なぜ、ここに?」


「僕の仕事は、AIと建築の融合研究です。新しい研究施設の設計のため、AIの挙動と建築構造の相関を調べていたんです」

篠宮は苦笑する。

「そこで気付いたんです。このビルのAIネットワークが、設計図上に存在しない場所と通信していることに」


彼はスイス工科大学ETHでの留学時代を語り始めた。


「僕も、あなたと同じ夢を見ていました。AIと人間の共生。でも」

篠宮の表情が曇る。

「チューリッヒで目にしたんです。軍事技術に組み込まれていく研究の現実を」


「半年前から、内部調査を始めていました。設計図には載っていない配線、データルート。そして地下10階」

彼は白衣のポケットから、小さなメモリーカードを取り出した。


「これが証拠です。Project IMMORTALの真の目的」


レオナは画面に目を走らせた。

世界各国の軍事機関との契約書。

極秘の実験データ。

そして、彼女のAIを組み込んだ兵器の詳細な設計図。


「なぜ、私に?」


「ETHの恩師から、レオナさんのことは聞いていました」

篠宮は窓際に歩み寄る。

「天才的な芸術家であり科学者。まるで現代のダ・ヴィンチのような」


「でも、ダ・ヴィンチだって、戦争機械を設計したわ」


「ええ。だからこそ」

篠宮は振り返った。

「あなたには、違う道を選んでほしい」


研究室の緊急警報が、不穏な赤い光を放っている。


「逃げるしかない」

篠宮が告げた。

「スイスなら、まだ希望がある。ETHで、純粋な研究が続けられる」


レオナは迷った。

しかし、このままでは自分の創造物が、取り返しのつかない結果を—


「協力してください」

篠宮は一枚の設計図を広げた。

「このビルの裏動線のことは、誰よりも知っています」


研究室の窓から、東京の夜景が見える。

高層ビルの光が、まるで檻のように彼らを取り囲んでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ