S2 チェリオとの出会い
S2 チェリオとの出会い
創世暦元年 2月3日
GOD:Luna 惑星:Luna Lee
わたしの惑星の名前はルナ・リーといいます。
これはわたしの名前からとったのではなくて、好きなお洋服メーカーの名前なんです。
ルナ・リーには小さな孤島エスティモがあります。まだ平地の中央に森を敷いただけの小さな島です。
ラヴィはこの島の森の中に生息しています。
日中の柔かな陽射しは広葉樹の葉に遮られて、森の中はちょっと薄暗いのですが、わずかに差し込む木漏れ日がとても綺麗なんです。
上から降り注ぐ光を空気中のちりや埃が反射してきらきらと輝くその光景は幻想的で夢みたいな世界です。
わたしがターゲットに定めたモンスターはその森に生息していました。
丸くて、ふさふさして、桃色毛のとっても可愛いモンスター。
いました、ラヴィです!
実はここへ来る前に捕まえたラヴィにつける名前を考えてきたんです。
名前の由来は極単純で惑星や島につけた名前と同様に、今度はわたしが大好きなジュースのメーカーの名前でチェリオと言います。
単純ですよね。ごめんなさい(笑)
森の中のラヴィはとても人懐こくて、わたしが訪れるといつも足元にすり寄ってきます。
この日もいつものようにわたしの姿を見かけると、数匹のラヴィたちが集まってきました。
彼らに敵意など全くありません。ただわたしに遊んでもらいたいという純粋な好奇心なんです。
チェリオはその中の一匹でした。
無抵抗なラヴィを捕まえることに抵抗はあったけど、そこは必死に気持ちを抑えて手を伸ばします。
捕縛コマンドであるキャッチを成功させるには実際にモンスターに触れなくてはいけないんです。
わたしのそんな心境を敏感に察したのでしょうか、周囲を囲んでいた多くのラヴィはまるで蜘蛛の子を散らすように逃げて行きます。
でも、そんな中でただ一匹。
真っ黒な瞳に輝きを浮かべてこちらを見つめている子がいたんです。何をするわけでもなくじっとして、その瞳はわたしに何かを訴えかけていました。
わたしがそっと手を伸ばしてもラヴィは逃げません。
優しく桃色毛の耳を撫でながらわたしはゆっくりと口を開きます。
本来ならモンスターを仲間にするタイミングは討伐後に光芒化せずに起き上がったその瞬間です。ただはじめから友好状態であるラヴィはチャンスがあればいつでも捕まえることが可能なんです。
ここでボイスコマンドを掛けることができれば、捕縛は成立します。
その魔法の言葉が――
「キャッチ」
わたしの言葉にラヴィの姿が真白な光の中に包まれそして消えていきます。
胸の鼓動が早まり、内から湧き出るような感情の奔流をわたしは必至に抑えていました。
彼は居なくなったわけではありません。
クリエイションブックを開けば、そこにはちゃんとラヴィのデータが登録されています。
ただまだ名前はつけられていません。そこでわたしは名前をつけてあげることにしました。
性別は男の子。名前はもちろんチェリオと名づけました。
わたしの胸は本当に弾んでいました。こんなに可愛いペットができるなんて夢のようでしたから。
これからどんな物語が生まれるのか。想像するだけで胸が期待でふくらみます。
まだまだ冒険は始まったばかりだけどこれからよろしくねチェリオ。