юDiary 0/4/2 『桜と鳥』 God:Kojiro
юDiary 0/4/2 『桜と鳥』 God:Kojiro
創世暦元年 4月2日
GOD:Kojiro 惑星:Monohosi
今年は開花から満開まで少し時間が掛かりました。咲いたところで花の美しさやその生命力を充分に謳歌できればいいのですが、歌人でも無い私は「素敵だ」の一言に尽きます。加えて今日は生憎の雨と、悲しい。
さてさて創造世界にも四季があるとは驚きですが、これは実は惑星構造のデフォルトが太陽系に設定されています。なので設定値を弄らない限りは神々は季節を楽しむ事が出来るという訳です。
我が星、モノホシの孤島の初期値は緯度経度と共に0の値を取っていました。緯度0°は赤道ですね。また経度0°はイギリス、ロンドンにあるグリニッジ天文台を通る事で有名です。この交点は地球で言うとアフリカ西岸、ギニア湾の真ん中辺りになりますが、最初は知らずにこの原点をカプリ島の拠点と定めていました。赤道直下とどうも暖かい訳でした。
このポイントのままにしておけば桜の開花も大分早かったと思うんですが度量が足りずに無難な案に落ち着きました。
現在は赤道よりも上、東経139°北緯35°そこが新たな拠点です。地球上では東京に相当する位置となります。
結果として、満開を随分と待ち焦がれ乙女のような気分を味合わせて頂きましたが、ただ待っているのも退屈なので花見に向けて一つ生体オブジェクトを追加させて頂きました。増やしたのは鳥の声です。やはり花見に当っては鳥のさえずりが欲しいところです。
夜桜ならば月があれば充分に魅力的でしょうけど、陽の下の花見は無音では寂しいですよね。
花下に並んだ美味い料理と酒、それから心を弾ませる会話があれば何も言うまいなのですが、ここに間を埋める鳥の声があればどんなに至福の一時だろうなんて、贅沢な注文ですね。
梅に鶯、松に鶴と。具体的に生体オブジェクトのリストを眺めながら夢うつつと抜かしていたのですが。桜に……桜に……あれ。出てこない。桜に何だっけ?
若年性アルツハイマーがとうとう始まったのかと、心底焦りましたが。幾ら考えたところで、桜に合わせる鳥が出てこない。
苦肉に浮んだ言葉が桜に幕。先の梅・松に並んで完全に花札と化しましたが。
これはもしかしてと、勝手な先入観を抱いていただけで、桜というのは意外と鳥との連想が無い?
敢えてと押すならば、目白や鶫で、これも皆がそうだと口を揃える答えでもないですよね。
愕然とします。散々季節感と煽っておきながら、花に添える彩りを選ぶ事さえままならないという。いかに、人間のというか私個人の感覚がいい加減なものか、という事に収束します。
結局という話ですけれども、比較的安価だった鶫に落ち着きました。
見た目はとても愛らしくもあり、白黒と交互に三線引かれた頭部に黄色い嘴。身体には同じく白の下地に黒の斑模様が浮び、羽根筋には銅色の赤褐色が通っています。鳥綱はズズメ目という事もあってか、外見はどことなく雀にも似ていますね。ただ外見には個体差が大きいので、ここの特徴が一概とは認められません。
鳴き声は鳥に似つかわしくないというか、細切れの撥音はまるで小猿が餌をねだっているようにも聞こえました。
友人と花に囲まれて、当初の名目を考えれば充分に目的は果たせたかのようにも思います。
弁当狙いの鶫が舞い降りておねだりする様子は充分に趣を添えてくれました。