◎Playing 0/3/21 : 『生態環境の基盤作りと落とし穴』 God:Rui
創世暦元年 3月21日
サイト:Personal View アバター:Rui
惑星:World Simulator
ルイです。この度はパーソナルビューのモードでお届けさせて頂きたいと思います。
今、僕がどこに来ているかというと。惑星に配置されたリベリア北西部の岩礁地帯を訪れています。この辺りは南海岸と比べると吹き寄せる海風が気持ち冷たいですね。加えて岩肌に当って砕ける水飛沫が振りかかるのでレインコートを着用してきました。光沢のあるブルーのなめし皮で、何でもオールノールと呼ばれるトドに似たモンスターのドロップ素材だそうです。レベル十制限の現段階では登場していないんですけどね。これも一応この世界では防具の一種でアーマーガッパと呼ばれています。こちらの名称の方がなんかRPG的には馴染むかもしれませんね。
今回こんなところを訪れたのは生体オブジェクトの増加を見込んで環境を整備した結果の調査をする為です。
安易な発想ではありますが、環境基盤を整える第一歩として生態ピラミッドの底辺を補強するという考え方は間違ってはいないと思います。そのヒエラルキーの底辺に当る海水中のプランクトンは初期設定で無限だと思っていたのですが、どうやらこれは誤りで手動で海域に設置する必要があるようです。素材一覧を調べたところ、プランクトンの種類は細分化されていません。現実では光合成をして自給ができる植物プランクトンと彼らを捕食して生きる動物プランクトンに大別されますが、この世界ではただ『プランクトン』として海域に分布と生息数を指定してばら撒きします。
何故、僕が勘違いをしていたかというと海洋生物がこのプランクトンを下敷きにしなくても設置できたからです。実際にはこれらの海洋生物達は餌を捕食しなくて生きられる一定期間を過ごして飢え死にし、指定生息数内でただリポップを続けていた事実が判明しました。残酷な事をしていましたね、自己嫌悪です。
一つの教訓を得て、まずはリベリア島の近海にプランクトンをばら撒いたのですが。
本当は今言葉にならないほど気が滅入っているんです。理由は後で分かりますが、今回の実験で僕は残酷な教訓を得る事になりました。久し振りですね、こんなに落ち込んだのは。
実験内容はばら撒きの数と分布によってどのような変化が出るか、というものです。島周辺を囲むように海域面積当りに対して指定できる分布密度を十パーセント単位で北から時計周りに釣り上げていったのですが、北西のこの岩礁から北に掛けて大変な事が起こりました。見て下さい、と言えないところが辛いところですが、晴天の海って皆さん何色を想像しますか? 何を馬鹿な事をと思われるかもしれませんが真面目な質問なんです。空の青と対照的な色と言ったらヒントになるでしょうか。
そう、赤いんです。絵の具を溶かしたような滑稽な色ですね。この天変地異を前にして、何を冷静に実況しているのかと思われるかもしれませんが、今回のレポート録りを始める前にさんざんと絶叫しました。北西の海岸が見える岩場を越えた瞬間にひっくり返って、最初に目に飛び込んだ赤が血の色に見えたんです。
呪われた、島が呪われた! 落ち着け……大丈夫だから落ち着け、と冷静に心を静めながら、現場を分析して一つ思い当たる現象がありました。
それが赤潮です。どうやら海域に対して分布密度が約八十パーセントを超えると、プランクトンの異常発生と見なされ、この赤潮が発生するようなんです。赤い波が浜辺に押し寄せては残す軌跡が生々しいですね。
青い海が美しかったリベリア島が一瞬にして血塗られた島へと変貌を遂げました。
これが生態環境を整える上での落とし穴ですね。
ヒエラルキーの一区画を過渡に膨張させると、生態系ピラミッドが崩れて結果、環境を破壊する事になります。海洋汚染による赤潮の発生は本に習った事はありますが、実際に目にするのは初めてです。
しかも、発生させた原因が直接的に自分自身にあるので、これは罪の意識が重いですね。
願わくば、この光景は永久的に封印したいです。二度とこんな悲劇を起こさないようにバランスが命であるという事を肝に命じて、これからリベリア島の環境作りに力を入れたいと思います。
起こしちゃいけないんだ、こんな悲劇は。もう二度と――