第11話 動き出す世界。
「紅ちゃんも 琥珀さんも 仲良くしてぇぇぇぇぇぇ。桜 落ちちゃうよぉ。」わーわー。きゃーきゃー。言いながら 3人は 白龍の元へ 歩いて行った。
(ふぉふぉふぉ。仲良きことは 良いことかな。)白龍の声が 聞こえた。
「お?白ちゃん もう 着きそうかな?顔 どの辺り?」紅は キョロキョロと 白龍を探した。
(ここじゃよ。)白龍は ゆっくりと目を開け にょきっと 角を上げた。
「白ちゃん 周りに 溶け込み過ぎちゃって わかり難いんだよね。私 さっき 白ちゃんの顔の上に 乗ってたっぽいし……。」紅は ペロッと舌を出して笑った。
「龍の顔の上……⁈ なんてことを してるの?紅。」琥珀は 口に両手を当て びっくりした顔をしていた。
「気が付いたら 顔の上だったんだよー。それに 白ちゃんの心は きっとひーろーい。」紅は 琥珀の真似をして 手をひらひらさせた。
そこには 琥珀が 想像していたような 目がギョロリとした 怖いイメージの龍は いなかった。
真っ白で 輪郭が ふわふわしているから 儚そうに見えても 芯の強さが キリッと存在している白龍を見て 琥珀は 少し安心した。
「あれ?そう言えば 白ちゃんの言ってる言葉は わかるんだけど なんで口が 動いてないの?」桜は きょとんとして聞いた。
(ふぉふぉふぉ。わしが 口を動かしたら 風が起こって 皆 飛んで行ってしまうぞ?だから こうして 頭の中に 言葉を 飛ばしておるんじゃ。)白龍は 片法の眉毛を上げて にやりとした。
「あーっ。テレパシーって 言うやつかな?白ちゃん 凄いね。」桜は 感心したように 人差し指を顎に 当てて言った。
(何を 言っておる。桜も ちゃんと 受け取っておるじゃろ?そんなに 凄いことじゃないが……。ただ 誰しもが わしの言葉を 受け取れるわけじゃないぞ?)白龍は 諭すように言った。
「え?そうなの?」今度は 紅が 聞いた。
(聞こえないやつが ほとんどじゃよ。)白龍は 少し寂しそうに言った。
「え?でも ここにいる全員 聞こえてるじゃん?なんで?」紅は びっくりしていた。
(ふぉふぉふぉ。なんでじゃろうな。ふぉふぉふぉ。)今度は 白龍は 楽しそうに笑った。
「白ちゃんのケチ!本当は わかってんでしょう?」紅は 白龍を 睨みつけてた。
(だから さっきも 言ったであろう?学びじゃよ。何事も 学びじゃ。)白龍は 嬉しそうに 目を細めながら言った。
「チッ……。」紅は 舌打ちして 笑いながら 横を向いた。
「んじゃ 他にも 誰かいないか 残りを探そうか?」紅は 桜と琥珀に 言った。
「桜は 紅ちゃんの行くところなら どこでも 一緒に行く!」琥珀の肩の上で 桜は 微笑んだ。
「そうよねぇ。確かに どこに行くかは 悩むわよねぇ……。ここは 何もないわね……。みんなに会えて 本当良かった。あたし パニック寸前だったものぉ。」周りをキョロキョロ見ながら 見渡す限り 真っ白な世界を見渡して 琥珀は 言った。
「琥珀 絶叫してたもんな。」紅は 楽しそうに言った。
「とりあえず 白ちゃんに 飛んでもらう?また 誰か 見つかるかもしれないし。」桜は 心配そうな声を 出した。
「それ!いいかもぉ。かっこいい男 いるかもしれないしぃ~。」琥珀は 嬉しそうに 桜をそっと下に下ろした。
「ぷっ。それは いいな。じゃ 目標は かっこいい男ってことで‼ 」紅は 笑い出した。
(決まったようじゃな。みんな わしの首の辺りに 摑まると良い。落とされぬようにな。ふぉふぉふぉ。)白龍は 皆が 乗りやすいように 首を持ち上げた。
前から 紅 桜 琥珀の順番で 白龍の上に跨った。
「じゃ 白ちゃん 引き続きよろしくー!」紅は 大きな声で言った。
「レッツゴー‼ 」桜は 腕を上げた。
白龍は 大きく翼を広げて 空高く舞い上がった。
「きゃーーーーーーーーっ‼ 高いーーーー。怖いーーーーー。いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」琥珀の声が 響き渡った。
「おお。白ちゃんに乗ると やっぱ気持ち良いなー!」紅は 嬉しそうに キョロキョロと 周りを見渡している。
「紅ちゃん 気持ち良いねー。」桜も ニコニコ顔だ。
「ひぃ………。」琥珀は 声にならない声で 必死で 白龍に 摑まっていた。
しばらく飛んだ後「あ!あれ 何⁈ 右奥!雲の裂け目みたいに なってるとこ‼ 」紅が 指を差しながら 言った。
「紅ちゃん あそこ行くの?」桜は 言った。
「うん。あそこ。見てみよう。」紅は それを じっと見つめたまま 答えた。
雲の裂け目から 色付く世界が 見えていた。
「どこでも良いから 早く降ろしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。」琥珀は 周りを見る余裕も なさそうだ。
(あそこに 降りればいいんじゃな?)白龍は 優雅に ゆっくりと右に 方向転換して飛び 雲の裂け目の近くで 下りた。
「へぇー。やっぱり 雲の裂け目みたいだね。」紅達は 白龍から 一旦降りた。
白龍は 目を瞑ると すぐに周りの雲に 溶け込んでしまった。
「ここって やっぱり 雲の上なのかな?」雲の裂け目から 恐る恐る下を 覗き込みながら 桜は言った。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。怖いーーー。」琥珀は 身体をくねくねさせた後 フッと 素の顔に戻った。
「ねぇ……?あたし達さ 自分が 誰かもわかんないのに なんで雲って わかってたんだろう……?自分のことだけ 憶えていないのかな?」琥珀は 真面目な顔で言った。
「桜も 色だけしか 覚えてなかったよ?」桜は 下を覗き込んだ体勢のまま 顔だけ横に向けて 琥珀を見た。
「確かにな……。私も 普通に 雲と言う言葉が 出てたな……。」紅も 考え込むように言った。
紅は 雲の裂け目から 落ちないように 膝を崩して 横座りした。
そして 桜と琥珀にも「ちょっと座って?」と 声をかけた。
紅の左側に桜は 正座した。桜の左隣に 琥珀も 横座りで 座った。
「下を 見て?何か わかる?」2人の顔を 交互に見ながら 紅は 言った。
「紅ちゃん 下には 山と川も 見えるよ。山の色が 綺麗。常盤色に 少し若草色が入ってるね。」桜は 目を輝かせて言った。
「桜は 凄いな。」感心したように 紅は 桜を見た。
「建物が 密集している場所と そうでない場所が あるわね。田畑も あるし……人間が 暮らしているって感じがする。」琥珀は 呟くように言った。
2人を 見比べて「それに……さ?今 普通に話せて 会話に 困ってないよね?言葉が ちゃんと出て来るよね?と言うことは……。私達 自分が 誰かと言うこと以外 案外わかるんじゃない⁈ 」紅は ドヤ顔で言った。
「確かに それも 一理あるわねぇ。」琥珀も 考えながら答えた。
「人間も 所々に いっぱいいるね。」桜は 嬉しそうに言った。
「あーーー……。人間ね。人間は どこにでもいるよ。」なぜか 紅は げんなりとした顔をした。
「紅ちゃん?人間嫌いなの?」桜は 不思議そうな顔をした。
「あっ。本当だ。人間を見た瞬間 フッと 面倒くさいなって思っちゃった。なんでだろ?」紅は 首を傾げた。
「紅 前に 人間に 何かされたのかな?紅も 何も憶えてないの?」琥珀は 心配そうに 紅を見た。
紅は 少し考えてから「うーーーん。何も 憶えてない……。頭から スコンと 全部抜けてる気がする……。」と言った。
「あたしも 何も憶えてないの。気が付いたら 雲の上に 突っ立ってた。」琥珀は 悲しそうな顔をしていた。
「桜は 寝てた。あっ。本当に 寝てたんじゃなくて 横になってた?寝転んでた感じだったよ。」桜は 慌てて言った。
「みんな バラバラだけど 何も憶えていないことだけ 一緒か……。あっ。違うや。泣いてた。」紅は 桜を指差した。「絶叫してたね。」琥珀を 見て笑った。
「紅ちゃん それは 言わないでーーー。」桜は 笑いながら 泣きそうな顔になった。
「だってぇ 1人で 怖かったんだものーーー。」琥珀は 両手で 自分の身体を抱き くねくねした。
3人の笑い声が 雲の上で響いた。
「ここから 下に 降りてみよっか⁈ ここにいても 何も変わらないし。」紅は 2人を見て言った。
「そうねぇ。もうここには 他に誰も いない気がする……けど どう?」琥珀は 不安そうな顔で聞いた。
「なんとなくだけど 桜も いない気がするな……。」桜は 周りを見渡して言った。
「誰か 他にもいたら また 白ちゃんに 乗せて来てもらおう。」紅は 笑顔で言った。
「それなら 安心。」琥珀は 言い 桜も 笑顔になった。
「よし!じゃ 行こっか。」紅は 笑顔で 立ち上がった。
「桜も 行くーーー!」慌てて 桜も 立ち上がった。
琥珀も にっこり笑って「行こ行こぉ。」と 立ちあがって はだけていた甚平の上着を 綺麗に直した。
「白ちゃん よろしくー!目標は かっこいい男‼ 」紅は 笑って言った。
(決まったんじゃな?ここを 降りて行けば 良いんじゃな?)白龍は 目を開けて聞いた。
「いやぁぁぁぁぁん。かっこいい男 楽しみっ!」琥珀は 顔を赤らめて 両手を胸の前辺りで 祈るように組み 本当に嬉しそうだった。
「うん。白ちゃん よろしくお願いします!」桜は 白龍の首の辺りを ぽんぽんとしながら 3人で また 白龍に跨った。
白龍は 1度ゆっくりと 上へ舞い上がってから 雲の裂け目を目掛け するりと降りて行った。
3人は 白龍の背中に 乗りながら 下を眺めていた。
「下界は やっぱり 人が 多いな……。」紅は ボソッと呟いた。
「うーーーん。でも それ以上に 怪が 多いわねぇ。」琥珀は 小首を傾げながら 口元に手をやり 考え込んだ。
「琥珀さん 怪って 黒っぽいお化けみたいなやつのこと?」桜は 聞いた。
白龍は 皆に 下界が よく見えるように ゆっくりと旋回しながら 飛んでいた。
「そうよ。お化けや 妖怪 幽霊とも 言ったりするわね。幽霊の中には 悪霊や生霊もいるし 稀に 動物さん達の霊もいるから 区別するのも めんどくさいし あたしは 一括して 怪って呼んでるのよぉ。」琥珀は 眉間に 皺を寄せながら 説明した。
「そっかぁ。桜は ちょっと怪は 怖いな……。色も はっきりしないね。色の付いた怪は あまりいないし……卯の花色 白銅色や錫色 濡羽色や暗黒色の怪ばかり……。なんか モノトーンの怪が 多いね。」と 言いながら「あれは 何色だろう?」桜は ブツブツ言っていた。
「ってか 人間は こっちに 全く気付いてないな。むしろ 怪の方が 私達に 気付いてるやつらが 所々にいるな……?」紅は キッとした目つきで 怪を睨みつけていた。
「怪は 話が通じないやつが 多いからねぇ。人間は 話は通じるけど 気付いてくれない。ジレンマよねぇ……。」なぜが 琥珀は 面白そうに言った。
「怪は ある意味仲間だけど 仲間になるのは ほぼ無理だな。」紅は キョロキョロしながら 言った。
「え?怪って 桜達の仲間なの?」桜は きょとんとした顔で 聞いた。
「人間から 視えないって言う意味じゃ 仲間だよ。怪は きっと私達とは 相反するものだろうなぁ。」紅は 考えながら答えた。
「相反するもの……。なんかさ 怪とか 人間とか スラスラ話してるのに あたし達って いったい誰なんだろうね……?」琥珀は 遠くを見て 呟いた。
「きっと そのうちわかるよ。」桜は にっこり笑って 優しい声で言った。
「手先になる人間が いればいいけど……。私達に気付く人間を 根気良く探すしかないか……。」紅は ずっと キョロキョロと 探していた。
「紅ちゃん?人間を手先にするのは ダメよ!お友達にならなくちゃ!」桜は 紅を 諭すように言った。
「桜ちゃん それ 名案ーーー‼ まずは お友達を探しに行こう。ほら!かっこいい男探さないとぉ 紅 約束したじゃぁん?」琥珀は にやりと笑った。
「あっ。そうだった。かっこいい男探すんだった。」紅は 本気で忘れていたようで ハッとした顔になった。
「よし。白ちゃん! 目標‼ 私達に 気付くかっこいい男‼ 白ちゃん もうちょっと低空飛行で お願い!」紅は 白龍に 頼んだ。
(ふぉふぉふぉ。それなら さっきから 1人 気が付いておるやつが いるぞ。ずっとこっちを 見ておる。かっこいい男か どうかまでは 遠過ぎてわからんがの。ふぉふぉふぉ。)白龍は 目を細めながら 言った。
「いやぁぁぁぁぁん。かっこいい男が いいーーー‼ 」琥珀が 身体をくねくねさせた。
「よぉし。かっこいい男か 見に行こうぜー!白ちゃん 案内よろしく。」紅は 嬉しそうに軽快な声で 言った。




