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第三話 夢とスキルポイント

 目をゆっくりと開けるとそこには全壊した建物らしきものの瓦礫が散乱していた。油らしきものには火がつけられ、無造作に燃え広がる。その中を雄叫びをあげて突進する兵士達。それを迎え撃つ謎の黒い物体。そんな世紀末のような光景が覚醒した俺の前に広がっていた。


「一体どうなってんだこりぁ……俺確か寝てるよな? ……昔の戦争の光景みたいだけど……ん?」


 俺はそれを見て恐怖した。


「う、浮いてる……俺……」


 俺は恐怖のあまり意識が虚ろになり、体が後方に傾き始めた。

 倒れかけた時、俺の視界にある光景が入ってきた。それは、世紀末のような戦いを尻目に争う大激闘だった。

 微かな意識を脳と右足に振り分けてなんとか踏ん張った俺は、その戦いを凝視した。





「何故お前はこうなってしまったんだ!!! 答えろォォ!!!」


 その者は声をかすれさせ、必死な形相で斬りかかる。


 剣と剣がぶつかり合い、バチバチッと火花が散る。背景では盛んに燃える炎。爆発で空いた穴。魔法の発動音。マグマみたいなものがぼこぼことなる音などが見えたり聞こえたりした。


 すると質問された側が嗤いながら憎悪混じりの声で答えた。


「……そうだなぁ答えるとしたら……」


 そこから先の言葉は爆発音が酷くなったせいでよく聞こえなかった。しかし、かなりひっ迫した状況だということはわかった。


 その戦いは苛烈を極め、最高潮を迎えるかというところまできていた。その時だった。遥か遠くから山びこのように反響する声が聞こえてきたのだ。






「……て。起……て。起きて…………起きろォォ!!」


 俺はあまりの大声に驚き、ふっかふかのベッドの上を飛び上がった。

 あまりの速さにベッドが微かにミシっと音をたてた。その勢いのまま体を捻り、周りを見渡してみるとそこは箪笥の上に花瓶が置かれているだけの質素な俺の部屋だった。そして、窓を見てみると太陽はすでに顔を出していた。


「あれ? 俺寝てたのか? つまりあれは夢だったのか……なんて夢を見ちまったんだ。縁起が悪ぃ……」


 俺は寝癖の酷い髪を掻きながら呟いた。そして、先程の大声が気になったので隣を見てみると桜遊凛が仁王立ちをしてこちらを見据えていた。


「なにぶつぶつと独り言言っているの!? あなた、八時過ぎても起きてこなかったから桜遊凛が起こしにきたんだよ! まったく。さあ早く支度して食堂に来て。皆もう朝御飯食べてるわよ」


「なんだってぇ!? それは大変だ。急げぇぇぇ!!!」


 桜遊凜の衝撃発言を聞いた俺は高速で身支度を整えた。そして大急ぎで食堂へと続く廊下を走り抜けた。






 食堂で贅沢な朝御飯を食べた後、俺達は騎士の人達に連れられて建物の外にある訓練場へと足早に向かった。


 訓練場に着く男性が一人いた。その人は、足を均等に開き、右手で地面に突き刺さった剣を支えていた。


 俺達がその男性の前に整列した時、彼は話し始めた。


「初めまして。私の名前はラバイズ。ツイシン団の十弾の内の一人である。十弾とは多くの人員からなるこのツイシン団の中でも特に強いトップ十のことである。本日は諸君らにスキルポイントについてを習得してもらう予定だ。心して取り組むように。」


 一瞬、隊列の中でひそひそ話が発生した。


 しかし、それはすぐに収まった。


 ひそひそとした話し声が収まってきた辺りでラバイズさんが大声で再び話し始めた。


「それでは早速説明に入る。まずスキルポイントとは私達がうまれながらに持っている6つの能力の内の5つを強化するためのものだ。

 この強化できる5つの潜在能力はそれぞれ物理攻撃、物理防御、魔法攻撃、魔法防御、素早さと呼ばれている。これらはスキルポイントででしか強化できない。

 残りの一つである体力は、筋肉トレーニングや持久走などでしか上げることができない。逆に言うとスキルポイントを使わずに上げることができるので世界で唯一、誰でもテッペンを獲れる可能性があるパラメーターだ。

 そしてスキルポイントの入手方法は大きく分けて2つ。一つ目はレベルアップによって入手する方法。世の中の大半の人はこの方法でスキルポイントを入手している。二つ目は本を読む、具体的に言うと知識を付けることでスキルポイント入手する方法だ。

 まあ、私としては一つ目の方が効率がいい。なぜなら体を動かすので体力も一緒につくからだ。


 一気に話したがここまででわからないことはあるか?」


 彼は俺達を見回した。


「な、なんとか。」

「大丈夫です。」


 彼らの返答を聞いた後、ラバイズさんは話を再開した。


「了解した。それでは次は実際に振り分けてみよう。まずホーム表示と言ってくれ」


「「「ホーム表示」」」


 俺達は指示通りにホーム表示と唱えた。すると俺達の目前に青い画面が突如として現れた。その光景に俺達一同は尻餅しそうになった。


「開けたか? 開けたらスキルポイントという欄を押してくれ」


 言われた通りにスキルポイントと表示されているところを押してみた。すると六角形のパラメーターとポイント量、獲得スキル欄が出てきた。


「六角形のやつは時計回りに体力、攻撃、防御、魔法攻撃、魔法防御、素早さだ。まあ省略して体、攻、防、魔攻、魔防、早って書いてあるだろうがな。

 それが確認できたらスキルポイントを振り分けてみようか。一度に振り分けられるスキルポイントは百までだ。

 例えると、スキルポイントという物を五つの箱の中に分別して入れる。みたいな感じだ。

 そして振り分け方には二種類ある、とは言っても単純なことだ。

 一つ目は普通に自分の振りたいところに振る、だ。なので人によってパラメーターの形が違う。

 二つ目は五つの中からどれか二つを選び、そこに集中的にスキルポイントを振り分ける、だ。これは今後選んだ二つ以外にスキルポイントを振り分けることができなくなる。が、代わりに伸び率が一つ目に比べて飛躍的に上がる、というものだ。ちなみにこいつには双極振りという名称がついている。まあ好きな方を選べ。

 それではスキルポイントの残量が百あると思うからそれを振り分けてみてくれ」


 その説明を聞いた瞬間、俺は攻撃と素早さに双極振りすることを即決した。理由は自分の職業が剣士だというのもあるが、何よりも。俺の直感がそうしろと叫んでいたからだ。


 スキルポイントを振り分けたほんの数秒後。身体に確かな変化が起こった。なんというか自分の中にある魂が刺激されたような感覚だった。


「すっげぇ。なんだこれ」

「確かに。自分の中のなにかが刺激されたみたいな……」


 どうやら皆もスキルポイントを振り分けて、同じ感覚を味わっているみたいだ。


 それを確認したラバイズさんは俺達に号令をかけた。


「よーし。どうやら皆振り分けることができたみたいだな。

 それでは朝の訓練はここまでとする。恐らくもう食堂には食事が並んでいると思うから冷める前に食べにいくといい」


「「「はい!!!」」」


 勢いよく返事をした皆は一斉に食堂へ向かって一目散に走りだした。その速さによって風が発生し、俺の体にぶつかる。余程ここの料理が美味しかったのだろう。俺もそう思った一人だ。


「皆速ぇ……特に寛大と剛。これがスキルポイントの効果か……」


 後ろも見ずに走るクラスメイト。特に風を切るように走る先頭集団を、見て独り言のように呟いた。その後、太陽の光で暖まった生ぬるい風に当たりながら、俺も旨い料理が並ぶ食堂へと一目散に走りだした。

最後まで読んでくださりありがとうございます。ブックマークと評価をしていただけると幸いです。作者のモチベーションに繋がります。


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