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第十二話 五日目 お互い

 マイ王女が先に動いた。剣を上へと振り上げて、飛ぶ斬撃を飛ばす。


「縦軸炭蛇砲!」


 濃密に凝縮された斬撃が、ダークフラワーめがけて突進する。


茎炎鋲(けいえんびょう)


 それを彼女は、炎を纏い鉄のように硬くなった茎で相殺する。その茎はそのままマイ王女を攻撃する。


「くっ!」


 彼女は剣先で方向を変えて受け流す。その瞬間マイ王女が大きく踏み込む。


「はぁぁぁぁ!!!」





「手伝わないと……行くよ佳純!」


 茜音は佳純に呼び掛ける。


「うん! 皆も行くよ!!」


 佳純が後ろにいる寛大や剛達に呼び掛ける。


「ああもちろんだ!」


「行くぜぇ!」


「遠距離は任せて!」


 佳純の呼び掛けに皆が答える。その瞬間、彼らの周囲に十本程の茎が現れた。


「な……土から茎が!」


 茎は、彼らめがけて奇襲を仕掛ける。


「こんなもん断てばいいんだ! 風拳!!」


 寛大の技で茎は全て断たれていった。次の瞬間、茎から離れていた茜音と佳純以外の勇者達が、次々と倒れていった。




「勇者様達になにをしたの!」


 マイ王女は、攻撃しながら叫ぶ。


「なぁに、彼らの元に麻痺毒がたっぷりと入った茎達を向かわせただけですわ。茎を断って自ら毒を浴びた彼らが悪いのではなくて?」


 ダークフラワーは、嘲笑いながら答える。


「この女……!」


 マイ王女の剣に、より一層力が入る。


「若輩者のあなたにはわからないでしょうけど、これも戦略の内ですわ!」


 ダークフラワーは、凶器の顔で無数の茎をマイ王女に差し向ける。


「茎炎病!」


「その技は見切りましたわ! 私にはもう効きませんよ!」


 マイ王女が迎撃攻撃をする瞬間、向かってきていた茎の半分が、勇者達の方向へと軌道を変える。


「なっ!」


「弱い奴から倒すのは当然ですわ! さあ! 串刺しにされなさい!!」


「二人とも避けてぇ!!」


 茎の速さは車並と遅い部類ではあるが、対して距離の離れていない茜音と佳純にとっては十分な速さであった。

 彼女らの脳天に茎が当たる、その前だった。


火弾(ひだま)!」


 茎が火によってどんどん燃えていく。ダークフラワーは、本体に火が届く前に茎を断つ。


「なっ……一体誰が!」


「佳純の炎で燃やしたよ! これでも一応賢者なんだ。簡単な魔法なら殆ど使えるよ。びっくりした?」


 佳純は、どや顔で言い放つ。


「ッ……ちびの分際でぇ!」


 ダークフラワーは、憤怒の顔で再び茎を差し向ける。


「そのぐらいの茎なら私たちでも防げる。攻昇!」


 佳純が魔法を発動した瞬間、茜音が茎に向かって勢いよく走り出す。


「攻撃力上昇! 標準確定! 荒狂刃(こうきょうば)!!」


 茜音が荒れ狂う剣で、向かってくる茎を全て斬り倒す。その瞬間、後ろから佳純が叫ぶ。


「王女様! 彼らのことは任せてください! 私達と騎士の人達で守ります! だからあなたはそいつを倒してください!!」


 その覚悟は、マイ王女の心の奥まで響いた。


「……わかりました。彼らのことをよろしくお願いします!」


 その時、茎の表面がより硬くなり、重くなった。


「この私を舐めてもらっては困りますねぇ。防戦一方のちび共がぁ!!」


 ダークフラワーの顔がより一層怒りで染まる。茎の動きも、より一層気持ち悪くなる。そんな顔で目の前を睨み付けた。しかし、そこにマイ王女の姿はなかった。


「それは誤解ですよ、植物さん。あなたの方が彼女達を舐めています」


「!! お前いつの間に!!」


 ダークフラワーの死角から声がする。彼女がその方向に振り向くと、マイ王女が空中で剣を構えていた。


「ここからは全力です。千刻回転(ぜんこくかいてん)!!」


 回り始めたコマのごとき回転速度でダークフラワーに斬りかかる。


「微塵切りにされるかぁ! 茎集剛壁(けいしゅうごうへき)!!」


 ダークフラワーは衝撃を地面に受け流して防ぐ。しかし、マイ王女の勢いが強すぎる余り完全には受け流すことができず、何本かの茎が斬られる。


「ッ……なんて回転速度。流石は英雄の血族。侮れないな。では、こちらも本気を出させてもらいます」


 すると、茎の表面にある棘が、五センチ程の長さにまで伸びる。

 太陽が東に傾き始める。


「今の私は絶好調! 例えあなたでも負けはしない! おとなしく私の養分になりなさい!!」


 ダークフラワーは、マイ王女の胴体に茎を巻き付けて、地面に叩きつける。


「げほ!!」


 受け身をとるが、完全には分散することができず、ダメージをもらう。


(これがあいつの本気。谷底に叩き落とされた気分だ。あいつはまだ能力を完全には使っていない。特にあの伸びた棘には気を付けないと。)


 マイ王女は、すぐに起き上がって剣を構える。


「はぁ……はぁ……私は、あなたの養分になることは絶対にない! あなた達魔族が、あの力を手にいれることも絶対にない!」


「それこそありえない! 私達にはあの方がいる! 二桁しか生きていない若造の分際で決めつけるなぁぁ!!」


 棘の先端から、液体がポタポタと地面に落ちる。液体がついた岩が、音を立てて溶けていく。


(あの液体はやばい。)


 そうやってマイ王女が、視線を岩に向けていた時、ダークフラワーが睨みながら叫んできた。


「ハシリドコロの葉を使って作ったこの毒で、お前を死の淵に追い込んでやる!!」


「あらそう。それは恐ろしいわね。でもね。避けて攻撃すればいいだけの話! あなたが勝つことはない!!」


 マイ王女も睨みながら叫ぶ。


「養分となるために!」


「この王国のために!」


「「死になさい!!!」」

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