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夜会で求婚者の一人に執拗に迫られていたところを助けられたのだ。

護衛はどうしたという話なのだが、護衛の中には(かね)で裏切る者もいる。


「大丈夫?」


その一言がヴィクトリアの胸を貫いた。

ガニメデはそれだけ言うと、手を振りながら立ち去ったのだ。

美し過ぎる容貌の中にある少年めいた笑顔。


助けられた日から、少しずつヴィクトリアとガニメデは交流を始めた。

交流といっても、「友人」としてだ。

ガニメデはアーサーと違って、ヴィクトリアの話を楽しそうに聞いてくれる。

それだけでも好印象である。



社交界の荒波に醜聞の的として注目されているヴィクトリアは、本人が思っている以上にストレスが溜まっていた。食欲不振や眠れない夜が続いている上に、男性不信気味でもあった。


ガニメデは、まるで寄り添うようにヴィクトリアの傍にいることが増えた。ヴィクトリアの悩みを聞いたり、励ましたり、笑わせようとしてくれたりと。ヴィクトリアはガニメデの優しさに感謝していたが、だからといって簡単に信用することも出来なかった。

アーサーに裏切られた事はヴィクトリアが思った以上に傷付いていたのである。アーサーを愛していたのか?と聞かれたら、間違いなく「愛していなかった」と答えられるであろうヴィクトリアでも、突然すぎる駆け落ち騒動には参っていたのだ。


なにしろ、ガニメデも貴族だ。しかも古い家柄の伯爵家の人間である。ガニメデの優しさに包まれながらも、決して警戒を解くことはなかった。高位貴族からの仕打ちが嫌でも骨身にしみているヴィクトリアであった。

それでもガニメデとの交流は途絶えることなく、逆に一緒にいる時間が増えた。


ガニメデは、ヴィクトリアに家柄や家族の話をする事はなかった。ヴィクトリアが主に話し、ガニメデは聞き役に徹していた。

夜会でもガニメデがヴィクトリアをエスコートする事が多くなった。

そうなってくると黙っていないのが社交界というものだ。二人の仲が話題になる。


ガニメデの実家であるスミス伯爵家からは「婚約させてはどうだろうか」と、ヴィクトリアの両親の方に話がきていたが、ガニメデ本人が「二人の問題だ。ゆっくりとお互いを知っていこう」と言い、ヴィクトリアに返事を急かしたりすることはなかった。


友人以上恋人未満。


中途半端な距離感ではあったが、傷心のヴィクトリアには有難かった。


優しく美しいガニメデと結婚すれば、きっと穏やかで幸せな家庭が築けるとも思っていた。

一方で、ガニメデの噂も耳に入っていた。

複数の女性と恋愛関係にあるというものだ。

勿論、過去の話ではある。

父親の念入りな調査の結果、今の彼の身辺は綺麗なものだ。

両親も彼との関係を支持していた。


ヴィクトリアは、ガニメデと結婚した。


思っていた通り、幸せな家庭を築くことが出来た。

愛され大切にされた。


記念日ごとのプレゼントはいつもガニメデが一生懸命選んだものばかり。

夜会でもスマートにエスコートされ、ヴィクトリアを悪意から守ってくれる。

些細な変化にも気が付いてくれる。




あの侍女(男爵令嬢)がアーサー様と別れることなく駆け落ちした時、馬鹿な事と思ったけれど、ガニメデと一緒になって少しだけ分かった気がするわ)



――愛する男性を自分だけのモノにしたい。

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