第5話 逃走
走りやすいように先端から中央部分に棒を持ち替え、周りを観察しながら絶賛逃走中の俺。
50mくらい走って分かった事だが、どうやら俺がいる所は森らしい。しかも、遠くを見ても景色が変わらないところ結構広めの森だっていうのが分かる。
足元は平坦ではなく1メートルくらいの起伏があったりするし土に埋まった岩が所々にあり苔があったりして足が滑りそうだ。ちょいちょい草木が生い茂ったりしてるし通るのも苦労しそうなくらいの小さめの木と草が混じった場所もある。散在した感じで大きめの木が存在していて、その木が覆いつくしていて朝?昼間?どっちか分からないが、影が多く湿っている。
たいした距離を走った訳ではないが疲れるし全力疾走という訳にはいかない。高さは一メートルもないが横にデカい岩は普通に足乗っけて越えていくから滑りそうで足元にはメッチャ気をつけてるし、地面も平たんじゃないし太い木の根もあるから大変だ。
なんか、このまま逃げ回っても知らない化け物にあってしまいそうな気がする。俺の装備って木の棒だしな。ここは平坦な場所って訳でもないから、ある程度離れたら起伏のある場所とか草木を利用して隠れてやり過ごす方が良さそうだ。
(確か知らない場所で逃げ回る時って、自然と逃げやすい場所に向かってしまうって聞いた事あるな。)
ゴブリンの声も聞こえなくなってきたと思ったら、方向を少し斜めに変更して走りにくいところへと進路を変える。少し行った所に隠れやすそうな場所があった。大きな木と草がセットになっている場所だ。しかも、ゴブリンが追ってくる可能性のある場所から少し高い場所にあるから見つけやすいし仮に見つかっても、後ろ側の逃げる場所は比較的逃げやすそうな足場になっている。
「よし、ここにしよう。」
と身を潜めなら、呼吸を整えるのに努める。しばらくすると「ギャー!」と声が聞こえてきたので木と草の影から覗き込むと遠巻きながらにゴブリン達が走っている。どうやら自分の考えは間違っていなかったらしく、ゴブリン達はここより大分離れたところを走っていた。
(お、思っていたより多いな・・・。)
なんと驚きの20匹越えである。個人的には多くても10匹以下の想像だったが実際には予想を倍以上離してた。しかも手に持っているは木の棒ではなく、石斧らしきものを持っているのが大半だった。石で殺されるのはゴメンである。
(一匹だけ、槍持っているやつがいるな)
木の棒に尖った石をツタでうまく固定している。アレ欲しいな!ゴブリン達の住処には刃物あるのかな?
そんな事を考えながら、ゴブリン達が遠くに行くのを見つめる。見えなくなってから、自分の後ろ側の方向に歩いていった。
周囲の警戒をしながら20分ほど歩いて、とりあえずゴブリン達とは距離を取って安全になったと思った俺は登りやすそうな木を見つけて登って木の上で休憩しつつ、これからの行動方針も考えることにした。
が、それから更に20分程かけて登り易い木を見つけるのに時間をかけてしまっていた。どの木も10メートル級のデカさがあるので、上手く登れそうな木を探すのに苦労したのだ。
木の上の程よく木の枝や葉が絡み周りから見つかりにくそうなポイントで、俺は考える。
(1日2日の間にこの森を抜けるか、食料を見つけなければ多分俺終わりだよな・・・。)
何より、水は最優先事項になる。語るまでもなく、見つけられなければ待っているのは死である。
(ここがどこなのか、方向すら分からない。ただ闇雲に歩いていて水と食料、そして森を抜けることなんか叶うわけがない。)
どうしたもんかと考えるが、思いつかない。いっそのこと、ゴブリンを生のまま食べてしまおうかと想像する。血が水の代わりにはなるだろうかと。
(でも、ゴブリンがマズイって異世界ものでは定番だしなぁ。しかも俺には刃物がない。皮膚の上から齧り付くのは本当に勘弁だ、人には決して言えない過去になる。出来れば最終手段でお願いしたい。)
そういえばと、異世界もので定番ならアレもあるのではないか。
「ステータス。おっ」