第2話 腰フリフリ
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まさか気付かない内に、怪物に縛り上げられてシバかれる状況にあるとは貴重な経験を通りこして勘弁願いたいものである。
こんな事、現実にある訳もなく映画でも非常にシュールな感じがする。それこそ漫画やアニメの世界の話だ。というか漫画って考えるとこいつらゴブリンってやつじゃないか?
(そうこれはまさに!)
「異世界転移やないか!」
と思わず叫んでしまった。その拍子にゴブリンが「ギャッ!」と驚き少し後ずさりをしているのが面白かったが、考えれば考える程に今の状況は宜しくないのは理解できた。
と考えている矢先に1メートルくらいあるゴブリン(仮)が近付いてきて、「お前少し黙れよ」的な顔で殴られたら絶対に痛いであろう棒を振り上げる。
「あっ、ちょっ」
両手両足を縛られている為、咄嗟に両手両足を縮み込ませ亀のようにして腕や脛でガードをする。これから起きる考えたくもない痛さに息を止めてた。
ゴッ!ゴッ!
(・・・メッチャ痛い。正直現実逃避したいくらいヤバイ。)
ふんスと鼻息をつき後ろに振り替えるゴブリン。「ギャーギャ!ギャーギャ!」と小さいゴブリンが小躍りしている。
「カッコイイ!俺も俺も」みたいな風景を半泣きになりながら見ている俺。なんか、小さいゴブリンが虎の威を借りる狐のように見えて無性に腹が立ってきた。
(クソゴブリンが、絶対に殺す!)
が、しかしまずはこの縛られている状況を脱しない事には殺すも逃げるも叶うことが出来ない。思わず縛り挙げている紐を見てみる。
(植物のツタで縛り挙げられているのか。)
ん!と腕に力みを入れてみるも千切れる感じは全くしない。異世界だとしたら自分の知らない植物である可能性が高く、それなりに有用だから使われているのだろう。
映画のシーンではどこか鋭利な部分に当てて擦ることで紐を切るのを思い浮かび周りを見る。
(あそこに切れそうな石があるな)
3メートルくらい先に地面に埋まった石があり、ボコッと飛び出している。縛り上げている植物は引っ張りには強そうだけど摩擦で擦り続ければ切れそうである。
が、寝転がっている状況で3メートルは遠い。。。
そう考えていると、子ゴブリンが近付いて木の枝を構えてきた。その姿はクソゴブリンの癖にいっちょ前に剣術を学んでいるヤツに見えるから腹立たしい。
パァァァン!
「痛ってぇ」
先ほどの大人?ゴブリンよりは力も弱く、枝で叩いてくるので威力は弱い。それでも弱いけど痛い。鞭で叩かれているように痛いのである。
鞭打ちみたいな痛さだった為に、芋虫みたいによじっていると
「ギャギャギャギャw」「ギャギャギャギャw」
その動きが面白かったのだろう。子ゴブリンもゴブリンも笑っているのが分かる。
(クソ!こうなったら一刻も早くあの石まで辿りついて亀ガードで身体を守りながら紐を切ろう。)
俺は身体を縮めは伸ばし、伸ばしは縮めを高速で行い石に近づいて行った。
(もっと早く)
横向きの身体をくの字に曲げ、伸ばした反動で前に少し進む。自分の人生のなかで、これ程に早く腕と足を延ばし高速で腰を動かした事はあろうかというスピードで動いた。
ゴトン。。と棒を落とす音がした。
「ギャーギャギャギャ」「ギャーギャギャギャ」と後ろからメチャメチャでかい声が聞こえる。
・・・・多分、メチャクチャ笑われてるな。