第19話 苦労の先に
毎日11時に投稿
石槍の先端だったものを持ってきた焔は、オオカミを切りやすい場所に移動させるために動かした。すると、想定している重さよりも明らかに軽く持ち上げているのを感じたのである。
「お!もしかして。ステータス」
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名 :焔 天善(24)
職業 :世捨て人
階位 :3
スキル:【気配察知Lv.1】【計算Lv.7】【踊りLv.1】【酒豪Lv.1】
称号 :
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(階位上がっているな。それとスキルも習得している。【気配察知Lv.1】か、オオカミからバックアタックされない為に周囲の警戒をずっとしてたもんなぁ。そういえば木の実を取り終えた時に周囲から何か視線のようなものを感じたのはこのスキルのおかげか?)
スキルに助けられたなぁと焔はしみじみ思う。そして
(階位を上げることとは別でスキルを身につけていく必要があるか。)
そう考えながら、オオカミの足を片手て軽く持ち上げ、首を切りつけてみたが毛皮が邪魔で全然切れなかった。ちょっとカッコつけて切りつけてみた焔だったがオオカミを地面に下ろし寝かせると首回りの毛を引っ張って石槍の先端で力強く擦りつけて切っていった。すると、まだまだ血が流れてくるので腰に巻いていたツタでオオカミを逆さにして吊り上げ血抜きを行う。それを繰り返して3匹のオオカミを吊り下げた。
血が流れなくなってきたのを確認してどうにかして毛皮を取ろうとするが、これが全然上手くいかない。筋肉にへばりついて上手く剥がせないのである。最後あたりでやっとシールを剥がす時みたいにペロっと剥がれる時があったがもう1体目は全てズタズタである。
「気を取り直して2匹目にチャレンジ!」
2匹目も悪戦苦闘するが、1匹目よりも遥かに手際よく切れ込みをいれ「多分、この辺りを薄く切れ込み入れていくんだろうなぁ」と呟きながらペロっとめくれるか引っ張ってみる。すると、洋服を裏返しに脱ぐように捲れてきたのである。
「おおおおおおお!ちょっと感動!」
がしかし首から下へ捲れていくものの足の部分で捲れなくなってしまったのである。皮が薄く筋肉と大分くっ付いていたのであろう。お腹周りも捲れず仕方なしに縦に切れ込みを入れて開くように捲っていくことになった。終わってみるとそれなりに毛皮を取れたように思う。
3匹目は先ほどの反省を活かし、首周りの切れ込みとは別に首からお腹にかけて縦に切れ込みを行い、首周りと縦の切れ込みが交わった角から捲るようにして皮を剥いでいった。人は成長するものである。
意気揚々と拠点へ持ち帰り、転がっている木の棒に毛皮を一旦置いた時、焔に衝撃が走った。
「この綺麗な水に手を突っ込んで汚すのかなりマズイのでは?」
切り立った崖からチロチロと滴るように流れている水が地面で水が溜まる様に窪みをつけて溜まっている。窪みから漏れた水が淵から染み出るように流れている。これにこの血で汚れた手を突っ込んだり毛皮を洗ったりしたら、今後、水をすくって飲めないのではないだろうか?少なくとも汚れたものが下に沈殿するまでは下手に飲めないだろう。
やってしまった。と悔やみながら焔は、その窪みの少し離れたを掘り始めた。
多分1時間近く掛かった辺りで、焔は縦横30センチの穴を作り上げた。更にこの穴が水で浸食されて底が浅くならないように石を拾ってきて底と周りにも敷き詰めた。底や周りから土が見えなくなるくらいまで敷き詰めたあとに、窪みから染み出た水がこの新しく作った穴に溜まる様に水路を作り傾斜をつける。完成である。
ゆっくり、本当にゆっくりと水路に水か染みていくように進んでいる。
「これは、明日まで掛かるな。」
そう思った焔は、とりあえず疲れたので
血と土にまみれた状態で寝た。