第18話 焔 VS オオカミ
毎日11時に投稿します。
(どこに木の実あるかなぁ。)
焔はどこに木の実があるか考えていた。
「確かゴブリン達の様子を観察していた時に洞窟を正面にして右側の奴らは卵を回収してたよな・・・。右に行くと何かの生物がいるってことか?それじゃあ逆に左に行った連中が木の実を回収したのか?」
簡単な推察ではあるが、記憶を頼りに洞窟を正面からみて左に歩いていくことにした。切り立った崖を目印に歩いていく、すると300mも歩かない内にいつも食べている木の実の成っている木を見つけた。焔が食べていた木の実は小ぶりのものか既にゴブリン達に砕かれていたものだったようで、見つけたのは10センチはあろうかというデカい実が成った木であった。
ん?と焔が下を見ると、いつも食べているサイズの木の実が落ちている。どうやら成熟しきっていない小さな実が地面に落ちているように感じる。地面に落ちている木の実をとりあえずポケットに詰め込み、1個だけデカい実を取って食べてみようと木の上に登り実を握り捻じって手に取る。
「ドングリを太らしたような実だな。なんで小さいのが先に落ちるのかは謎だけど、こんなデカい実ならとりあえず腹は膨らませることが出来る。」
思っていたより難航せずに済んだと考え下に降り仮の拠点に戻ることにした。
10歩も歩かない内に、焔は周りの空気がさっきより少し異なるような気がした。嫌な予感がしてきて背中に寒気がやってくる、すぐさま辺りを見回しても何か居るように見えない。しばらくジッと周りを確認しても何も見つけられないが、怖くなった焔は足元が危険であるが急ぎ足で動き出した。
特に後ろを警戒しながら都度都度周りを見回しながら動いていく。すると側面遠巻きに動いては隠れ、動いては隠れをしている生物を見つけた。
あの緑色のオオカミだった。ぱっと見て2体いた。70~80メートル先にいる。
オオカミだと確認した瞬間に焔の血の気が引き、すぐさまダッシュした。それにつられてオオカミ達は隠れるのをやめて真っ直ぐ追ってきた。焔が拠点へ向かって崖沿いに直線に進んでいるのに対しオオカミは側面から斜めに迫ってきているような状態だった。
(このままだと拠点まで持たない。)
まだ拠点まで200メートル近くありオオカミ達が15秒もしない内に追いつかれ、拠点に逃げ込めむには微妙だと肌で感じた焔は、少しでも自分が有利な場所で戦わなければと考え走りながら周りを確認した。
(あそこだ!)
焔が決めた場所は、地面から突き出た1メートル位の岩と更に1,5メートルの岩が並んでいる場所だった。1メートルの岩は奥歯みたいな形になっており、その隣の1,5メートルの岩は米粒の様に立っている状態である。
そのままジャンプして奥歯の形状をした岩に上がり、米粒のような岩の上に移動した。
「ふー。やばかった。」
すぐさまオオカミ達が焔の周りを取り囲んでいた。これなら囲まれて食い殺さる状況ではないのだが、焔のいる米粒の形状をした岩は上から尖った木の棒で突き刺すには足の踏ん張りが効く形ではない。最も危険な状態を回避しただけで有利と言える状態ではなかったのである。焔は背中に預けていた尖った棒を両手で構えながら落ち着いて現状を確認した。
(奥歯みたいな岩の上に1匹、米粒岩の周りの地面に2匹か)
地面にいるオオカミ2匹が直接襲い掛かるのは難しそうだが、奥歯の岩に昇ってきたオオカミとは岩同士の高さの差が50センチ程度しかないため、オオカミが襲い掛かろうと思えば出来る高さである。そして焔の足を狙ってすぐさま襲い掛かってきた。
「シッ!」
今いる岩は足場が悪い為に、焔は隣の岩側に体重を乗せながらオオカミ目掛けて尖った木の棒を突き刺した。
が、オオカミはその尖った棒を顔だけ上手くさけ棒に齧り付いた。棒を抑えて無力化することを察知した焔は腰にあった石斧ですぐさまオオカミの頭をカチ割ろうとする。しかし、それを察知したオオカミが咥えて放そうとしなかった棒を開放し石斧を後ろに下がり避けた。
今度は焔が左手に持っていた棒を後ろに下がったオオカミの首に突き刺した。
カツッと足の爪が岩と当たる音が聞こえた焔は後ろからオオカミが奥歯の岩にジャンプしてきたと察知し、確認もせずに中腰の状態で右手に持った石斧を回転しながら後ろへ打撃を加えた。
すると、2匹とも岩の上に上がってきており石斧が最初の1匹の上あごを吹き飛ばした。吹き飛ばした上あごが隣のオオカミに当たり、鬱陶しそうに片目を瞑り岩から落ちた。
(危なっ、背後へ石斧を草薙に切りつけなかったら、どっちかに必ず襲われてた)
上あごを吹き飛ばしたオオカミはヨロヨロと動きながら倒れた。まだ生きてはいたが、噛みつきは無理だと判断し無視することにした。
すぐさま尖った棒を殺したオオカミから引抜き、岩の上からオオカミへ牽制する。が、最初のオオカミとは違い守りに入っているため棒が届く範囲内には入ってこようとしなかった。
「もうこの辺りでオオカミはお前しか居ないんだろ?決着付けようぜ。来いよ」
さっきまで必死に逃げていたクセに、立場が逆転したら偉そうな事を言う焔であった。
岩の端によりオオカミを待っていると、さっきの言葉を理解したのかオオカミが正々堂々?と決着をつける為に岩の上へ登ろうとしてきたのである。
「シッ!」
登ってきたタイミングを見計らって素早く尖った木の棒でオオカミを突き刺し、石斧でトドメを差した焔。対戦相手が人だったらブーイングの嵐である。
「うっし、石槍の先を拠点から持ってきてオオカミの毛皮を剥げるかチャレンジしてみるか!」
明日はステータスを確認します。