15話 撤退
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「うおおおおお」
転がるように俺は猪の突撃方向から側面に逃げた。ゴブリン達も吹き飛ばされている者、側面に逃げた者もいる。
ただ、猪の牙に突き刺さったゴブリンは即死なのか猪は自分の牙を遠心力をうまく利用してゴブリンをムシャムシャと食べている。なにこの世界の猪、怖いんですけど。
ふと、ゴブリン達の更に向こう側に視線を向けるとオオカミ達は既に居なくなっていた。たしかに、オオカミ達の牙ではこの猪には勝てなさそうだもんな。天敵かな?
さて、これからどうしようか。ゴブリン達の数を減らしたいが矛先が俺に向かっても碌な事にならない。現在ゴブリン達は5匹いて俺よりも猪に最大警戒をしている状況である。猪の突進を躱して側面から攻撃する為なのか広めに散開した陣形を保っている。さっきも思ったがそこそこ頭良さそうだ。
そんなゴブリン達の一番端っこの俺に近いゴブリンに対し俺は石斧で頭を豪快にカチ割ってやると、
とっとと逃げた。
明日、ゴブリン達の様子を見て考えよう。そう思い、さっさと逃げオオカミ達に襲撃されないように周囲の警戒をメッチャしまくって寝床に帰ってきた。あっ、夜の為にツタも勿論用意したよ。
相当緊張した状態が続いたのか、俺はまだ夕暮れの状態にも関わらず眠りに落ちた。同じ姿勢なのはやっぱりキツく何度か目が覚めて態勢を変えたりしたが、ツタで身体を固定させているので落ちる事の心配がなくなって昨日より遥かに安心して寝れた。
翌朝、バッキバキの身体を伸ばしながら集落に向かった。念のためにステータスを確認したが階位は上がってなかった。7~8匹ほどのゴブリンを倒したが駄目だったようだ。
ゴブリンだけではなくオオカミに猪と注意しなければならない生き物の存在を知り、周囲の警戒を行いながら集落に近づいていく。
(うそん)
驚いたことにあの狂暴な猪の死体が横たわっていたのだ。脇腹にメッチャ傷つけられた痕があるので恐らく俺が逃げた後にゴブリン達が上手くやったのであろう。傷つけられた脇腹をみると折れた木の棒が刺さっていた。
(これは、もしかしてあのゴブリンリーダーが持っていた槍ではないだろうか?)
よし、後で引き抜いてもう一度槍として復活させよう!だけど、それよりも今は集落の確認だ。猪の周りには2匹のゴブリンの死体がある。確か、昨日ゴブリンが猪を迎撃にする時には5匹いた。俺が1匹倒して逃げたから4匹。その死体とは別に2匹の死骸があるから、残り2体は居るはずだ。
(あ、それと子供ゴブリン達な)
慎重に集落に近づいていく、草に隠れながらチラチラ覗いて確認するがゴブリン達は見えない。
どこか食事を求めに行ったのだろうか?
と考えたが、猪の死体がここにはあるのだ。わざわざ食事を探しに行く必要はないだろう。どこかに行ってしまったのか。確かにここの周りは死体だらけである。
正直自分も、昨日みたいに突然オオカミに囲まれてしまうのは勘弁願いたい。昨日みたいにうまく凌げる気は全くしないからな!
そう思いながら集落の広場に足を伸ばす。やはり気配はない。ほら穴も覗いてみたが何も無い。これは・・・。新たな新天地を求めてどこかに行った可能性が高い・・のか?
正直全くの謎である。
とりあえず、俺は喉が渇いていたので洞穴の側にある水をメチャクチャ飲んだ。