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【完結】アイのさがしもの【童話】

作者: 白宮 安海

  ロボットのアイは掃除ロボット。今日もきかいたちのゴミの山で掃除します。

 ある日アイは、ばらばらになったロボットに話しかけられました。

「お前さん、人間にそっくりな形しているね。知ってるかい?人間には心ってものがあるんだと」

 ロボットにそう言われてアイは心のことが気になりました。そこで心のありかを探しにいくことにしました。


 けれどもゴミ山のどこを探したって心は見当たりません。ロボットは、

「都会に行かなきゃ見つからんよ」

 と言いました。アイはさっそく都会に行って心をさがしに行きました。

 けれどもゴミ箱の中や、にんげんのポケットの中を探しても見つかりません。

 そのうえ、にんげんにロボットだ!とつうほうをされてしまい、アイは路地うらへ逃げ出しました。

 

  ひとりぼっちで月をみつめながらアイは思いました。

 どうして月はまんまるなんだろう。心があればわかるのかな?


 どこへ行けばわからないまま立ちつくしていると、そこで家出をしてきた王子さまと出会いました。王子さまはまったく笑わず、まるで自分のようなきかいに見えました。どうして笑わないのか聞くと、王子さまは言いました。

「むかし、小さい頃ロボットを作ったんだ。それをバラバラにされてしまったんだよ。僕はもうあんな暮らしはごめんなんだ。だからゴミ箱の中にまぎれてゴミと一緒に家出してきたのさ」

 それから王子さまはポケットの中から、何か小さなハートの形をしたきかいを取り出しました。ハートはどくどくと動いています。

「これはロボットに最後にとりつけるはずだった心だ。僕はそのロボットに会いに行くつもりなんだ」

 アイは心を見ると、自分のぽっかり空いた胸の中が温かく光るふしぎな感覚がしました。かがやいているアイを見て王子さまはもしかしてと思いました。

「君が僕が作ったロボットなのか?」


  王子さまがさいしょにアイを見て分からなかったのも無理はありません。何故ならアイはこわされたままゴミ山に捨てられ、そこからまたロボット達の手によってつくられたからです。

 

  アイに心を近づけると、心も光り輝きました。そのままぽっかりと空いた胸の中に心をはめると、アイは胸のそこからさまざまな感情がわいてきて、目の前の王子さまのことを、いとしく感じました。


 それからアイは王子さまにキスをし、二人でお城に戻って結婚式をあげ、にんげんのように暮らしました。王子さまもすっかり笑顔をとりもどし、アイと一緒にいるととても幸せに感じました。

 アイはきれいなドレスを着て、化しょうもして、にんげんよりもにんげんらしく過ごしたので、けっきょくだれもアイをロボットだと気づく者はいませんでした。皆が100さいになって、死んでもだれもアイの正体には気づきません。


 けれども100さいになった王子さまはすっかり形も変わりはててしまいました。そして長い長いねむりにつく、と言って本当に長い長いねむりについて、二度と目を覚ましませんでした。


 なのでアイは自分の心とそっくりな心をつくり、それから出会ったときの王子さまと同じ形のロボットをつくって、心をはめこめました。

 すると王子さまはあの頃のまま動き出して、アイに言いました。

「ありがとう、僕を作ってくれて」

 ふたりは手をつないでどこかとおくへと行きました。月の下でおどったり、海をわたったり、森をさんぽしたり。

 そうしていつまでも、にんげんらしい心で暮らしましたとさ。


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