具無しのおにぎり
なろラジ大賞2用です。
1000文字というのは難しいですね(デジャヴ)
「……あーー!無理だってこんなの!」
「そこの男子うるさーい」
「……くっそー……」
小学生の、ある一限。
調理実習の時間は……俺にとっては嫌な時間だった。
その時の授業内容は――自分達で弁当を作るというもの。
五人班で一人がおかずを一品ずつ作り詰めていくのだが……俺は一番簡単そうな、おにぎりを作る係を希望した。
「うわっお前ぐちゃぐちゃじゃん!」
「う、うっせえ!これだから家庭科は嫌なんだって……」
必死にご飯を握るものの、下手くそ過ぎて丸にもならない。
三角なんてもっての外だ。
もしかして一番難しい役なんじゃないか……?
「……」
そんな時。横の班の中で――俺と同じくおにぎり係の女の子に目が映る。
騒いでいる他の班員とは全く喋らず、黙々と作業をしている。
その子はいつも休み時間に本を読んでいる様な子で、話す事もあまり無かったが。
「……すげぇ」
どうせこのままじゃ作れない。他の人のやり方でも見ようと彼女の方へ向かった俺。
見れば華麗な手つきで、綺麗な三角おにぎりを作っていた。
「……!な、なに?」
「え、い、いや……」
その時、俺は何故か……いや今となっては分かるんだけど。
彼女の綺麗なそれを見て、少し頬が赤くなっていた。
「お、お前すげえな!俺のも握ってくれ!」
「え!?い、良いよ……?」
急いで持ってきた一人分のご飯を、鮮やかな手つきで握っていく彼女。
あっと言う間に出来たそれを見て――不意に彼女の表情は曇る。
「……あっ!具入れるの忘れちゃった――」
「――い、良いって!おにぎりは具なしが一番好きなんだ、じゃあありがとな!」
そんな嘘をついて俺は自分の席に戻る。
なんとなく恥ずかしくて、早く戻りたかったから。
「ふざけんなお前!四角のお握りがあるかよ……何で自分の隠してんだ?」
「なんでもない!」
……そして自分の分だけ、彼女が作ってくれたおにぎりを入れたのだった。
☆
「……何で急にこんな事思い出したんだろ……」
「……せんぱーい?大丈夫っすか?」
「あ、ああ」
時は経ち、俺も三十歳。
あの頃は良かったなあ……
「おっ先輩またそれ入ってますね!上手く作りますな~ほんと。一個下さい」
「ははは、やらん!」
「……知ってました。そういや、先輩って『具』は何派なんすか?」
「はっはっは、おいおい知ってるか?おにぎりは具無しが一番美味いんだよ!良いか?塩と米だけってのが~…………」
アレから二十数年。
あの時のおにぎりは……俺の弁当箱が独占している。
弁当作る調理実習、あったのは自分だけでしょうか……