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6/13

さようなら、いままで幸をありがとう

あらすじ


世界がどう変わったのかを確かめるため、都会に向かうことにしたが・・・

電車に乗って気付いたことはいくつかある。


撮り鉄は普通にいた。

あいつらは元の世界にもいたが、これといった変化はなかった。

「周りの目」に影響されないヤツには変化がないのだろう。


やはり俺たちはテレビが主戦場の一つだから叩かれていたのだろう。

ネットだけに引きこもっていれば、大衆が流れ込んでくるまでは平和だろうし。


あいつら下のやつの忠告なんか聞かねえんだもん。

ROMれよ。叩かれたくなきゃ情報晒すなよ。

・・・まあ、この世界で考える事ではないな。



他に気付いたことといえば、ゴシップ誌の広告だ。

元の世界じゃ俺らにゃ縁のない有名人の隠し事を暴露していたが、いくらか知っている名前率が上がっていた。

人間のクソな部分はオタクだろうがなんだろうが変わらないんだな。





俺の行動範囲は至って狭い。

大きく街が広がっているが、俺が行っていたのは端っこの方に集められたオタクショップたち・・・通称「オタロード」くらいだった。



駅から出た俺にあるものが出迎える。


オタク美容室・・・?


いつも「理容室」を使っている俺には「美容」なんて恐れ多いものだったが、気の迷いを疑いつつも入店した。


「いらっしゃいませ。7番の席にどうぞ。」


・・・至って普通の店だな。



「本日は誰みたいなカットで?」


なるほど、キャラの髪形をイメージしてくれるのか。


「えっと・・・じゃあ、マミアで。」


「わかりました」


「ふう・・・」


「兄ちゅぁ~ん兄ちゅぁ~ん」チョキチョキ







俺、合わんわ。


なるほど。ここは「オタクをファッションとして使う層」向けの店なんだな。

俺は恥ずかしさを紛らわすために、週刊誌を開いた。



『特集!オタク男子の魅力に迫る!』


おっ、なかなかこの世界を知るのに役立ちそうな見出しだな。



『オタクとは、何か一つのものに驚異的な熱量を注ぐ人たちの事!』


このテのやつで、意味が変わっていないのは新鮮だな。



『趣味に熱中するその真剣さ!まっすぐな眼差しがステキ!』


なるほど。真剣な男なら、それが何に対してでもカッコいいとなったのか。



『オタク言語に挑め! 名前はあえて全部「ひらがな」で! そのダサさこそカッコいい!?』


・・・古くないか?




「これでどうでしょう?」


散髪が終わったようだ。

どうでしょうと聞かれてもサッパリわからんので、俺は笑顔で頷いた。


鏡には今時の少年漫画の主人公によくあるショートヘアーのナイスガイが映っていた。

・・・俺が好きなのは、もっと昔の欲望に忠実で悪いことをしてオシオキを食らうボサボサなんだが、散髪でそれを言うのはお門違いだ。



さあ支払いを終えたので、街へ繰り出そう。

・・・安くはないな。








オタロードが・・・ない・・・!?


目の前には学習塾が広がっている。

元の世界じゃここにオタクショップが並んでいたはずだが、どこにもない。

どういうことだ?オタクは一般化したんじゃないのか?



悩みながら外に出ると、大通りには規模を大きくした『NEOオタロード』が広がっていた。

うう、ここまで主張されると羞恥心が目を覚ますな。


とりあえず中に入ってみよう。

何か違いがあるかもしれない。





・・・どこだ『スノゥ』は!?

元の世界じゃ結構な一大コンテンツだったはずだが、見つからない!?


俺の「店の配置パターン」が通用しないだと!!?!

普通この辺りに置くはずだろ!?


何だこの「テンプレ萌え作品」は!?

俺の好きな「さほど媚びてないデザイン」はどこにいった!?


あっここか。

なんでこんなに隅の方なんだ?



そうか、テンプレの方がファッションとして使いやすいのか。


他には・・・同人誌コーナーがやけに広いな。

そしてこの店内BGM・・・



「公共の場で流すにはちょっと痛すぎないか?」

しまった。声に出てしまったか。


「おぉ!おぬしもそう思うでござるか!」


何だこいつは。


「やはり、我々の文化はもっと『奥ゆかしさ』を感じさせなければいけないでござる!」


「ファーッ!笑止千万ッ! 懐古厨は黙って歴史を遡るがいいわ!」


「現れたなナウボーイ! オマージュも理解できない愚か者め!」




・・・俺は限界だと悟った。

つづく

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