輝きはこっち側へ?
あらすじ
知っているのに知らないものになっていたコレクションを楽しんでいた・・・
朝焼けが眩しい。
どうやらオールしてしまったようだ。
少しふらつきながら朝食を済ますと、急いで学校へ向かった。
正直、興奮しっぱなしだ。眠気など全くない。
今日は部活を体験してみようか。
ウキウキが止まらない。これが青春だったのか。
授業を終えると、俺は何の部活に首を突っ込むか考えてみた。
運動はからっきしなので文化部にしよう。音楽部とかカッコいいし。
俺は音楽室に向かった。
部屋の中から歌声がこぼれる。
「くたばれおれさま あきらめな~ おまえに普通はありゃしない~」
・・・なんちゅう歌だ。こんなのが流行るとは世も末だな。
俺は音楽室のドアを開けた。
オタクの地位が高い以上、部活などは「ノリ」でなく「真剣」こそが正義となる。
専門外の俺がフラっと首を突っ込むことを喜ぶとは考えにくい。
だが、俺には秘策があった。
話を聞く。・・・それだけだが。
オタクというのは布教が大好きで、語らしてくれる人は簡単に味方だと判断する。
実際、成功はした。
俺は音楽部に入った。
さて、ギターでロックにキメたいところだが、俺は昔からドラムをやってみたかったので、その旨を伝えると、快く受け入れられた。
「・・・でも、本当にいいのか? 俺、ド素人だぞ。」
「大丈夫だって。 『声』とか簡単だぞ。」
『声』・・・元の世界にもあった曲だ。
なるほど。影響されない価値観もあるんだな。
「とりあえず、こうツッツターと繰り返してりゃなんとかなるさ。」
「・・・よし、物は試しだ。やってみていいか?」
「いつでもOK」
「よーし・・・」
俺はスティックを上げ、
「1!2!3!」
・・・やばい。この時点で超楽しい。
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声
作詞 NT 作曲 読んでいるあなた
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「時は流れ 私を連れ去るわ
胸の時計は止まったままね
変わりゆく人並みの中に
あの頃の景色重ね合わせ」
ボーカルが静かに歌いだす。
この曲をここまでしっかり聞いたのは初めてかも。
「愛してほしいの ぎゅって抱きしめてほしいの
無理な希望抱いて待ち続ける」
さあサビだ。盛り上げるために大きなシンバルを鳴らす。
ボーカルの女子が笑顔を見せた気がした。
「アナタの笑顔に助けられた
つたう涙を拭ってくれた
愛してると言ったアナタの声を
もう思い出せないの」
超盛り上がって最後まで終わった。
実際盛り上げたのは俺以外のみんなだが、それでも気分はいい。
「どうだった?」
部長が笑顔で感想を求めてきた。
「・・・ありがとう。」
語彙力がなくなった俺は、ただ感謝を伝えるしかできなかった。
部長は軽く笑うと、満足そうな顔を見せた。
正直もう満足だ。
リア充として青春を謳歌し切った。
立ち上がると、急に視界が歪んだ。
と同時に俺は立っていることができなくなった。
つづく