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扱い・おぼえていますか

「常識」というのは主体性のないものである。


マスコミなりなんなりが

「これが正義であり、こういうヤツらは虐げていい。キモイから。」とでも言えば、

大衆は何も考えずにその偏った思考を正解だと信じ、その思考が「常識」という言葉の意味となるのだ。

俺はオタクである。

そして、オタクというだけで居心地の悪い生活をしてきた。


こちとら人様に迷惑をかけた覚えはないが、俺は趣味が「特殊」と呼ばれるオタク趣味なだけで虐げられてきた。

逆にカースト上位のやつら・・・純粋に人気者のやつらは別に何とも思わないが、人気者の腰ぎんちゃくというだけで偉くなったと思い込んでマウント取ってくる輩や、ぱっと見イメージのいい部活に所属しているというだけで他者を見下す愚か者。あとご機嫌取りの為に俺をイジメていた教師連中は、

オタクの俺たちを蔑み馬鹿にし人権もクソもないゴミのような扱いをしている。


しかし、こいつらは「正義」なのである。

それが「常識」である。




それが「常識」であったのだ。


朝、目が覚めると世界が変わっていた。

といっても、すぐに異変に気付くようなものではない。

ぱっと見じゃ何も変わっていないのだが、テレビをつけて初めて異変を感じた。



やけにオタクに寄り添っているのだ。



大抵、このテの番組・・・朝の情報バラエティというやつは「女子」を自称する者向けに作られているのだが、

声優特集にコスプレコーデ。BGMにはキャラソンのインスト版が流れ、アナウンサーの自己紹介にアニメチックな前口上が増えている。


これは夢か現実か。

やけに『自分達に都合のいい』世界だ。

少なくとも昨日までとは違う世界と言える。


テレビの過度な祭り上げに少し引きつつ、俺はいつも通り登校の準備を済ませた。




町は俺の記憶通りの風景だった。

痛車で溢れかえってはおらず、アニメ広告が張られているわけでもない。

そんなゲームみたいな『オタク向け世界』は広がっておらず、朝テレビを見てなければいつも通りの一日となっただろう。

ただ、歩行者信号のシルエットがおさげでスカートを履いていたのは気になったが。


まあ「至って普通」と呼べる世界だった。






しかし、教室に入ると完全に別世界であった。


女 子 が あ い さ つ し て く れ た の だ 。



ハァ?と思わないでくれ。俺にとっては異世界そのものなのだ。

悲しくも、自分とは縁のなかった『幸せな人生』を味わったことで違和感は確証となった。


俺は自分が異世界に来たのだと確信した。



とはいっても、ぱっと見じゃ普通の世界。

『趣味:人間観察』を役立てる時が来たようだ。



周りの雰囲気から察するに、この世界では「オタク」はカースト上位に位置するらしい。

ただ、みんなはっぴー!な世界ではないらしく、新しいカースト下位も存在していた。


元々の世界で俺たちオタクをイジメていた「人生にわか組」である。

勉強や部活に青春をかけるでもなく、オタクよりはキモくないというだけで上から目線で、どうやったのかは不明だが彼女とか作っていて、他人(おれたち)を蔑むことで自己肯定をしていたムカツクやつらがいじめられっ子でいたのだ。



居場所のないヤツは本人を見なくても分かるもので、コウモリ女子の嘲りの話題が俺にも振られた。


しかしだ、俺が嫌いだったのは俺をイジメて良い思いをしていたこいつらであって、弱者となった惨めなこいつらは、ただ合わないだけで敵ではないのだ。


それに、嫌いだったやつと同じになる必要もない。

オタクとして作品のテーマは人生に吸収せねば。




「そんなこと言うなよ。みんな仲良くしようぜ?」




クッサいセリフ!!!


しまった。喋り慣れていないのがモロバレだ。


しかし、周りの女子からこぼれる「かっこいい~」の言葉たち。

それもバカにしたような裏の意味などなく、純粋に好意の目。「トゥンク・・・」の擬音付きの眼差しで俺を見ているのだ。


何という幸せ。

自分を肯定されるのがここまで気持ちいいとは。



俺、この世界好き!

・・・外で笑顔になったのはいつぶりだろうか。

つづく

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