第五話 ログイン
ちょっとあるゲームで走ってたので投稿遅れました・・・
とりあえず、次回から頑張るので許してください。
放課後 三年二組教室内
「あの生徒会長さんに上手く乗せられたけど、よく考えたら失敗だったかもな〜」
「掌で踊らされたとしても、踊り方は自分で決められる。違うか?」
「あー、そうね・・・それに、生徒会やる事自体にデメリットは無いしな。強いて言うなら時間が取られることか」
七瀬と夜科の二人で誰も居なくなった教室で話し合う。
ちなみに、二那はバイトがあるとの事で先に帰ってしまった。
「《剣豪》よ、生徒会を気にするのも結構だが、分かっているのだろうな。今日の七時からだぞ?」
夜科の言っているのは四葉のやっているというゲーム、《ラスト・ソウル》の事だ。
昼休みの時に、今日の夜から早速やろうという話になったのだ。
「分かってるって、もうダウンロードもインストールもしたよ」
「ならば良い、貴様が来なかったら三対一だからな・・・想像するだけで寒気がする」
「は?・・・あ、男女比の話ね」
「良いな!予約ログインだぞ?一秒でも遅れたら許さんからな?」
「近い近い・・・分かったから」
人の事は言えないが、夜科も七瀬と同等かそれ以上に女子が、というより他人が苦手だ。そして、その分、共通の趣味があると分かった瞬間、一気に距離を詰めようとする悪癖も。
「じゃ、また後でな」
「うむ、約束の地で会おう」
外の方から部活の始まる声が聞こえてきたところでいったん別れ、帰宅することにする。
夜科は《同胞》に会うとのことで校舎の西棟に向かったので、七瀬が一人で玄関へ向かうとちょうど図書館から出てきた少女と鉢合わせた。
学校どころかクラスメイトの名前すら半分も覚えていない七瀬だったが、彼女の名前は知っている。
三時間ほど前に生徒会室で顔を合わせた、気だるげなオーラを隠そうともしない眼鏡少女、名前は確かーー
「あれ、夜宮先輩?」
「あ、ああ・・・ええと、東雲さんだよね?」
「はい、どうもです」
眼鏡少女、東雲五莉がぺこりと頭を下げるとボブカットの柔らかそうな髪の毛が揺れる。
生徒会室でのやり取りで余りコミュニケーションを積極的にとるタイプでは無いと思っていたが、意外とそうでもないのだろうか。
不思議そうにする七瀬に気が付いた五莉が再度頭を下げる。
「ああ、そういえば生徒会室では言ってませんでした。私、一年生なんです」
「あ、そうなん?て、いや、そうじゃなくて昼休みの時にはもっとこう、不機嫌そうなオーラ出してたから」
「ああ、あれは単純に眠たかっただけで、三時から夜はこんな感じなんです」
「へ、へえ・・・」
男なのに髪の毛を阿保みたいに伸ばしている自分のことを棚に上げるわけではないが、生徒会のメンバーがこんなのばかりで大丈夫かと、七瀬が心配していると、五莉がそういえば、と、手のひらを合わせた。
「実はVRゲームをやるのは初めてなんです、今夜は迷惑をかけてしまうかもしれませんが、お願いします」
「そうなのか?いや、別に俺たちも《ラスト・ソウル》は初めてだから大丈夫だと思うよ」
言いながら七瀬は困惑していた。
ーー四葉は強いゲームプレイヤーをわざわざ辻斬りじみた真似をしてまで探していた、だというのに初心者を入れるのか?
普通に友達だから入れたという線もなくは無いが、それならなおさら七瀬達を引き入れるためにあそこまでの労力を割いた意味が分からない。
その後、結局謎は解けなないまま五莉とは別れてしまったが、後で直接、四葉に聞けばいいかと思い、七瀬はすぐに家に帰ることにした。
午後6時55分 夜宮七瀬宅
《リベレイト》を首に付ける。
最大展開で直径15センチ、重さ40グラム、この小さなチョーカーのような機械の中にはゲームの歴史を覆すほどの機能がいくつか組み込まれている。
そのうちの一つがゲーム世界における時間の加速だ。
技術名、肉体という檻から人間の精神を解き放ったことで実現したこの技術はゲーム業界にとってのすさまじい追い風となっている。
ちなみに《リベレイト》の加速倍率は12倍、つまり、《リベレイト》は装着し、ゲームをプレイしている間、現実の12倍の時間を過ごすことになるのだ。
最初期は弊害として、仲間内で遊ぶ際、ログイン時間を厳密にしないとひどい待ちぼうけをくらう、もしくはくらわせてしまうことになるというデメリットも生まれたのだが、《リベレイト》の本体アップデートにより、加速倍率1倍の仮想世界が作られ、そこで待機していれば、設定していた時間になった瞬間に自動でログインできるという予約ログインシステムができたので、その問題も既に解決している。
「システム;ログイン」
喉の振動から七瀬のパスコードが呟かれたのを検知して、《リベレイト》が起動する。
彼にしか見ることのできないホログラムによるメニュー欄がいくつも目の前に現れ、そのうちの一つ、《MODE VR》とあるバーを現実の腕でタッチするとその瞬間、カウントダウンと共に視神経のカットによるショック軽減のため、目を閉じるよう警告が出てきた。
警告に従い、両の目を閉じてから五秒後、体が浮かび上がるような錯覚を感じてから目を開ければ、もうそこはそれまで眠っていた七瀬の部屋ではない。
灰色の壁にゲームの中で手に入れた刀剣の飾られた、無機質で殺伐とした七瀬のための世界だ。