第四話 黒いやり方も必要
《リベレイト》ーー首につけるチョーカー型のゲームハード。その原型は医療用機器だという。
麻酔を使用しない、電気信号による全神経の完全カット、その技術を流用して作られたという事までしか七瀬は知らないが少なくともゲームを遊ぶ上ではそれ以上を知る必要は無い。
七瀬も夜科も、恐らくは二那も愛用しているであろうそれを取り出した四葉は一体どういう意図でそうしたのか。
七瀬が困惑していると、四葉がそれを指で弄びながら言う。
「三人ともさ、実はある共通点があるんだよね。分かる?」
「共通点?」
二那が尋ねる。
しかし、答えたのは七瀬だった。
「もしかして、あのプレイヤー、あんたか?」
あのプレイヤーとは、七瀬のプレイするゲームに突然やってきて、辻斬りじみた真似をしてくれた女性プレイヤーである。
当然、この事を知っているのは挑まれたプレイヤー、もしくは挑んだ本人のみだが、四葉は楽しそうに笑って七瀬の言葉を肯定した。
「大正解〜、そう、私こそが謎のプレイヤーこと、クローバーの正体なのです」
不思議そうに夜科が七瀬へ尋ねる。
「ほう?何故分かった?」
「いや、今朝お前に見せられたあれあったじゃん?」
「ああ、あのリストか」
「あれの共通点は全員この学校の生徒であるということだった。で、さっき話してる時に崇城もゲームやってるって聞いたから、後はまあ、流れ的にそうかなって」
夜科が納得していると、四葉が話し始める。
「さて、共通点も分かったところで本題に入ろっか。皆は《ラスト・ソウル》ってオンラインゲーム知ってる?」
「それって最近ツイで話題のやつ?」
と、二那が確認。
「そうそう、昨日配信開始したんだけど、このゲーム、《ギルド》ってグループに分かれて行う複数人での対人戦がメインらしくってさ、一人でやるの厳しいんだよね」
「そのギルド?っていうのを立ち上げるなり所属するなりすれば良いんじゃ?」
「夜宮君ってコミュ力強かったりするタイプ?」
「いや、全く」
強かったら二那に話しかける時、あんなに言葉に詰まることも無かっただろうな、と考えながら答える。
「なら分かるでしょ。ネット上で会っただけの人となんて組める?少なくとも私は無理だし、一緒に戦うのはもっと無理だよ」
「あー、分からんくは無い」
「そういう事、だから、同じ学校の人でゲーム強い人探して、その皆でギルド組んだ方が私的には気が楽なんだよね」
「成る程、我と《剣豪》、それにそこの未知なる女子が貴様の探し求める人材という事は分かった。だが、どう論理が飛躍したら、そこから生徒会役員へ繋がるのだ?」
「え?だって、こんなめんどい仕事、話しが合う人達と一緒にやらないとやってらんないし」
「・・・」
何とも浅い理由に一瞬部屋の空気が固まる。しかし、尋ねた手前、黙っているのに耐えられなかった夜科が口を開く。
「・・・そ、そうか」
「おい、素に戻ってんぞ」
滅多に見れない彼のキャラ崩壊に思わず七瀬が突っ込む。しかし、七瀬からしてもこれは予想外だった。
「それで、どう?皆で《ラスト・ソウル》やるついでに生徒会入らない?」
「前半は良いが、後半のオプションが要らなすぎる・・・悪いけど俺はパスかな、ゲームの方は後でまた声かけてくれ」
「む、我が《戦友》が入らないのであれば、我もまた入る運命には無いという事だ。今回は縁が無かったな」
「うちもパスで、そもそも柄じゃないしね」
各々にそう言って三人が部屋から出て行こうとする。
しかしーー
「そっかー、残念だなぁ。生徒会に入れば髪とか伸ばしてても成績表の素行が良くなるんだけどなー」
そんな少女の言葉にまず、黒髪を腰まで伸ばした少年の足が止まる。
「他にも、制服改造が生徒会の特権でゆるされたりするし」
次にやたらと改造された制服に身を包んだ少年の足が止まる。
「大切な役員のモチベの為なら、髪の毛とかピアスとか、生徒会長として先生に理解示してもらえるよう、私からもお願いしてみようかな」
最後に銀髪を揺らす少女の足が止まった。
そして、四葉が楽しそうに笑う。
「さて、もう一度聞かせて貰うね?生徒会、入る気はある?」