第一話 プロローグ
自分の好きな白髪ヒロインを作りたくて書き始めました。
感想、ブクマ、評価、よろしくお願いします。
剣と刀が交錯する。ぶつかり合い、火花を散らし、互いの命を削る。
「セァア!」
鋭い呼気と共に放たれた一閃が少年の剥き出しの肩を抉った。
血の代わりに飛び散る赤いダメージエフェクト、少年の視界左隅に映る緑のゲージ、ヒットポイントと呼ばれる、彼らのポリゴンによって構成された身体の生命力が一割弱程減る。
だが、彼もまたやられるばかりでは無い。
返す刃で放った攻撃が敵対者である少女の肩をロングコートの上から切り裂き、同様に少女のヒットポイントを削る。
(こいつ、強い!)
少年が戦慄と共に心中で呟く。
彼はこの世界において、トップクラスとも言える程の装備とステータス、プレイヤーとしての技量を兼ね備えている。
当然ながら、同じレベル帯の連中、つまりはこの世界を引っ張って行く程の実力者達は全員彼の知り合いであるし、知り合いで無くとも顔くらいは分かる。
だが、目の前の少女は少年の頭の中にある実力者リストのどれとも一致しない。
「おい、プレイヤーネームは?」
鍔迫り合いになり、仮想の火花に顔を照らしながら少女に尋ねる。
しかし、彼女は無言のまま、刀身を青く光らせた。
「うお!?」
白とも青ともつかぬ高密度の光が少女の持つ剣から放たれ、爆発する。
少年が爆煙から飛び出すが、その直後煙を払った少女が彼の身体を追いかけ、彼女の一太刀が少年の胴体を大きく切り裂いた。
袈裟斬りをもろに喰らった瞬間、少年のヒットポイントが一気に五割を割ってゲージが赤へと切り替わり、彼が余りのダメージ量に発生したノックバックでたたらを踏む。
追撃を加えようとする少女に刀で迎撃しようとフェイントを見せて、少年が攻撃を躱し、流れた少女の身体を切り裂く。
一進一退の攻防と、それに比例して減少していく彼らのヒットポイント。
そして、お互いの攻撃が一撃でも擦れば勝負が終わるとなったところで少女の剣が少年の首筋に当てられた。
「・・・ッ」
まるで時が止まったかのように二人の動きが停止する。
この世界では死んでも一瞬で最後に立ち寄った街の病院で蘇生されるが、デスペナルティで所持金やスキルレベルといった物を失ってしまう。
少年程のレベルになれば、デスペナルティを取り戻す為に一時間や二時間は余裕で掛かる為、勝敗が決定的になった瞬間、彼は自らの刀を腰の鞘に納めた。
「完敗だ、あんた何者だよ・・・」
少年が尋ねるが、少女は何一つ答えない。
そして、何やら頷くとそのまま立ち去っていった。
名前が表示されなかった為、ノンプレイヤーキャラクター、NPCで無いのは確かだが、その存在は最後まで謎だった。
少年は知り合いの情報通に軽くチャットを送ってその世界から出ていくための一言を呟いた。
「システム:ログアウト」