第58話 探偵は何故少女を雇うのか
あの後、オーシマ達の話と、俺が王都に来て財布を盗まれたと言うあらましを話した。
「つまり、ハーレムを目指しても無く、ライラさんはお嫁でも無く、ペット探し業者も違くて、冥土服はオオシマじゃなくてライラさんの趣味で、ヒモでもヘタレでもダメンズでも無いと言うことか?」
「そうだ! 俺はキチンと働いてるぜ! そして俺は二枚目のクールガイだからな?」
もう出会った当初の威厳も何もないオオシマは必死に取り繕うも、ライラさんはニコニコと楽しそうに反論する。
「んー、二枚目かどうかはともかく、ここの所、収入源の殆どが王都のペット探しだよ? セレブな奥様達もこぞって使ってくれるから他の仕事の報酬じゃ追い抜けない程にね」
「ライラが変な風に噂をばら蒔いたからだろうが……。もうご近所での俺のイメージはペット探しの名人だぞ?」
探偵の聞いたイメージとはえらい違うなぁ……と思いつつ、二人の漫才(?)を聞く。
「事実だもん。仕方ないよね」
「はぁ……たまには探偵らしく事件でも解決したいぜ」
オオシマがそう言った瞬間、ほんの僅かだがライラさんに感情の揺らぎのようなものが一瞬感じた。
オオシマが何かおかしな事を言ったか?
「……良いんじゃないかな、こういうのも」
「ま、わざわざ事件に首を突っ込むのも間違ってるて事か。その話は置いておくとしてだな……さっき言った通り俺は二人をヘッドハンティング……雇いたいと思っている」
そう、先程の話の途中でオオシマは俺とルナを雇いたいと言ってきた。
かーなーり困窮な現状では藁にもすがりたい所だが、流石に相手のメリットが分からない状況ではなんとも言えない。
「申し出はすっごい助かるんだけど何で俺達を雇おうと思ったんだ? 」
「困っている所を助けたいって思う気持ちも有るが、理由は単純に人手不足だな。最近依頼が多過ぎて俺一人じゃ捌けないようになってきたし、依頼人の対応の面もライラ、お前一人じゃキツくなって来てるだろ? イズナはこう見えて腕っぷしも立つから俺と現場に出向いて貰って、スタークさんにはライラと事務をやって貰いたいんだがどうだ? 部屋も空いてるから住み込みで働かせてやりたいって事だ。どうだ?」
なるほど、特に裏が有るわけでは無いようだ。
良かった……こうして仕事をゲット出来るなんてあのルナに絡んだ男達をぼこぼこにしたのは無駄じゃ無かったんだね……
「俺にとってはもう大助かり。オオシマが救世主に見えるよ」
「ま、ライラがボスだから俺からは提案しか出来ないけどな。どうだライラ? 良いか?」
「確かに人手不足を感じてた所だから良いよ~。可愛い所が増えて依頼がガッポガッポだね~」
良し、こうなったら自己紹介で俺の良いところを紹介しよう!
「話が決まった所で改めて自己紹介させて貰うよ。俺はイズナ。11歳で、特技は能力の身体強化とプ・ロレッスっていう武術だ。ちょっとした木なら蹴り一発でへし折れるよ! あ、後料理も大得意だ!」
「私はルナリア=スターク、16歳で能力は【付与】と【治療】。後は魔道具を少し弄れる位です」
オオシマはニヤリと、ライラはポカーンとした様子で俺達を見る。
「どうだライラ……かなりの掘り出し物じゃないか?」
「わーお……マー君昔から勘と運は凄いからね。これはずっと就職していて欲しいかも……ハートフィールド探偵事務所は何でも屋になっちゃいそーだね」
ほっ、どうやら雇い主のライラさんも俺達をお気に召したようで、しかもかなりの好感触だ。
仕事も頑張って良いところを見せるぞー!
「あっ、でもその部屋は物置として使ってるからマー君とライラの部屋に一人ずつ、って事になるんだよね」
「あ、マジか。だったら――――」
「俺は男だからオオシマと同じ部屋でも良いけど?」
俺が提案すると何故か時が止まったかのように空気が凍る。
「その、イズちゃんは違うんですけど、そうみたいなんです……」
「えーと……マー君?」
ライラさんが困った様子でオオシマに視線を送るとオオシマは頷いて俺の目をじっと見つめる。
何をしているのか分からないのでキョトンと見つめ返すと再びオオシマは神妙な様子でライラさんの方へと向き直す。
「……ライラ、驚いた事にイズナは嘘をついていないようだ。マジで」
え? なんで唐突に俺が嘘ついたみたいな話になっているの?
俺が男だという事実を言っただけなんだけど、どうしてそんな可哀想なものを見る目してるの?
「そ、そっか~、世の中不思議がいっぱいあるんだねぇ~? んー、そうだ! 二人にはライラの部屋に泊まって貰って、マー君の部屋でライラとマー君で一緒のベッドで寝よう! きーまり!」
「え"っ、そうだなー! 俺はソファーで寝るから二人が俺の部屋を使うって事にしよう! うん、それが良い! じゃっ、俺は部屋を少し片付けて来るからな! ライラ、お茶ご馳走様!」
ライラさんの提案即行で拒否し、をかなり素早い身のこなしで部屋から出ていくオオシマに対してライラさんは口をとがらせ、不満な様子でティーカップの片付けを始める。
オオシマが何かライラさんに失礼な事をして怒らせたようだ。
「むー……マー君のヘタレっ! 三枚目! 意気地無しっ」
……良く分からないがこの様子はオオシマがヘタレと言うのは事実のようだ。
「いやー、仕事も見つかって良かった。これで食い扶持には困らないな!」
「イズちゃん……まさか忘れて……?」
「ん、なんか言ったかルナ?」
「……ううん、何でもないよ。お仕事頑張ろうね」
「おう!」
この時俺はすっかりアルとの勝負の事を忘れていて、思い出すのはずーっと後の事だった。




