第55話 誰がイズナの地雷を踏んだのか
「それで、泥棒を追いかけていたら逃げられ、気が付いたら知らないところに居て、迷子になったと?」
「はい……」
俺は現在、事情聴取を受けた教会から借りた一室で、フルールドリスのメンバーであるアル、ウィル、ルナの前で正座をしてお叱りを受けていた。
泥棒に財布を盗まれた後、泥棒を追いかけたが、人々と言う障害物のせいで俺の本領である身体強化による加速が発揮出来なかった。
更には複雑な道の裏路地等に入られ、完全に撒かれてしまったのである。
そしてとどめに回りは知らない街並みが広がっており、追いかけている内に完全に教会への帰り道が分からない場所まで来てしまったのだ。
「違う教会の支部の方から連れられて来るまで、僕らがどれだけ心配したと思っているんですか」
「そ、その……」
教会、と言うワードしか知らない俺はこの支部に辿り着くのにかなりの時間を要してしまった。
「良いですかイズナさん、貴女は食材などの管理が有るので共有の財布を渡しているんですよ。僕、前に言いましたよね? それぞれの財布は必ず用意しましょうって。でもイズナさんは"俺はあんまり使わないからへーきへーき!" と言って用意しませんでしたね。イズナさんは皆のお金を預かると言う意味……いや、お金に対しての重要さを理解していないフシがありますね」
「ま、まさかポケットから盗まれると思わなかったし……」
だ、だって俺が買うものは基本的に食材だけだし……武器とかは殆ど母さんが残した物か自作だからお金の価値とか言われても……
「……イズナさんはいつもは影にしまっているのに、王都に来て浮かれてたのかしまい忘れましたね?」
「ぎくっ」
「あ、アル君、あんまりイズちゃんを責めないであげて……!」
「いいえルナリアさん、これも教育です」
「きょ、教育……」
俺、後数ヶ月で立派な12歳、成人なんだけども……しかもアル、俺と2つしか歳が変わらないよね?
子供扱いされると少し傷つくんだけど……
「因みにその財布とやらにはいくら入っていたのだ?」
ウィルに問われて財布の中身を必死に思い出す。
確かこの間アルが財布を軽くするために両替しておいて欲しいと頼まれ、両替した後が、えーと、確か……
「と、とりあえず白金貨5枚はあったかなーって」
「は、はっ白金貨5枚!? ネーベルみたいな田舎だったらお家が立つよ! は、狩人って結構高給取りなんだね!」
「魔法武器が買えるな……うむ」
え、家が立つの? フワッとだがヤバさが伝わってきた……!
「で、でも魔物を狩れば直ぐに稼げるし……」
「そう言う楽天的な所がいけないんですよイズナさん。もしイズナさんが怪我をして、狩人として働けなかったらどうお金を稼ぐのですか? 【備え】や【対策】は必ず準備しないと駄目なんですよ。イズナさんには落ち着きが足りません。これからはもっと女の子らしくお淑やかになってください」
俺はついカチンと来てしまった。
女の子らしくだと……! 俺は男だって何度も言っているだろうが……!
しかも、べ、別に俺だって盗まれたくて盗まれた訳じゃないのに!
「こ、こんにゃろー、言いたいだけ言いやがって……! こうなったら勝負だアル! 俺とお前、どっちがお金を稼ぐかで決着を着けよう! 勿論俺は最低限盗られた分の白金5枚以上稼いでやるよ! 負けた方が勝った方の言うことを何でも聞く。これでどうだ!」
アルは目を瞑り考え込む。
僅かに時間が経ってから口をゆっくりと開き呟く。
「……良いでしょう、ならば勝負は一月半。そしてウィルさんと僕、イズナさんとルナリアさんでペアで別れて勝負しましょう」
ペアに別れてだと?
アルの事だし恐らく何か策が有るのだろうが、だったら俺はそれを真正面から潰すだけだ。
「あぁその条件でやってやるよ! 一月半後、楽しみにしてるんだな!」
「む、俺達も巻き込まれているだと?」
「い、イズちゃんと二人きり……うふふ……」
俺に力があるのだから狩人としてパパっと魔物を狩ってくれば余裕だろ……!
一月半も要らない! ククク、こうなったらアルには女装でもして貰おうかな……っ! 顔は女の子っぽいからさぞお似合いだろう! そして男の俺が女の子として扱われる気持ちを、普段どんな気持ちで過ごしているかを分からせてやる。
「今に見てろよ~アルーっ!」
俺はルナを伴って狩人ギルドへと走り出す。
「最近王都に魔物が一切近付かなくてねぇ~、残念ながら今狩人ギルドはギルド間の移動申請関係の受付と王都のちょっとした依頼しか受けれないのよ~御免なさいねぇ。ギルドマスターと代理が不在の今、ランクアップとかも一月先の話になるのよぉ~」
「なん……だと……」
「……ま、不味いわねイズちゃん。どうしよう……」
アルの言っていた通り魔物が狩ることが出来ないケースを考えていなかった俺は、勝負の期間が一月半あって良かったと思うしか無かった。
「アル、わざとだな? お前も大方ギルドが機能していないことを聞いていたのだろう。だからあんな口調で突き放したのか?」
「……イズナさんは単純ですから挑発に乗せやすいですからね。これを機に、色々知って欲しいんです。お金の事や、狩人以外の事を……王都ならきっと見つけられると思いますよ」
「イズナの事だからすぐ事件に首を突っ込むと思うが?」
「……きっと力業で解決しようとするんでしょうね」
※イズナ貨幣価値メモ
10000000=大白金貨→見たこと無いぞ!
1000000=白金貨→使った事無いぞ!
100000=金貨→武器を買ったりする時に使うぞ!
10000=銀貨→宿に泊まる時に沢山使うぞ!
5000=半銀貨→皆で食事をした時には良く使うぞ!
1000=白銅貨→買い物に一番良く使うぞ!
100=銅貨→ちょっとしたお菓子とかに使うぞ!
10ユール=鉄貨→お釣りと言ったらこれだぞ!
お金の単位はユール。
何でも過去に貨幣価値を決めた人が名付けたらしい。
コインには種類によって別々の数字と絵が刻まれている。
『覚え方が随分フワッフワッでは無いか……』




