第52話 赤髪のLad! ※イメージ有り
『わはは! こんな森の深くで修行中のようだな。ここで会ったが100年目と言う奴だ!俺様と勝負だ強敵!』
『げっ、フュー……ま、また今度ね!』
『駄目だ。この前もそう言って逃げたからな! 俺様とお前の戦績は20戦9勝9敗2分け。今日こそはこの俺様が勝ち越してみせる!
って、おい! 待て、逃げるな!』
……少年とも少女ともつかない声、そして前回と同じで自分の意思で体が動かないと言ったこの感じはストラーナで魔力切れを起こしたときに見た恐らく前世の俺かと思っている夢と同じだろうか?
視界の人物は赤髪の少年から必死になって逃げているようだが、みるみる代わり行く周囲の風景を考え見てみるとその足がえらく速い。
「おいおい……嘘だろ?」
俺が全力で身体強化【疾風】を使用しても追い付けない様な速度で赤髪の少年と俺の視界の人物は追いかけっこをしているようだ。
そんな高速のチェイスをしている中遠くの木陰で前回夢で現れた青髪のクールな感じの少女が座って本を読んでいるのを発見する。
『助けて■■■! 勝っても負けてもフューが何度も挑んでくるんだ!』
『無理。フューは私より強いから。■■を目指すならいつかはぶつかり合う運命。これも良い修行』
やっぱりこの二人の名前はノイズの様なものが掛かり聞き取れない。
どうしてだろうか……?
『そんなぁ!』
『わっはっは、先手必勝! 強敵よ! 速さも俺の身体強化に迫る程とは腕を上げたようだな!』
次の瞬間に視界の人物が立っていた場所の地面が爆ぜる。
爆心地には赤髪の少年の拳が振り下ろされており、誰がやったかは一目瞭然だった。
い、今のパンチも視界の人物の動きもまるで見えなかった……! なんて速さだ。
『君が何度も襲い掛かるからだよ! それに今の一撃、■■■に当たっていたらどうする! フュー、僕は怒った。勝負を受けるから広いところに出よう……!』
『済まなかった強敵よ! つい勝負を焦ってしまった俺様が全面的に悪い! ■■■よ、許してくれないか!』
『私だけでも避けれたし別に良い。でもありがとう■■■■。まさかお姫様抱っこなんてされるとは思わなかったけど』
『わわ、ごめん■■■! 咄嗟だったから! お、降ろすね!』
『嬉しいから広いところに出るまでこのままでも良い。と言うよりもこのままが良い』
『わはは! さながら白馬の王子と言った所か! 良い許嫁の関係のようだな!』
青髪の少女は無表情だが頬を僅かに朱に染めている。
え、この二人将来結婚を誓い合った仲って事なのか? あ、だから前回の夢で青髪の少女を守るって言っていたのか。
もしこの視界の人物が前世の俺なら許嫁が居た勝ち組って事か!?
くっ、羨ましい奴め!
『ハァ、ハァ、どうやら俺様の負けのようだな。まさか殴りあいで俺様が負けるとは……!』
『はあっ、はあっ、フューもま、また身体強化の上昇率が上がっているみたいだね……』
あれ、戦いがいつのまに終わってる!? この強そうな二人の戦いかたを参考にしようと思っていたのに……!
それに話ぶりを聞くと赤髪の少年は俺と同じ身体強化の能力者らしいのでかなり勿体無い事をしたー!
赤い髪の少年は手足を投げ出して草原に大の字で寝転がっている。
殴り合いをしたと言う事で、顔面には青アザや腫れがいくつかあるのが見える。
周囲の地形もちらほら破壊した跡が見えるのでかなり激しい戦いだったのが見て分かる。
『うーん、堅くて速くて力強い……強敵よ、何らかの能力を同時に使用しているな?』
『そう言うフューも何か工夫したみたいだね。この前より格段に強かったから。せっかくだから情報交換しようよ。僕達はまだまだ強くなれる。他の皆には負けたくないから』
『わっはっは! ■■を目指すのに他の奴等にはかまけていられないからな。良いぞ強敵よ! まず俺様の工夫だが魔力の捉え方を変えたのだ。送るのでは無く――――』
『なるほど! 面白い発送だね……じゃあ僕の能力二つを同時に使用する方法だけどこれは二つの能力を一度に――――』
おぉ! す、凄い。
まさかこんな方法で強くなれるなんてっ! しかも聞いた話だと俺の能力向きだ。
これを実践すれば俺はまだまだ強くなれる! 早速夢から覚めたら実践しなきゃな!
『……二人とも仲良い。……これで■■■■は■■に一歩近づく。これは良い兆候の……はず』
遠目に見えた青髪の少女は少し離れた所で微笑んでいる。
……だけど俺にはそれが、何故か寂しそうに見えたんだ。
「んー! 良く寝たー!」
窓から差す日差しが心地良い。
目を覚ました俺が居たのは宿屋の泊まっていた部屋だった。
まるで昨日の夜が嘘だったかのような清々しい空気で、今日は霧が完全に晴れているようだ。
「あ、狐面。ウィルが約束通り見つけてくれたのか」
ベッドのすぐそばにある机に狐面が置いてあり、手に取ってみた所、どうやら傷一つつけられていないようだ。
俺は早速被り、狐面に魔力を注ぎ込む。
そうすることでいつものかわいらしい少女の声が頭に響くように聞こえる。
『……イズナ、無事だったか』
「あぁ、色々有ったんだよ。全部魔人の仕業だったみたいで――――」
『フム、それが今回のあらましか。それで? 寝ていた所、また前世らしき夢を見た上に更には強くなる方法を見つけただと? それはどんな方法なのだ?』
タマモに今回の出来事を俺の知る限り全てを話と、先程まで見ていた夢の話を喋った。
不思議な少年少女の話だ。
「ふっふっふっ! よくぞ聞いてくれたなタマモ。それはな……あれ? えーと、その、悪いけど……わ、忘れちゃった……!」
そう言えば夢の出来事って直ぐに忘れちゃうものだよね……
なんて言ってたっけ……? 魔力をどうのこうの言ってたはずだけど……
『はぁ……お前と言う奴は……良いかイズナ? 今回も聞いた限りだと――――』
「ハイ……ハイ。ゴメンナサイ……」
結局タマモから俺へのダメ出しや説教が一時間続き、俺は今回のヴィーボラのように油断しないよう、勝って兜の緒を締めよと言う言葉を贈られた。
……俺、頑張ったのになぁ。
『……まぁしかしなんだ、その……私はお前が必要なのだ。だからイズナ、良くやった。……か、感謝する』
あれ、今思えば俺ってタマモに褒められたことはあっても感謝されたことは無かったんじゃないか?
俺は嬉しさからニヤニヤと口元が歪む。
さっきの説教も恐らく素直に感謝が出来なかったからだろう。
「えへへ、タマモは素直じゃないんだなぁ!」
『戯け! お前は直ぐに調子に乗るから言いたく無かったのだ!』
「はいはい、分かったってば。さ、とっとと起きてウィル達に会いに行こう!」
『本当に分かっているのか? いや、絶対に分かっていないな。おい、聞いているのかイズナ!』
さぁ、早く部屋を出て皆に会いに行こう。
大切な仲間達に、笑顔で会いに――――
※青髪の少女
次回は幕間です。




