第50話 Guy Lieの影響!
「何故貴女がここに……!」
ヴィーボラは非常に驚いた様子で俺を見ている。
ルナリアさんだと思って話し掛けた人物が俺だったのだからな。
奴にとってはとんでもないサプライズであろう。
「簡単な話だろ? あの二人をブッ倒して来ただけだ。外来のよそ者には注意しないとな? 見た目だけでは誰が一番強いか分からないぞ?」
「貴女を少し見くびっていたと言う事でしょうか……ふふ、ルナリアはバルコニーに居ますね? 先程までは壁越しで分かりませんでしたが……今ははっきり見えますよ」
「……やっぱり熱が見えるのか、魔人」
「ルナリアにでも教えて頂いたのでしょうか。ふふ、ふふふ……! だが全ては無駄になりますよ。この姿を貴女に見せるとは思っていませんでしたよ……!」
メキメキと音を立ててヴィーボラの姿が変わっていく。
体躯は180cm程と人間態とあまり変わらないが、爬虫類特有の鱗のような皮膚になり、鋭い縦筋の瞳は二重丸の真ん中を塗り潰したような不気味な瞳へと変化する。
顔はそれほど変わっていないが、開いた口が裂けるように広がり、歯……いや、牙がびっしりと生え、だらんと口から飛び出ている舌は先端が二つに別れている。
「さぁ、覚悟は……」
「っおらぁ!」
「なっ! 私が話している最中にっ……!」
俺はヴィーボラが何か話そうとした瞬間に天蓋付きのベッドから飛び降り、あらかじめ形を変えて伸ばしていた自分の影でベッドをひっくり返すように投げ付ける。
俺はヴィーボラが驚いている隙にバルコニーに出てルナリアさんに呼び掛ける。
「ルナリアさん、跳ぶから背中に掴まって!」
「は、はい!」
俺はルナリアを背負ってこの館の屋根へと跳び移る。
あの部屋では戦うには狭すぎるので広い所に移りたいが、下は駄目だ。
何故なら支配の魔眼を受けた人々が集まってくる可能性が有るからだ。
それに、今のヴィーボラはルナリアさんを追って来るはず。……後は一つ、奴を確実に倒すための段取りの為だ。
「ルナリアさんはそこの陰に隠れていてくれ」
「……はい、分かりました」
「逃がしませんよ……! もう私の目は誤魔化せない……! 屋根に逃げてやり過ごそうなどと無理な事です」
読み通りヴィーボラもバルコニーから跳躍して館の屋根にやって来た。
後は作戦通りやるだけだ。
「俺はもう逃げない」
「ふふ、観念したと言うことでしょうかぁ? 確かに良く見れば貴女、ボロボロじゃ無いですか。楽々とお仲間を倒した訳では無いのですね。ふふふ、今さら許しを請いても貴女の結末は変わりませんけどねぇ……!」
「違う……ここでお前をブッ倒すからだ!」
俺は身体強化【疾風】を使ってヴィーボラに急接近する。
右腕を横方向に突き出し、軽く跳躍しながらヴィーボラの首を刈り取るように振り抜く――――技名はクローズライン、またの名はラリアットだ。
しかし、ヴィーボラはグニャリとあり得ない角度に首が後ろに曲がり、クローズラインを易々と回避する。
蛇の性質か!?
「見た目にそぐわない戦いかたですねぇ」
「この戦い方を教えてくれた人には感謝してるよっ!」
振り抜いた右腕の勢いを利用しての側転気味に踵落としをするが、スウェーで回避されてしまう。
「速いですねぇ」
「まだまだぁ!」
技と技を繋げていくように攻撃し、隙を少なくするように攻撃するが、全ての連続攻撃をかすりもせずに回避していくヴィーボラ。
しかし、いつまでも手を緩めない俺の猛攻に溜まらず後方へと距離を取る。
「……貴女、私の目を見ていますよね」
「はぁ……はぁ。それがどうした!」
「私の魔眼【蛇の目】が何故効いていないのでしょうか?」
それはルナリアさんから貸して貰った不可視可視化の眼鏡を着けているからだ。
この魔道具は本来の目的の用途としては失敗作で、見えないものを見る為の魔道具だが、この眼鏡が不可視……つまりは透明になってしまうと言う物だ。
そしてレンズに魔力を貯めやすいおかげでヴィーボラの魔眼も効かない訳だ。
それを素直に教えてやる義理は勿論無い。
「ふー、さぁな……俺の方が強いって事なんじゃないか?」
「……そうですか。それは参りましたねぇ」
「仲間を呼ぶ時間稼ぎならさせない!」
「ふふ、バレてしまいましたか」
もう一度接近戦を試みてみるも、ヴィーボラにはやはりかすりもしない。
先程よりも速く、激しく攻撃を仕掛けていた時、15分位経った頃だろうか? 異変は突然やってくる。
動きが急に遅くなり、力が抜けるようにその場に片膝を着く。
「……!? ぜぇ、ぜぇ。ごほっ!」
「ふふふ、ようやく力尽きましたか。連続で戦闘を行い、先程の息をつく暇もない攻撃……貴女程の年齢の方では魔力が尽きるのも時間の問題。私にはそう分かっていましたよ」
「うぐぅ……!」
ヴィーボラが俺の装備の襟を掴み持ち上げられ、俺はヴィーボラの顔の前まで近付けられる。
「全く、結局最後まで私の配下が来ないとは使えないですねぇ……おや? おやおやぁ……! 成る程ぉ、 魔眼が効かない理由はこの眼鏡だったんですねぇ。ルナリア、これは貴女の物ですね……! ふふふ、今日は本当に良い日です」
魔力が送られていない眼鏡は透明化が解けてヴィーボラに見えてしまう。
これではヴィーボラの能力が……!
「は、離せ……!」
「良いでしょう、【大人しくしていなさい】。貴女は後でじっくり楽しんであげますよ」
「ぐ……ぅ……」
「出て来なさいルナリア、頼みの綱である彼女も私の支配下。そして貴女に魔眼が聞かなかった理由も分かりました。ふふ、ふふふ! もうこれで私に抵抗する気は無くなったでしょう? さぁルナリア、私のモノになりなさい……!」
「……」
「あぁ、ようやく姿を見せてくれましたね! 貴女には能力は使いませんから安心して下さい。ルナリア、この少女のを助けたくは有りませんか? 今彼女を助けられるのはルナリア、貴女だけ。私は能力で支配したお人形が欲しいのでは無く、貴女が欲しいのです。さぁ……! ルナリア、こちらに歩み寄って私のモノになると言うのです!」
「私は……」
「ふふふ! ルナリア、私は貴女を一生大切にしてあげますよ……! だから私に貴女の笑顔を見せなさい!」
「私は貴方のモノになんかなりません」
「……は?」
「私は……彼女を信じます」
その瞬間、ヴィーボラの周囲に二つの黒い物体が足元から胴体に掛けて円を描いて回りだし、ヴィーボラは動きを止めてしまう。
ヴィーボラの胸の前に止まった黒い物体はクナイと呼ばれる物だ。
クナイの後部には丸いリング状になっており、二本のクナイはそのリングに通された一本の糸で繋がれていた。
丁度ボーラと言う投擲武器に似たような形をしている。
「なっ! う、動けない……!?」
「ようやく捕まえた……それは魔物であるアラクネの糸で編んだワイヤーだ。滅茶苦茶細くても俺でも切れないシロモノだ」
「な、何故! 貴女は私の【蛇の目】で支配したはず! 魔力が枯渇したはずではないのですか!」
ヴィーボラは驚いた様子で俺を見ている。
魔眼の能力で支配していたと思っている人物が無事で居るんだからそれはさぞかし驚いている事であろう。
「嘘だよ。お前は俺に化かされたんだ」
「しかし、眼鏡は確かに効力を失っていたはず……!」
「よっと」
「ぐ、何をするのですか! 離しなさい!」
俺は身動きの取れないヴィーボラを背後から手を回し、持ち上げる。
ヴィーボラは無論もがくが、ワイヤーによって身動きが取れないのと力は俺の身体強化【剛力】の方が上回っているので無駄な抵抗だ。
俺は戦っていた屋根の端の方へとゆっくり歩む。
「お前が死ねば皆支配が解けるんだろ?」
「……! 分かりました、私と貴女で手を組みましょう! そうすれば貴女が欲しいものは何でも手に入る、どうですか、悪い事では無いでしょう……! それに、お仲間の支配は必ず解くと約束しましょう!」
屋根から落とされると思っているのだろう。
流石の魔人も無防備で四階の高さ、約10m以上から落とされたらひとたまりも無いのであろう。
「あぁ、良いよ」
「そ、そうですか。ならば私を解放して下さい! きっと私と貴女が組めば敵はいません……! さぁ」
屋根の端ギリギリの所で体を反転させ、ヴィーボラを館側へと向ける。
「なんてな言うと思ったか……? そうやって時間稼ぎしてもお前の狙いである支配はされた人達は来ないよ。あいつが抑えているから……な!」
「馬鹿なっ! 貴女も死ぬ気ですか……!?」
俺は全力で屋根を踏み込み、ヴィーボラを抱えながら高く跳ぶ。
館の高さの二倍位まで上昇し、そこから重力に引かれてゆっくりと落下し始める。
そこから俺はバックドロップの要領で体を上下反転させ、ヴィーボラの頭から落下するように体勢を整える。
「聞いたよ、お前、沢山人を殺したみたいだな。ルナリアさんの親代わりの人も、この里の人々も……お前はそんな人達が止めてと言ったら止めたのか? 違うだろ? だから、俺はどんな手を使っても必ずお前に一発かますって心決めてたんだ」
「ふざけるなぁっ! 私が一体どれだけ手を尽くしたとっ……! 死ねぇ!」
ヴィーボラが首を伸ばして両手がふさがり無防備な俺の首に噛みつく。
しかし、皮膚一枚分を残し牙が俺に届くことは無い。
「身体強化【鉄壁】……俺の能力だ。お前はあの鉄仮面の奴と同じだ! 俺は他人の幸せを奪う奴は絶対に許さない! 死ぬのはお前だけだっ! 食らえっ、イズナ落とし!」
「馬鹿な、馬鹿な馬鹿な馬鹿なーっ! 許さないぞ貴様ァッ! グワアアアァッッ!!」
次の刹那、俺とヴィーボラは地面に激突し、体中に強い衝撃を感じて俺は投げ出されるように吹き飛ばされた。
短編 前作のts魔オギャのif的な?物を書きました
TS転生した魔王が自分を倒した勇者を妹キャラで落としてマウントを取ろうとする話 ※ただし、成功するとは言っていない
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