第46話 勝利のLuminous?
「それは一体何故ですか……? 確かに魔眼の能力者は倒されたら効力が消えますが、捕まったらイズナちゃんはきっと酷い目に遭います! だからお願いです、今すぐここから逃げて下さい!」
ルナリアさんは信じられないといった様子で俺を問い詰める。
いや、俺の事を心配してくれているのだろう。
「仲間や大切な狐面まで取られたままの上に、俺はやられっぱなしは趣味じゃない。……それに、土地勘や、ネーベルを囲む霧の要因でここから逃げ切るのは難しいと思う。だったら俺が外に逃げていると勘違いして警備が手薄になっている今がヴィーボラを倒すチャンスなんだ! それに魔人なら一度倒したことがある。だから安心してくれ」
本当は後者の理由の方が大きいが、俺は皆を取られた事に非常に腹を立ていて、一発ヴィーボラにかましてやらなきゃ気がすまない。
それにあいつはきっと俺の実力を勘違いして油断しているはずで、そこを突くというのが俺の奴への対策の一つだ。
「……勝算は有るのですか?」
「俺の能力である身体強化を使えばあいつの攻撃は無傷でやり過ごせる。問題は魔眼の方だけど、一つだけ手はあるよ」
奴は過剰に能力を信用している気がする。
それもそうだ、目を合わせただけで勝てる能力なんて手に入れたらあぁなるのも頷ける。
だから魔眼をどうにか出来れば奴は瓦解するのではないかと思う。
いくつか考え事をしていると、ルナリアさんは一瞬迷うような素振りをして顔に手を近づけると何処からか手元にメガネが現れる。
そしてそのメガネを俺へと手渡してきた。
「これは……?」
「私を育ててくれた方が作った魔道具です。その名も【不可視可視化のメガネ】。本来は普段見えない物を見えるようにしようと作られた物ですが、その方が作る魔道具はいつもどこかが失敗して別の効果が現れてしまうのです。そのメガネは魔力を送るとメガネが不可視――つまりは透明となり、レンズは魔力を溜め込む性質が有るので掛けると魔眼を見ても効力を防ぐ事が出来ます」
「これを俺に?」
「……本当は戦って欲しくないです。だって、たった一人で大勢の大人と魔人に挑むなんて……でも、止めても行くのでしょう? だったらせめて協力させて下さい……! 私には戦う力は無いですけどサポートするくらいなら出来ます。証拠に傷、口元が治ってますよね」
「え、本当だ、いつの間に……?」
言われてから口元を触ると綺麗さっぱりヴィーボラにやられた傷は消えており、痛みも皆無だった。
俺は治療魔法を受けた事が無いのでいつ治されたかも気が付かなかった。
「そ、その、キスの間に……」
「なるほどキスはそのためだったのか……!」
「……! そうです! 治療のためです!」
たしかにその時は気が動転して気が付かなかった。
いやぁ、急にキスをされたから何事かと動転したが、治療のためならしょうがないか(?)
もしかしたらもしかしてと思ったけど、どうやら俺の勘違いのようだ。
少しだけ残念な気持ちになってしまう。
次にルナリアさんは俺の肩に手を触れて目を瞑る。
「それと……【身体能力上昇】」
「うおぅ……!」
まるで自分が身体強化を使った時のような感覚が突然体を駆け抜け、驚いて身がぶるりと震える。
これは噂に聞いた付加か? 無属性の魔法の使い手が身体強化を他人に掛ける事が出来ると聞いた事がある。
「私の能力です。これでしばらくはいつもより動きやすいと思います……イズナちゃん、その……」
……やっと自分の本心を見せてくれようとしているんだな。
だったら俺はそれに精一杯応えるだけだ!
「ありがとうルナリアさん。任せて、必ずヴィーボラを倒して助けるから」
「――!」
「じゃ、行ってくるよルナリアさん!」
「な、なんで……!」
俺は館の周囲に人が居ないのを確認してバルコニーから飛び降りる。
今度は飛び出した訳ではないので綺麗に着地する事が出来た。
「……途中からの口調が素のイズナちゃんなんですね……うふふ、なんだか男の子みたい」
俺は走りながらルナリアさんから借りたメガネを装着して魔力を流し込むと、メガネは本当に透明になってしまった。
重さは感じるので妙な感じだが、これで奴の魔眼対策も完璧だ。
そしてヴィーボラを探す為に屋敷の中へと再度侵入する。
大切なモノを取り戻す為に絶対にヴィーボラだけは許せない。
それに俺は見たんだ、ルナリアさんの頬にわずかに涙の跡があったのが……アルストの対魔ギルド鉄の十ヶ条、その10[女を泣かせる奴は許すな]――俺はルナリアさんを泣かせたアイツをこうなったらどんな手を使ってでもぶっ倒す……!
……見つけた。
奴は館の二階にあるダンスホールで椅子に座って目を瞑っていた。
恐らく俺が捕まったらここに連れて来るように命令でもしていたのだろう。
「ふふふ……かくれんぼはもう終わりですか? まさか自ら戻って来るとは思いませんでしたが……一体何が目的でしょうかねぇ」
「いやぁ、ダンスの誘いを蹴って悪かったと思ってなぁ? 一曲踊ってやるよ……ただし、俺は踊りなんか知らないからうっかり足を踏んじまうかもしれないけどなっ!」
俺は構え、ヴィーボラはゆっくりと目を見開いた。




