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狐面は伊達じゃ無い!  作者: 遮二無二
1章 開幕!俺!
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第6話 猪と剛力と疾風

『ほう、丁度良い。実戦形式で試そうじゃないか』

「いやいや、無理っしょ!ヤバいって!」


 俺は突如現れた巨大な猪にびっくりしてその場から動けない。

 しかしタマモは嬉しそうにしているが、相手はとんでもなくデカイ猪だ。

 牙は鋭く尖っており、まるで二本の槍のようで、鼻息が荒く、こちらを値踏みするように睨み付けている。

 絶対ヤバい魔物だって!


『良いか? 落ち着いて聞け。身体強化のみならずこの世の魔法・能力で一番大切なのはイメージだ。魔力は己のイメージに応えてくれる』


 猪は地面を前足で引っ掻くように動かしてしており、いつでも突っ込んできそうな様子だ。

 イメージと急に言われても分からない。

 何故なら俺はいつも身体強化を感覚で行っているからだ。


『お前自身が怪力になるイメージをしてみろ。奴の突進を正面から簡単に受け止めるようなイメージだ』

「受け止める?流石に無理だろ!」


 何故なら背丈でさえ俺の二倍位あるのだから、体重は数倍じゃきかないと思う。

 そんな質量の塊が俺に突進してきたらミンチになってしまうだろう。

 色々考えていると、猪は痺れを切らしたのか突進してくる。

 このまま真正面から突進を受けたら身体強化しても受けきれないだろうと、俺は急いで横に飛び出そうとする。


『この程度の魔物から逃げるのか? それでは一生掛かっても母を助けられないな。お前はヨシノの娘なのだろう?安心しろ。ヨシノは本気を出せば地形を変える程の馬鹿力だ。その娘のお前が弱いはずが無かろう』


 タマモが俺を煽るが、そんなことは分かっている。

 今の俺では母さんを負かした鉄仮面に逆立ちしたって勝てるわけが無いと。

 だったらやってやる! ここで引いたら男が廃るってもんよ!


「ッ! ちくしょうっ、どうにでもなれ!」


 覚悟を決めて正面を見据えると、巨大な猪の魔物が音を立てて迫る様子がよく分かる。

 俺は目を逸らさずに手を前に突き出す。

 イメージ……力の象徴……俺にとってそれは何かを咄嗟に考える。

 それは男だったら皆憧れれるもの、近くて遠い存在……そう! それは『筋肉』だ!


 俺は腕と足腰の筋肉に力を込めるイメージをして、体の部位に力を込める事を意識する。

 これだけでいつもより力が発揮されるような気がした。

 次の瞬間、俺と猪が衝突する。


 俺は猪に突進されても吹き飛ばされたりすることなく、牙を掴んで押し合いする事に成功している。

 出来た! 出来たんだ!


『そうだ。それでいい。「功」「守」「走」に身体強化を特化すればお前はまだまだ強くなれる。それは「功」の身体強化……名付けるとすれば身体強化【剛力】だな』


「うぐぐっ……だけどこっからどうすりゃ良いんだっ」


 確かに猪を止める事が出来たが、このままでは俺が気を抜いたら押し返されてしまうじり貧だ。

 タマモに逆転のアイデアを問う。


『少し押し返して勢いを奪った後に上に飛べ。今度は「走」の身体強化だ。飛べるほど身軽なイメージだ』


「分かった……よっ!」


 俺は猪を少し押し返す事で、猪は少し体勢を崩して再度体勢を整えようと一瞬だけ力が弱まる。

 身軽なイメージ……それは何だろうかと考えた時に時、俺の周りに風か吹く。

 よし、これでいこう! 俺は風をイメージして全身に力を込める。

 今だ! 俺は猪の牙から手を離し、上に飛ぶ。

 その瞬間、あっという間に俺は猪の頭上よりずっと上に飛んでいた。


『クク、飲み込みが速くて何よりだ。これも名付けるとすれば身体強化【疾風(はやて)】ってところだな。さぁとどめだ。奴の頭を踏み潰してやれ』


 俺が急に飛び、俺の後ろにあった岩にぶつけた猪は俺を見失っていた。

 俺は膝を畳み下へ落下しながら身体強化【剛力】を使う。


「どおりゃああぁあ!」

 

 そして猪の頭に当たる直前に勢い良く足を伸ばし、そのまま猪の頭を蹴る。

 猪は勢い良く地面に頭を叩きつけられるが、蹴りの勢いはまだ止まらない。

 俺の蹴りで、地面とサンドイッチのようにされた猪は頭はひしゃげ、嫌な音を立てながら絶命した。


「か、勝った」


『ふむ、上出来だ。これで暫くは身体強化で戦って行けるだろう。後は繰り返し使う事で体に覚えさせると良い。そのうち能力が発動する迄の時間が短くなるだろうよ』


 タマモは満足そうに言うが、しかし危なかった。

 俺が一人だったらこの巨大な猪の魔物は倒せていなかっただろう。いや、最悪殺されていたかもな。これも俺に能力の使い方を教えてくれたタマモのお陰だ。


「ありがとうタマモ。お前が居てくれて良かった。一人だったら死んでたかもしれない……お前は命の恩人(?)だ。絶対にお前の封印を解いてやるからな」


『フ、期待しているぞ。お前が死んだら私の封印は解けないからな。…………それよりそろそろ猪の頭から降りたらどうだ』


 おっと、勝利の余韻から考えすぎてたみたいだ。

 俺は猪の頭から離れてブーツに付いた猪の肉片と血を地面に払い落とす。

 そして巨大な猪の死体を見てふと思う。本当にデカイなぁ。

 全長が俺の2.5人分はあるんじゃないか? なに食ったらこんなに大きくなるのだろうか?

 それにしても……


「しばらく肉には困らないな……」

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