第36話 古・豪・爆・現
すみません。急にタイトルが思い付いたので短編書いていて遅れました。
「フフ、青二才と坊や、それに小娘は武器を納めて下がっているが良い。私の遊びに巻き込まれたくなければ……な」
雰囲気ががらりと変わったイズナに唖然とした様子で見ながら後ろへと下がる一同。
フフ、人間の驚かされた顔はいつ見ても愉快だ。
「マグレで避けたからって調子乗るなァ!」
自分の思い通りに事が運ばなくなり、冷静さを失った魔人が私に目掛けて襲い掛かる。
「フ、果たして本当にまぐれかな? 私は一歩も動かないから試してみると良いだろう」
「クソァ……嘗めやがってェ!」
二度、三度と私に向けて拳を振るうが、拳は全て私をすり抜ける。
まるで蜃気楼を相手しているかのような不気味な感覚が魔人を苛んでいるであろう。
「何処を殴っているのだ。私はお前の背後にずっと立って待っているのだぞ?」
「グガアッ!」
「残念ながら時間切れだ。」
私は奴の拳に対して沿うように、くるりと体を回転させながら避ける。
あぁ、何て軽い体なんだろうか? まるで羽のようだ。
こうしてイズナの生身の肉体を操って良く分かるが、肉体の柔らかさや身軽さをまるで生かしていない。
そう、あいつは無駄が多すぎる。
そして私は後方回転をして、魔人から大きく距離を取る。
「……今、この周囲の空間はイズナの魔力で満たされている。奴の能力の正体はそれがポイントだろう。しかし、いつものイズナと戦闘のスタイルや言動の様子が全く違う……一体あいつは何者なのだ?」
「スピーノの能力がイズナさんだけに決まったのでしょうか? それにしても周囲に魂が入れ替わった人は居ませんよ」
フフ、二人とも良く見ているな……だが私が正体をイズナに伏せさせているのに自ら名乗る訳にも行かないだろう。
試す事を終わらせたら直ぐにでもあの魔人を消すか……
「……ふーん、なるほど。今のところは一本が限界か。これはイズナをもっと鍛えなければなぁ? あの程度の魔人に手こずるようだと話にならん。私は少し甘やかし過ぎたのだろうな」
「何余所見してンだよォ!」
「おおっと、悪かった」
いつの間にか近付いていた魔人の拳は私の目の前で止まり、魔人の顔は驚愕に染まる。
ふむ、種を明かしてやろう。
「私の能力である【尾】一本で受け止められる程度か。弱いな」
魔人の腕の周囲に、半透明の太い蛇のような物が出現する。
これは、私の腰当たりから伸びている魔力で作った尾だ。
「魔力を実体化させる能力かァ!」
「ご明察だが、分かった所でどうにかなる物でもあるまい?」
私は【尾】を動かして魔人をゆっくりと投げてやる。
スピードの無い投げは当たり前のように対応され、地面に叩きつけられる事もなく魔人は着地する。
ふむ、少し動いて分かった。
私がイズナと入れ替わっている状態だと魔力が生成されていないのだ。
肉体と魂の持ち主が違うからだろうか? やはり私には私自身の肉体が必要らしいな。
「坊や、お前の魔法とやらは遠くからも見えたぞ。中々悪くないじゃないか。だが、少し火の勢いが足りていないぞ」
「え、あ、はい」
坊やはまさか自分が話し掛けられると思っていなかったのだろうか、空返事が帰って来た。
「見本を見せてやろう」
私は足元にあった枝を一つ拾い、背後の【尾】に投げ入れる。
抵抗無く半透明の【尾】の中心に枝が入った瞬間、異変が起きる。
枝が一瞬で押し潰されるように形を変えて、淡い白色に発火する。
そこに半透明の【尾】が吸い込まれるように消えていく。
と言っても、とても小さな種火だ。
「お遊びはお仕舞いだ魔人。お前はこの炎に焼き尽くされるのだからな。その前に聞いといてやろう。お前を封印したのは何者だ?」
「知らねぇ女だァ! そしてそんなゴミみてェな火で俺様を倒せると思うなァァ!」
どうやら私に向かって走ってくる魔人は何も知らないらしい。
ならばもう生かしておく理由も無いだろう。
「私は思うよ。【狐火】」
「――――――――――――!」
「うっ!」
「む!」
「キャッ!」
私が放った【狐火】が魔人に触れた瞬間、強く発光し、周囲の人間は一斉に目を瞑る。
皆が目を開けた頃には、魔人は音もなく焼き尽くされており、魔人がいた場所には焼き焦げた地面しか残っていなかった。
「坊や、これが白炎だ。まぁ、ここまでとは言わないが、精進するが良い。コツは一つの攻撃にどれだけ魔力を込めれるかだ。とても小さな魔法に魔力を限界まで込める練習をすると良いだろう。それと魔力を一日の終わりに限界まで使っておけ。魔力の総量が増える。」
「わ、分かりました?」
「そして青二才、お前は自分に合う魔法武具の類いでも探せ。普通の武器ではもう戦力不足だ。後は誓いに縛られるのが好きなのは良いが、お前、約束を違える覚悟が無ければいつか後悔するはめになるぞ。」
「イズナ、何故お前がそれを……!」
「私は物知りなのだ。では、いつかまた会おう」
私は懐から狐面を取り出して被る。
そうすると、私の意識が遠退いていく感覚に襲われる。
「やはり肉体があるとは良いものだな。後はすまんがイズナよ、魔力切れを起こしてしまった」
私はそのまま倒れ込み、完全に意識を手放した。
TS転生した魔王が自分を倒した勇者をバブみでオギャらせて一緒に世界征服しようと唆そうとする話
https://ncode.syosetu.com/n3189fg/
短編書きました。良ければご一緒にどうぞ。




