第31話 魔・人・復・活
アル視点です。
「アル、俺は酒場に行って少し飲んで来る」
「分かりましたウィルさん。僕は村を散策してますね」
朝にイズナさんと別れた後、僕は魔法の練習をするためにウィルさんと一緒に村の外に出ていた。
しかし熱中していたために村に帰って来た時にはもうすっかり夕暮れ時だった。
因みに何故ウィルさんも一緒かと言うと、ウィルさんの能力の【魔力視】で僕が魔法を使った時にどのように僕に憑いている呪いが作用しているか見てもらう為だ。
結果、僕の予想通り魔法を使うときにも呪いが僕の邪魔をして威力を下げているようだ。
おかげでいくら魔力を魔法に込めても一定以上は威力が上がらなくなってしまっている。
アルストでは魔力を大きく喰らう呪いが解けて魔法が使えるようになったので、これからは魔法の威力を下げる呪いを祓って行きたいと僕は思う。
何故なら今の僕の魔法だけでは魔物に対して決定打になりえないからだ。
アースクロウラーを倒した時並みの威力が無いと僕は彼女の隣に並ぶなどと到底言えない。
だから僕は呪いを解くためにもっと心も肉体も強くならないと…………
「やはり大きいですね」
僕はストラーナの中心に辿り着き、像を眺める。
ストラーナの周囲に魔物が一切現れないのはこの像のお陰だと言われる。
本当にそうかは分からないが、確かにプレッシャーと言うか力の様なものは感じる。
この像の男は一体何者何だろうなと考えた時、突如地面が揺れる。
「な、なんですか!」
地震が収まると偶々近くに居た村人の一人が近くまで近づいてくる。
「大丈夫か坊主? 最近良く地震が有るんだよ。何か良くない兆しかもな。なんてな、わはは!」
その話を聴いてホッとした時、再度地震が起きる。しかも先程より強く、立つのが困難な程だ。
村人の方を見てみると顔を真っ青にしている。
「こ、こんな揺れは初めてだぞ! 坊主、身を屈めろ!」
僕は村人に言われた通りに身を屈める。
そして揺れが少しずつ小さくなり、やがて収まる。
僕は状況を確認しようと周囲を見渡すと像に異変が起こっていた。
「これは罅…………?」
「なんだこりゃぁ!」
像に触れれば砕けてしまいそうな程の無数の亀裂が走っていた。
しかもパキパキと音を立てて今もなお亀裂を増やしている。
やがて像の一部が欠落していく。
像が少しずつ崩壊している? いや、違う。
まるで石で作られた皮を脱皮するように中から像の男の肌が見えてきている。
「ウォォオオオ!!」
「くっ!」
「ヒィ!」
耳をつんざくような声で叫ぶ像の男。
やがて体を覆う石は全て砕け散った。
「糞がァアア! あの女ァ良くもこの俺様をォ封印してくれたなァ!」
身長3m程の男は目を真っ赤に充血させて叫ぶ。
ギザギザとした歯で叫ぶ男は身長と相まって人間らしさを感じさせない。
僕の知っている知識で導かれる答えは一つ。まさかこの男の正体は―――
「…………魔人」
魔人とは人にあらず、魔物の性質を持っている人間の総称である。
肉体、魔力共に人間よりも強力であり、過去には何度も人間と魔人で戦争を起こしたことが有ると歴史が物語る程、人間を嫌う者が多いと言われる。
「ア? 呼んだかァ? て言うか人間がいたのかァ……おい、そこの人間。この俺が石像になっていた時間はどンなものだァ!」
「ひぃ! せ、千年です!」
腰を抜かした村人は質問されたので咄嗟に答える。
男は答えを聞くとプルプルと身を震わし始めた。
これはいつ暴れてもおかしくない。
僕はいつでも戦闘を開始できるように杖を構えて魔力を籠める。
「千年……千年だとォ! マジで許さねェ、あの女! いや、人間どもォ! 手始めにテメェ等からこのスピーノ様が血祭りにしてやるよォ!」
「クレイウォール!」
スピーノとか言う名前の男が勢い良く突っ込んでくる前に土で壁を作り、囲う。
これで僅かながら時間が稼げるだろう。
「村にいる狩人を呼んできて下さい! 後、村人に避難勧告を!」
「ひぃ! わ、分かった!」
村人が駆け出した瞬間にクレイウォールが砕け散る。
土煙が収まると中から舌舐めずりをしながらスピーノが現れる。
「魔術師かァ! コイツァ嬲りがいが有りそうなガキだなァ!」
「ファイアボール!」
僕は手始めに相手の出方を見るために弱めの魔法を唱え、火球を三発生成し、相手に向かって放つ。
これでかわすなら身のこなしを、防ぐなら能力や魔法を見ることが出来る。
「効かねェなァ!」
「なっ……!」
ファイアボールを見えてきている三発とも素手で叩き落とされてしまった。
手を見ても火傷した様子も無いのに一体どうやって?
「ウォーターボール! ブリーズシュート!」
「オメェ魔法のマーケットかァ? こンな魔法じゃ効かねェつってんだろォ!」
ことごとく叩き落とされる魔法。
しかし威力を上げたくともこれ以上は呪いが邪魔をして上げられない。
一体どうすれば……?
「来ねェならこっちから行くぞォ!」
イズナさん程では無いが速い!僕は転がるようにスピーノの突進を避ける。
しかしスピーノは直ぐ様方向転換をして再度突っ込んでくる。
僕はもう一度避けようとするとスピーノはいきなり進む方向を変えてタックルを仕掛けてきた。
吹き飛ぶ僕だが、地面で受け身を取りながらも転がっていく。
「がはっ!」
僕はまだ子供なので肉体が成長しきっていないし、鍛えてもいない。
更にイズナさんみたいな身体強化の能力を持っていないし、ウィルさんのような屈強な体を持っていない僕の魔力による肉体強化では防御力がさほど無い。
タックル一発貰っただけで大ダメージ必死だ。
だから……
「テメェ自分に魔法をぶつけたなァ?」
「えぇ、貴方のタックルなんて喰らったらひとたまりも無いのでブリーズシュートで吹っ飛ぶ方がマシですよ」
そう、自分に向けて魔法を撃って無理やり回避したのだ。
こうでもしないとあの状況からは避けられない。
「だがこのままじゃ俺様には勝てねェぞォ?」
「悔しいですがその通りです……しかし、僕には頼りになる仲間がいるので」
「アルよ、村人に状況を聞いたので助太刀に来た」
「アァ、誰だオメェ?」
僕の背後から声が聞こえたので振り替えるとそこにはハルバードを構えたウィルさんが立っていていた。
「俺はウィリアム=マクスウェル。見ての通り、通りすがりの狩人だ」




