表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐面は伊達じゃ無い!  作者: 遮二無二
2章 集結!二人の男!
34/77

特別幕間 Yの聖夜祭/もろびとこぞりて ※イメージ有り

 俺は今フクロウの夜明け亭のキッチンに立って料理をしている。


「イズナちゃん!お願いね!」


 ()()()が俺に料理を注文をした。

 さて、注文通り飛びっきりのを作ろうかな!


 時は遡って昨日の昼


「え? フクロウの夜明け亭から俺に名指しで依頼?」

「そうなのよイズナちゃん! あそこの旦那さんが買い出し中に転んで怪我しちゃったみたいでね、代わりの人を探していたの。そこで私がフクロウの夜明け亭の奥さんにイズナちゃんは料理が上手って教えて上げたの!」


 ギルドに行った時にユリィさんが俺を呼び出していつも通り俺を膝の上に乗せる。

 そして名指しで依頼―――――そう、対魔ギルドは街のお悩み解決も行っているのだ―――――があると説明してきた。

 因みにフクロウの夜明け亭は食堂兼酒場のこの街の愛されている店だ。


「でもユリ(ねぇ)、流石にお店に出すほど自信は無いよ?」

「大丈夫!大丈夫! 明日は対魔ギルドの皆で忘年会にしたから私達で貸し切りよ! 私もホールでお手伝いするわ!」


 実はユリィさん、まともに料理が出来ないのである。

 お父さんがいつも料理を作っていたために、たまには女の子の手料理が食べたい! となり、一番最初の俺のギルド入会試験はステーキを作るはめになったのだ。


「まぁそれなら良いかな」

「流石イズナちゃん! 私の自慢のいもっ、弟ね! ん? あれ? イズナちゃん少し色々と成長してきた?」


 体を撫でまわされた後にユリィさんは言う。お、筋トレの成果が出てきたかな?

 目指せウィルだから、小さな一歩だが着実に進んでるとなると嬉しくなる。


「本当に? いやぁ鍛えた甲斐があったかなぁ」

「いや、胸とかね……」


 そんなユリィさんの小声の呟きは俺の耳には入って来なかった。


 次の日


「イズナさんとウィルさんは聖夜祭がどのようなものか知らないのですか?」


 昼から街に向かう途中、聖夜祭の話題になった。ウィルと俺はアルが言う聖夜祭と言うものを知らなかった。


「うん、知らない。どういうものなんだ?」


「なんでも昔、聖女様が過去の勇者様に教わった故郷の祭りを親しみやすく簡単にして広げた祭りらしいです。家族や友人、恋人と過ごして仲良くしてください……と言う簡単なお祭りですよ。夜にある程度の集まりで皆でお酒を飲んだりいつもより豪勢なものを食べてパーティーを開くのが普通みたいですね」


 なんだ、結局どんちゃん騒ぎしたいだけか。

 それを宗教的に許して神父やシスターも加われる的な?


「それでギルドの忘年会って訳か。ま、今日はお前らはお客様だ。俺の料理を楽しみにしていてくれ」

「えぇ楽しみにしてますよ」

「俺も楽しみだ」


 俺達は街に着いてから一度解散する。

 忘年会は夕方からだ。

 俺はそのままフクロウの夜明け亭に向かった。

 中に入ると不思議な格好をしたユリィさんが居た。


「イズナちゃん待っていたわよ! さぁこれに着替えて!」

「なにこれユリ(ねぇ)?」


 ユリィさんとお揃いの赤い格好のコスチュームだ。

 げっ、つまりはミニスカートじゃないか。

 俺が嫌そうな顔をするとユリィさんは即座に解説する。


「コレは由緒正しきシンタクラース様の服装を模した物よ。シンタクラース様は男の中の男、いや、漢の中の漢と言われていた人物が着ていた服よ。いやー、男の中の男と言われているイズナちゃんなら着こなせるんじゃないかしら?」


 何! シンタクラース様とか言う漢の中の漢だと!

 ミニスカートすらも着こなすとは……真の男に違いないな!

 だったら俺にも着こなせるはずだ。

 何せ俺は男の中の男だからな!


「よし、ちょっと着替えてくるよ」

「やった!」


 俺は着替えるために別の部屋に移動する。


『私はお前が心配になるよ……』


 呆れたようにタマモが呟く。

 ふ、安心しなタマモ。

 俺の男道は間違いは無い。

 全てを突き進んだ先に俺は真の男となるのだ! ふはははは!


『戯けが……』


 最後に三角の帽子をかぶって着替え終わり、元の部屋に俺は戻る。


「キャー! 似合ってるわよ、イズナちゃん。かわ、カッコいいわよ!」


「やっぱり男らしい俺には何でも服をカッコ良く着こなせるってところかな! ふふん!」

『はぁ……可愛いと認識出来るとは……この小娘には認識障害がもう一切効いていないじゃないか……』


 ん? 何か言ったかタマモ?


「イズナちゃんごめんねぇ。ウチの主人が今動けないから一緒にキッチン立って貰う事になって」


 この人はフクロウの夜明け亭の女将さん、エルバ=グーフォさん。

 主人のオウルさんが怪我したらしく、俺に依頼が来る運びとなったのだ。


「いえ、俺達もかなりお世話になっているんで! 精一杯頑張りますよ!」


 この街に来たついでによく食べに来たり、アルが行き倒れているときにもこの店にお世話になったのだ。

 主人のオウルさんの料理姿を見れないのは残念だが、奥さんのエルバさんの料理の腕前を盗める。

 それだけでも十分価値があるってもんだ。


「じゃあイズナちゃん、早速だけど料理を作りましょうか。20人前程だから、今から作らないと夜までに間に合わないからねぇ。はい、これイズナちゃん用のエプロン。ユリィちゃんは悪いけど必要な食材を持ってきたり出来た料理を机に並べてくれるかしら?」


「「了解!」」


 こうして俺とエルバさんは料理を作り続け、ユリィさんが俺達をサポートする。

 こうして着々と料理が完成して行き、忘年会の準備が出来た。

 忘年会まではまだ時間に余裕がある。


「良し、なんとか料理は完成したわね。ありがとうイズナちゃん、ユリィちゃん。一息いれましょ」


「イズナちゃんお疲れ。少しお茶でもしましょ」


「おっけー……」


 流石に疲れた……半日近く料理を作り続けてもケロっとしているエルバさんは本当に凄い体力だな……


「はい、二人ともお茶よ。私は少し出るから留守番お願いねぇ。忘年会が始まる位には帰って来るわ」


「はい、私とイズナちゃんに任せて下さい」


 エルバさんは俺とユリィさんに紅茶を入れてくれた後に一度家に帰って主人のオウルさんの様子を見てくるそうだ。

 俺とユリィさんは二人きりになるとユリィさんはいつもの柔和な笑顔では無く珍しく真面目な顔をしていた。


「ねぇイズナちゃん。もうすぐイズナちゃんは放浪者(ヴァンデラー)になってこの街からでるんだよね」

「え、そ、そうだけど急にどうしたの?」


 ユリィさんとは放浪者(ヴァンデラー)の話題を二人とも触れないようにしている空気があった。


「私ね、イズナちゃんが来る日に言ったの。可愛い女の子ギルメンとか居ないかなぁって……マスターはアルストには来ないだろう、なんて言っていたわ」

「うん……」


 俺は静かにユリィさんの話を聞く。


「そしたらギルドの扉が開かれたの。多分ギルドのおじさま方だろうなーって扉の方を見たらね、そこには変わった格好の女の子が居たわ」

「……」

「まさか本当に女の子のギルメン希望が来るなんて! 私はテンションが上がって色々と話掛けたわ。出会ってその日からその子にはご飯を作ってもらったり、一緒にお風呂に入ったり。別の日には膝に乗せてお喋りしたり、膝枕して寝かしつけたり、髪型を変えたり、一緒にお出かけしたり……まるで私が小さい頃からずっと欲しかった妹が出来たみたいで本当に嬉しかった……」


 確かにユリィさんとは、出会った最初の日から本当に1日目から一気に仲良くなったな……その後も俺に常に構い続けてくれた。


「でも、その子がいつかこの街を出るときが来ることを知った日は1日中へこんだりもしたわ……」


 そう、ユリィさんがこの話を聞いた時は1日中我を失っていたらしい。

 俺はその話をギルドマスターから聞いてから放浪者(ヴァンデラー)の事をユリィさんの前で話さなくなったのである。


「本当は行って欲しくない。でも、その子、妹が行きたいって言っているもの……だから……だからお姉さんの私はね、送るとき、別れの時は笑顔で送らないと行けないの」


 ユリィさんの瞳に涙が溜まっていく。

 今にも決壊して涙が溢れそうだ。


「だ……から、今は泣いても……良いかなぁ……?」


 俺は多分怖かったんだ、この姉のような人との別れの時が。

 母さんみたくどこかに行ってしまうなら、別れの時が来てしまうなら、最初から距離を開ければ良いと思っていた。

 それが心の中での【ユリィさん】呼びである。

 でも、この人は俺が心の距離を開ける速度以上に俺との心の距離を詰めてきた。

 愛情で俺を包み込んでくれた。

 俺が今この人に出きることは何か? そう考えようとすると、体と口が勝手に動く。


「うん、良いよ。ユリ(ねぇ)


 俺は()()()の頭を抱く。

 もう言葉なんて要らない。

 ただ、涙を胸で受け止める。


「何でだろう? 初めて本当に呼んでくれた気がするなぁ……」


  そんなドキッとする言葉に俺は何も言えず、ただただギュっと抱き締める。

 俺と姉の二人の静かに時間だけが流れていった。






 忘年会が始まる時間の少し前くらいに対魔ギルドの関係者が集まって来る。


「おう、ユリィちゃんとイズナの嬢ちゃん、その格好似合ってるぜ!」

「おう! 当たり前だよ!」

「ハワードさん! 今日は飲みすぎて変な動きして腰をやらないで下さいよ!」

「ユリィ! 流石は俺の娘だ! 母さんそっくりだ……クゥ……」

「お、お父さん、まだお酒飲んでないのにこんなリアクションするの……?」

「ユリィ、似合っているな」

「マスター、セクハラですか?」

「調子に乗るな」

「イズナ……ふん、足腰を冷やすなよ……」

「頑固ジジィ!来たのか!」

「イズナ、お前良くその格好を許したな」

「で、でもお似合いですよイズナさん」

「フッ、知らないのか? コレは漢の中の漢シンタクラース様の由緒正しき一張羅なんだぞ。いやーミニスカートでさえ穿きこなすとは恐れ入った。まぁ男の中の男である俺にも似合って当然だろ?」

「………………」


 そんな感じでエルバさんが戻り、皆も続々と集まり、忘年会が始まる時間となった。

 乾杯前にギルドマスターのガストさんが一言言うらしい。


「長い音頭は面倒だ。皆無事にアースクロウラーを倒せた事を祝い、乾杯」

「「「「「乾杯!」」」」」


 皆で杯をぶつけ合う。

 これが宴の始まりの合図だ。

 因みに俺は未成年でお酒が飲めないからジュースだ。


「アル坊! お前は成人してるんだから飲めよ飲めよ!」

「お手柔らかにお願いします……」


 そうそう。同じ身長のアルは俺と同じ未成年かと思っていたら年上の12歳で成人していた。

 しかもランクも9(ニーオ)の俺より一つ高い8(オッタ)だったのでマジでびっくりしたよ。


「ウィリアム! お前はイケるクチか! ワシと飲み比べだ!」

「む、良いぞ」


 ウィルはうん、イメージ通りお酒を飲んでもあまり変わらないタイプだな。


 他の面々もお酒を飲み、時間が経っていき料理が減っていくとユリ(ねぇ)がお酒を飲んで、少し赤い顔で俺に近づいてくる。


「ねぇイズナちゃん?」

「どうしたの? ユリ(ねぇ)

「お店にヒュージボアのお肉が余ってるみたいなの。私、最初に作ってくれたステーキが食べたいなぁ」


 その程度、お安いご用だ。


「任せて!」


 そして冒頭の場面に戻る。


「よし! 出来た!」


 俺はステーキを持って、調理場とホールを結ぶ扉を開ける。

 ―――――しかし、ホールの部屋は暗い。

 明かりは一切無く静かで暗闇に包まれている。


『何事だ。イズナ?』


 これにはタマモも警戒する。

 まさか、何かあったのか? 俺は変な緊張が駆け巡る。

 不味い、今武器になるようなものは持っていない。

 こうなったら調理場に戻り、調理場に置いてあった肉切り包丁を武器にするしかない!


 俺が次の瞬間に動こうとした時、部屋は明るくなる。

 っ! 目潰しか! 俺が無理矢理目を見開き、視界を順応させようとすると、視界に白い物体が写る。

 そして。


「「「「誕生日おめでとう!」」」」


 パンパンパンパン


 クラッカーと呼ばれる火薬が詰まった音が鳴る紙筒を引っ張る皆がいた。


「『は?』」


 俺とタマモの声が重なる。

 意味が分からない。

 一体どういうことだ? と俺が混乱しているとユリ姉が近づいてくる。


「イズナちゃん! 知らないと思うけどアーネスト大陸の習慣では誕生日は盛大に祝われるものなのよ」

「誕生日?」

「私、最初に出会った時に聞いたのよ! イズナちゃんの誕生日が12月24日だって! 私、ずっと考えていたの。このユリィからの聖夜祭兼イズナちゃんのお誕生日会をね。そしてこれが私達からのお誕生日プレゼント。お誕生日ケーキよ」


 あ、確かに聞かれた覚えがある。

 でもおれにはこんな習慣なんて聞いたことが無かった。

 母さんといたときは普通に過ごしていたし。


 ケーキと呼ばれる大きな白い塊はユリ姉達皆からのプレゼントらしい。

 しかし、一体いつ用意した?そんな疑問に答えてくれる人が居た。


「やぁ! イズナちゃん俺だよ。オウル=グーフォ。怪我は嘘で、このケーキを作っていたんだよ!」


 それはフクロウの夜明け亭の主人、オウル=グーフォさんだった。

 なるほど依頼は嘘だったのか……それで自宅で1日中ケーキを作っていたのか。


 皆笑顔で口々に「おめでとう」と言ってくれる。

 何だろうか、初めてだなこんなに暖かい気持ちになるのは……


「さ、食べてみて! あーん!」


 ユリ姉が切り分けてくれたケーキをユリ姉の手から一口食べてみる。

 ホント、ユリ姉には敵わないなぁ。


「凄く……甘い……」

『フ…………』


 一筋、ほんの一筋だけ涙が流れ出たが、狐面に止められ、一人を除き、誰にも気がつかれる事は無かった。


「皆、ありがとう!」


 俺は狐面の半面を着けていても分かるように満面の笑みでお礼を言った。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ