外伝最終話 大切な記憶はどうして消されたのか
「ティア様はまさかこれを知っていて……?」
殺さなきゃ、こいつだけは殺さなきゃいけない。
私の大切な【仲間】を傷付けたこいつを。
私はまるでゆっくりになった世界で、私だけが普通の速度で動ける。
歩いて老人の前に立つが老人の表情は私が動く前と変わらない。
私はおもむろに剣を振るうが老人は思いの外固く、浅い袈裟斬りになってしまった時、時の流れは徐々に元に戻る。
私は後ろに飛び跳ね、皆の前に立つ。
「なっ……!」
老人は今切られた事に気がついたようだ。
胸を押さえて傷を庇う。
「ユーリ、お前は【勇者】なのか……?」
【勇者】先程の言葉はどうやら聞き間違いのようでは無いようだ。
だがそんな事はどうでも良い。
今はこの老人を殺す事以外はどうでも良い。
剣を突き刺して殺す、切って殺す、殴って殺す、蹴って殺す。首を締めて殺す、目玉抉って殺す、臓器を掻き出して殺す、殺す殺す殺す殺す。
【許さない許さない許さない!】
「ぐふっ、どうやら感情に力が振り回されている様子ですね。しかも身の丈に合わない力も使ったようですね。一体それだけの力の代償はいかほどか……」
私は何か呟く老人を無視し斬りかかる。
老人はバリアを張るが、そんなの関係無い。
私はイメージする。
さっきは浅かったから今度は深く、深く老人を切り刻むイメージを込めて剣を振るう。
今まで堅固で傷一つ付かなかったバリアがガラスのように割れ、私はそのまま剣を振り抜いて老人をまた切りつける。
「おっと危ない!」
しかし老人は後ろに飛んで剣筋から逃れる。
【逃げるな】
世界がまたゆっくりになる。
私は空中で動かなくなった老人を二度三度と切りつける。
先程より深い傷だ。放っておけば確実に死に至るだろう。
私は時の流れが戻る感覚を察知したので少しだけ離れる。
「がはっ! またですか!」
老人は着地した後に膝を着く。
これで暫くは動けないだろうと、私は皆の方を向き手をかざしてイメージする。
朝までの元気な皆を。
【治れ】
皆の傷が一瞬で回復する。
しかし皆は私の顔を見て悲しげな顔をする。
何故? まぁ良い、あいつを倒したら皆に教えて貰うんだ。
言葉の事、この世界の事、魔法の事、敵の事、そして皆と冒険したり、馬鹿話をしたりするんだ。
楽しみだなぁ、それにはあいつが邪魔だ。
ならどうする? 倒すしかない。
コロセ、コロセ!
「ユーリ!」
女の子が抱きついてくる。
何で止めるの? アイツを殺せないよ?
「ユーリさん、落ち着いて下さい!」
「今のお前は普通じゃねぇぞ!」
男の子達が呼び掛けるが、分からない、何かが……
【あっ……】
私の体から光の粒子が出てが薄くなる。
私は消えてしまうのだろうか。
「このタイミングで召喚とは……フフフ、このサドネス、命拾いをしたようですね。【稀人】殿。少しだけ嫌がらせをさせて頂きますよ」
私を【稀人】と呼ぶ人物は三人に石のような物を投げつける。
石が三人に当たると、まるで煙のように消えてしまった。
私は石を投げつけた謎の人物に斬りかかる。
【ウワー!】
しかし剣は当たらず、謎の人物をすり抜けてしまう。
よく分からないがこの人物は敵、そう思ったから斬りかかったがすり抜けてしまった。
そこで私の意識は途絶えてしまった。
廃城に残るサドネスは呟く。
「はー、死ぬかと思いましたよティア様。このためにこの何もない島に来るよう命令なされたのでしょうか? しかしあの【稀人】殿はとんでもない力の持ち主ですね……その代わり身をわきまえない代償は高く着くでしょうがね……まぁ疲れましたが収穫も有りました。若く、将来有望な人間を、ね。さて、私もこの廃城を処理して帰還しますか。まったく老いぼれには堪えますよ……」
後日、アーネスト王国騎士団の調査が入ったが、その島には存在していた廃城は欠片もなく消えていたようだ。
この事件が起こったとき三人の若者が行方不明になり捜索されたが一切の痕跡も存在しなかったので、死亡扱いとされた。
そしてアーネスト大陸に現在二人目の勇者が誕生することとなった。
「……ま」
「……さま」
もっと寝かしてよ。
本当に疲れたのよ。
皆も疲れてるでしょ? あれ、皆って誰だっけ?
「あのぅ、【勇者】様?」
【ん、うーん。なによ~締め切りはまだじゃないの? もうちょっと寝かせてよ……】
「あ、起きました!【勇者】様が起きましたよ!お父様!」
え、何この状況? 私は確か皆と誰かと戦っていたはず……あれ、皆って誰だっけ? それと誰と戦っていたのか、何で戦っていたのかを私はてんで思い出せない。
あれは全部夢だったのかしら? 私はふと手で握っていた物を見る。
【あ、やっぱり夢じゃないんだ】
私が握っていたのは剣だった。
確かに誰かがくれた物だ。
「おっほん。君、良いかね?」
何だろう?ザ・王様って感じの服装の人が相変わらず分からない言葉で話し掛けてくる。
「私はアーネスト大陸のアーネスト王国国王、メガリス=アーネストだ。【勇者】よ、お前は私の娘に召喚された。何処の国の者か分からぬがそれは不問だ。今からアーネスト王国国民として扱われる。【勇者】よ、悪の【魔王】を討伐するため、力を貸してくれないか。勿論手厚く支援をする」
うーん相変わらず大体の言葉が何を言っているか分からない。
日本語で聞こえたのは【勇者】、【魔王】? 何だろう何か重要なことを忘れている気がする。
私は右手の甲を見ると良く分からない紋章が右手に書かれていた。
あ! もしかして勇者って私か! お兄ちゃんだったら喜ぶかもしれないけど私は別に……
正直断って逃げようとしたが、「仲間」と言う単語と、やたら熱い笑顔の男の子とクールなイケメン、ツンツンした可愛い女の子の顔がよぎった。
「仲間」か……何だろう? この言葉とよぎった顔を思い出すと何か暖かい気持ちになる。
私はこの人達に会わなきゃいけない気がする……
「ゆ、【勇者】よ、どうしたのだ……」
王様はずっと剣を握って黙っている私に話し掛けてくる。
この王様、セキュリティ甘くない?
兵士は居ないし、剣は取り上げないし。
ま、良いか、やってやろうじゃないドラゴンでもゴーレムでも何でも来なさい!
なら最初にやることは一つ! 分かりやすく伝えるならこれしかないよね!
【とりあえず、紙とペンを貸して下さい!】
3つ同時に投稿したのでご注意下さい!
これにて、外伝は終わりです!いつか絡んできます!きっと!多分!




