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狐面は伊達じゃ無い!  作者: 遮二無二
2章 集結!二人の男!
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第20話 闘うI/ミミズモドキは傷つく

「そんな……バカな……」


 アルは愕然としている。

 まさかの二匹目がよりにもよって俺達の前に現れるなんて想像もしていなかったからだろう。

 しかし、こうなったらやるしかない!


「アル!お前はギルドに走ってくれ!俺とウィルで対処する!」

「無茶です!こんな魔物に僕らだけでは勝てません!」

「今ここで足止めしなかったら街に来るかも知れないんだ!速く行ってくれ!」

「くっ、分かりました!」


 アルは走ってギルドに向かう。


「ウィル、お前は下の街に行って鍛冶屋から武器借りてきてくれ。お前は素手ではきついだろう?」

「分かった。だがあまり無茶はするなよ。」


 俺は急いで街の外に居るアースクロウラーの近くまで走る。


『安心しろイズナ。今のお前ならあの程度は勝てる。』


 まぁまぁ辛口評価なタマモがそういってくれるなら大丈夫だな。

 俺は現れてから動かないアースクロウラーに注意を向けさせる。

 なるべく街から遠くに離す作戦だ。

 見よ!街のガキ大将仕込みの罵詈雑言を!


「やいやいそこのお前! 図体だけは立派に育ったそこのお前だ! このウスノロ! よくもアルスト周辺で悪さしてくれてたな! 覚悟しろこの虫野郎!」


「ギ?」


 アースクロウラーに何だコイツ? みたいな反応をされた。

 魔物の癖にまさか言葉を理解してるのか? それはさておき注意を引くことには成功した。

 このまま少しずつ遠ざかりながら挑発する。


「お前だよ、お前! 馬鹿そうな面を引っ提げて人様の庭を荒らすんじゃねぇ! バーカ! アーホ! ミミズモドキ!」

『戯け、こんな魔物に言葉なんて通じるわけが無いだろう……』

「ギシァアァァァッッ!!」

『えぇ……』


 アースクロウラーは急に俺に襲い掛かる。

 俺は冷静に【疾風(はやて)】を使って速度を上げて攻撃を避ける。


「へっ、やっと闘う気になったか。だったら俺の男気を見せてやる!」


 まずは手始めにクナイを魔力で強化し、投擲する。

 木だったら何本も貫く威力だ。

 狙い通りアースクロウラーの体を貫通するクナイ。

 しかし、アースクロウラーにはダメージが一切入っていないのか意に介さず噛みつきを繰り出してくる。

 だったら次はこうだ!


「身体強化【剛力(ごうりき)】!」

「ギッ!」


 アースクロウラーの噛みつきを掻い潜り、懐に入った瞬間に身体強化を力の強化に切り替えて本気で殴った所、全く抵抗無く拳はアースクロウラーの体を貫き、奥へと沈みこむ。

 しかしあまり効果は無いようだ。

 素早く拳を引き戻そうとするが拳がアースクロウラーの体から抜けない。


『イズナ!罠だ!速く腕を抜け!』


 まるで筋肉に絡め取られたように抜けない腕。

 アースクロウラーは体を持ち上げる事によって、俺はそれにつられて地面から体が離れる。

 まずい! 地面に押し潰すつもりだ!


「ッ、【鉄壁(てっぺき)】!」


 次の瞬間、予想通りアースクロウラーの体と地面に押し潰される俺。

 鉄壁を使ってダメージが相当軽減されたが、やはりアースクロウラーは質量の塊。

 それなりのダメージは避けられなかった。

 体を押し潰されて肺から空気が押し出される。


「ぐはっ!」

『イズナ! もう一度来るぞ!』


 嘘だろ! まだ息が整って無いのに!

 急いで腕を引き抜こうとするが、やはり抜けない。

 まずい! もう一度潰される! 次の衝撃に耐えようと身をすくめる。

 しかし、次の衝撃が来ることが無かった。


「どうやら打撃は効かないようだな。」

「キギッ!?」


 大きな影がアースクロウラーに衝突、アースクロウラーは苦しそうに呻く。

 よし、今なら! アースクロウラーの筋肉硬直が緩んだので俺は腕も引き抜き離れる。

 腕に体液がべっとりついていて気持ち悪いがそんなことを気にしている場合ではない。

 俺は俺を助けてくれた存在の方に顔を向ける。


「イズナ、無事か。」

「やっぱりお前か!

 助かったぜウィル!」


 ハルバードを持ったウィルがそこには立っていた。

 しかしウィルにお似合いな武器を選んできたな……


「イズナよ、背中に背負った剣を使え、奴は斬撃が有効のようだ。」

「おう! 一気に行くぞ!」


 俺は兜断ちを両手に構えて再度【剛力】を掛ける。

 どうやらウィルから頭に一撃を受けていて、未だに怯んでいるアースクロウラーに一気に決める。


「細切れにしてやるぜ!」

「行くぞイズナ!」


 二人で一気に斬りかかり、アースクロウラーは体を三つに分断される。

 僅かな時間、もがき苦しみ、そのまま断末魔を上げて絶命した。

 たった二人で危険と言われるアースクロウラーを倒すと言う所業に俺は自分が強くなっていることを実感できて非常に嬉しかった。

 はは、アルにはギルドまで走って貰って悪かったな。

 戻ってきたらビックリするだろうから反応が楽しみだ。


『これではぶつ切りではないか?』

「こ、細かいことは気にするなよ……ウィル! ちょっとそこの川で手を洗ってくるな!」


 タマモのツッコミで少し恥ずかしくなった俺は誤魔化すようにアースクロウラーから離れて川に近づく。


「待てイズナ! それ以上川に近づくな!」

「は?」

『しまった!』


 珍しく慌てたような口調で叫ぶウィル。

 俺が地面を一歩踏み出すと地面の押し返すいつもの硬い感触が無い。

 地面が崩落し、そのまま俺は下に落ちて行く。

 ゆっくり落ちてくように見えたその先には穴。

 しかしその穴には白い棘のようなものがびっしりと着いていてる。

 棘いや、違うコレは歯だ。

 あぁそうか、ユリィさんの怪談の正体はこいつだったのか。

 そう、目一杯に口を広げて俺と言う餌が降ってくるのを待つアースクロウラーが穴の底には居た。

次回、アル視点

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