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狐面は伊達じゃ無い!  作者: 遮二無二
2章 集結!二人の男!
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第17話 滲み出るO/アルストの流行りは行き倒れ

「今日はイズナちゃんを泊めたいけどお父さんが調査で家を開けてるの! お父さんが居ないときにマクスウェルさんみたいに男の人を上げたらお父さんが許さないから今日はごめんね~」

「え、俺も男……」


 ユリィさんの言葉に俺は思わず反応してしまう。

 サラッと俺の性別が本当は男だって忘れてない?


「あ、違うわ! イズナちゃんは特別よ。ほら、えーっと、お父さんも気に入っているし、まだ小さいしね~」

「そうかー良かった。男扱いされてないのかと思ったよ」

「そ、そうよ! イズナちゃんは男の中の男よ! ふ、ふふふ。真の男はどんな髪型や格好でも似合うのよ? ほら、私と同じ三つ編みも似合っているわ」


 そうなのか! つまりは三つ編みやサイドテールすらも似合う俺は真の男なんだな! 俺は思わず笑みが出る。


「本当にちょろかわいい()だわ……」


 そんなユリィさんのボソッと呟いた言葉は、真の男と呼ばれてテンションが上がっていた俺には聞いていなかった。

 ウィルがギルドメンバーになった後、ギルドを出るとタマモがため息をつき、面を着けている俺にしか聞こえない声で喋る。


『私はあの小娘が苦手だ。積極的過ぎるし、面も剥がれたしな。変な緊張をするぞ』


 タマモの声は周りに聞こえないが、俺はそんな精神感応じみた事は出来ないので小声で呟く。


「タマモはユリィさんの前だと本当に喋らないもんな」

『頼むから私の事はあの小娘に言うなよ。何をされるか分かったもんじゃない』

「はいはい、分かったよ。可愛く装飾されたりしても困るしな」


 ユリィさんならやりかねない。

「もっと可愛くしてあげるね!」とか言って絵を描かれたり接着剤でキラキラな石をつけたりね。

 そんな話をタマモとしていたら、ウィルが話掛けて来る。


「イズナよ。ぶつぶつ呟きながら何処に向かっている?」


 少し怪訝な顔をして俺を見るウィル。

 タマモの声は俺以外には聞こえないから周りからは一人で喋っているように見えるからなぁ……


「い、いやぁ……少し考えてたんだよ……そうだ! 今向かっているのはウィルの身だしなみを整えてやろうと思ってな、古着屋と床屋に行くんだよ。今回はウィルには手持ちの金が無いから俺からの奢りだ! 二ヶ月程は俺の家に住むことになるし雑貨も買うか!」


 適当に話を誤魔化す為に出た言葉だが、何一つ間違ってはいない。

 俺がその話について考えていたのと勘違いしたであろうウィルは少し申し訳無さそうな顔をする。


「衣食住、全て世話になって本当に済まないな。この礼は必ず返すから少し待っていてくれ」

「良いって、俺もお前が来なければまだ半年近くはこの街に居ないといけなかったかもしれないし。これから俺を助けてくれるんだろ?」


 俺がそう言うとウィルは微笑む。

 出会ってから初めて笑ったな。


「フ、無論だ」




 最初に俺らは古着屋向かい、ウィルにまともな服装をさせる所から始める事にした。

 古着屋に入ると、店主であるマスティフさんはウィルのピッチピチの服装を見て大爆笑する。


「アーッハッハッハ、イズナちゃん! その後ろにいるファッションセンス抜群な彼は誰だい!おばさん笑いすぎてお腹痛いよ!」

「マスティフさん一応客だぞ。いくらなんでも笑いすぎだろ。ぷぷ、狩人用に見繕ってくれよ」


 折角ウィルのピッチピチの服装を見慣れてきた所なのに。

 しかもさっきのハードボイルドなシーンも台無しじゃないか。


「ふー、収まった。ピッチピチの彼はこっちにおいで!服を見繕ってあげるよ」


 10分位適当に服を見ていたらウィルが戻ってきた。

 薄茶色の長袖のシャツを着て、下は濃い茶色のパンツをベルトで留めて、靴は革のブーツ。

 軽装で動きやすそうだ。


「こんなもんだろうイズナちゃん。じゃぁ請求書を渡すよ」


 予備の服や下着など色々揃えたのでまぁまぁお金は掛かるが、普段俺は余りお金を使わないので貯金はある。

 だから俺は軽々と支払う。


「マスティフありがとう。はいこれお代」

「毎度~イズナちゃんも今度はオシャレな服を買っていきなよ!」

「俺は良いって。それにこの黒装束だってイカしているだろ? じゃあね」


 俺はそう告げてウィルと一緒に店を出る。

 よし、次は床屋に行こう。そうすればウィルの姿も見違えるだろう。

 イズナ達が店を出た後、マスティフは入口辺りを見て一人呟く。


「……とても女の子のする格好じゃないんだけどねぇ。面も不思議と違和感無く似合ってるけど何で着けてるかねぇ」




「よし、ウィル。ここが床屋らしいから入ろうぜ」

「うむ。イズナはこの街の散髪屋を利用したことが無いのか?」

「おう。普段俺はあんまり切らないし、切るときはユリィさんに切って貰ってるからな。初めて入るよ」


 自分で切ろうとするとまずタマモに止められた。

『お前は体を切りつけるつもりか!?』って具合にね。

 見てて怖い勢いで鋏を動かしているらしい。

 俺はそんなつもりは無いけど。

 そこでユリィさんに相談したところ、喜んで俺の髪を切るようになった。

 その時からだったけな? サイドテールを強制されたのは。

 まぁ髪を縛った方が動きやすいからと俺は引き受けた。

 今日はユリィさんと同じ一方の太い三つ編みだけどね。


 二人で店に入ると本を読んでいる男の人が椅子に座っていた。

 男はこちらにすぐに気付き、話しかけてくる。


「いらっしゃーい。お兄さんがお客だね。それじゃあこっちにきて椅子に座って。妹さんは外で遊んでいるかそこのソファに大人しく座っていてね。一時間位で終わるよ」

「「妹じゃ(では)ない」」


 俺とウィルの声が重なる。

 見た目からして違うだろ! 金髪と赤錆色の髪だぜ? しかもどちらかと言えば俺は妹と言うよりは男だから弟だ!


「ふーん、ごめんよお嬢ちゃん。じゃあ髭剃りから始めようか」


 心底どうでも良さそうに髭剃りの準備を始める店主。

 多分何言っても受け流す人だろう。

 少し苦手なタイプだなぁ……


「じゃあ外をブラついてるよ」


 なので俺は外に出ることにした。

 街の通りを適当に練り歩くきながら、暇なので適当にタマモと会話をする。


「うーん俺が男と一目見て分かってくれる奴は居ないのかなーなぁタマモ?」

『自称男と言うには声から容姿からもう無理があるだろう。お前の男らしいのは戦闘のやり口(猪突猛進)と筋肉至上主義と口調だけだ。つまりは外面には一切現れていない。そんなお前を見た目で男と判断する奴は目が節穴なのだろう』

「うっ、ぐぬぬ、悔しいが正論だ。表におれの男らしい魅力が出ないのならやはり筋肉を鍛えるしか道はないのか?」


『…………別に容姿は良いのではないか? 真の男の魅力とは内面。内面が伴って居ないのに外面を整えてもお前にとっての真の男とやらに足り得るのか?なぁに、内面を鍛えればいずれ男のオーラが体から滲み出るであろう』


 なんと! そうか内面かぁ。

 俺に足りてないものは真の男気。

 男気を極めればやがて外面にも影響が有るってことか!

 イメージが力になる世界だから十分有り得るだろう。

 さっきと言っていることが真逆な気がするけどな!


「流石タマモだな、発想が違うや。俺、間違ってたよ。これからはもっと内面を鍛えて行くよ。そしたらいつか皆が気づいてくれるよな? 俺が男だって」


『…………その通りだ。多分、きっと、恐らくな。ま、まぁ頑張ると良い。ほとほどにな……?』


 その時ドン、そんな音を立てて俺と誰かが体をぶつける。

 タマモと話していた俺は少し注意散漫になっていようで、目の前でふらふらしているローブを着た少年に気が付かず、体が当たってしまったようだ。

 おっと。少しだけ前に躓くが俺は転びはしなかった。

 少年の方が気になり、振り向きながら謝る。


「悪い悪い、ちょっとボーッとしてた……よ?」


 振り替えると少年は立っておらず地面に倒れ伏せていた。

 転ける程はぶつかったつもりは無かったんだけどな。

 俺は少年に近寄り声を掛ける。


「おい大丈夫かお前。あれ、動かない? まさか、し、死んで?」


 まさか俺は強くなりすぎて人に当たっただけで殺人を犯してしまったのか?

 そんな考えが頭をよぎると少年はピクリと動く。


「はん……」

「どうした!すまんがもう一度言ってくれ!」


 辛うじて言葉を発する少年に近づきもう一度言うように促す。


「お腹が……減って死に……そう……なのでご飯……下さい……」


 あれ? この展開何処かで見なかったか?

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