第10話 規定とオリヴァーと試練
ど う し て こ う な っ た。
俺は今、ユリィさんの家のキッチンで料理をしている。
ダイニングにはユリィさん、ユリィさんのお父さんであるオリヴァーさんとギルドマスターのガストさん。
そして、何故かハワードさんが俺の料理を待っている。
時を遡る事二時間前。
「君、12歳未満だろう? 12歳以上じゃないとギルドは入れないのだ。私の目は誤魔化せないよ」
「ソンナコトナイデスヨ?」
全身から汗が吹き出し声が裏返る。
何故バレた? 人の年齢が分かる能力なんてあるのだろうか。
そんなピンポイントな能力があるとしたら、なんて恐ろしい事だろうか。
「君ねぇ……人間の子どもは身長や体重でおおよそ年齢が分かるのだよ。130cm強……恐らく9歳から良くて10歳程度だろう?君は」
「ぎくっ」
ガストさんはドンピシャで年齢を当ててきた。
まずい、ここで断られて二年待て、なんて事を言われても困る!
それだけ鉄仮面が母さんや俺を捜すのに掛ける事が出来る時間を増やしてしまうからだ。
「いや! アレですよアレ! まだ成長期じゃない的な?」
「いや、もう反応でまるわかりだよ……成人してないとギルドには入れない。これは規則なんだ」
ぐぬぬ、これはもう嘘は通じなそうだ。
万事休すか、俺がそう思った時、背後から声が掛かる。
「ちょっと待ったー!」
この声は? 後ろを振り向くと受付嬢のユリィさんが仁王立ちをしていた。何故仁王立ち?
「マスター! ギルドに成人していなくても入れる規定があるじゃないですか!」
その途端にガストさんは苦虫を噛み潰したような顔をする。
何か不利益な事でも有るのだろうか。
「……確かに有るな」
「ふっふっふ。マスター、その規定の説明をイズナちゃんにして宜しいでしょうか」
「……分かった。説明してやってくれ」
ユリィさんがこちらに顔を向けると少し屈んで目線を合わせる。
「イズナちゃん、対魔ギルドにはねランク制度って言うものがあるの。これはねギルドの加入年数、実力や成果、はたまた人格を考慮されて上がっていくものでね、全部で10段階あるのよ。それでもう1つ、推薦制度って言ってね、12歳未満の成人していない子供でもギルドに入れる制度があるの。そして推薦条件は1つ。5級以上のギルドメンバーに推薦して貰えば良いのよ。そしてこの街には今一人だけ4級の人が居るわ」
おぉ、つまりその人に認めて貰えば俺でも対魔ギルドに入会出来る訳か! 単純で分かりやすいな。
「ユリィさん。それでその人は何処に居るんだ?」
「ふっふっふ。私の家よ! 何を隠そう私のお父さんよ!」
話を聞いてみるとユリィさんのお父さんがこの街で一番ランクの高い人との事だ。
割りと平和な街らしく、ランクが高い人が必要になるほど危険な魔物は滅多に出現しないらしい。
「……まぁオリヴァーさんが認めれば入会は良いだろう」
ガストさんはしぶしぶといった様子で頷く。
なんでこんな態度なのだろうか?
「そうと決まれば皆さん! 今日はギルド閉めて私の家に行きますよ!」
ユリィさんの決定に従い、俺とガストさんとユリィさんはユリィさんの家に移動する。
道中では俺はユリィさんに質問責めに合う。
「え、イズナちゃん魔の森に住んでるの!?」
「は、はい」
ぐいぐい来るユリィさんに俺はたじろぐ。
母さんとは全く違うタイプの女の人なので緊張する。
初めて会った人間のハワードさんより緊張しなかったのにな。
やはり俺は前世では男だったのだろう。
しかも恋愛経験薄そうな……リアクション的にね……
「魔の森はその名の通り危険な魔物がいっぱい住んでいる場所よ! イズナちゃんのような子が居て良い場所じゃないよ。街に来ないの?」
「はぁ……今のところは無いですね」
「もう、本当に心配してるんだからね」
ユリィさんは本当に心配そうな顔で言う。
優しい人なんだな。
だが、そうは言われても母さんが残してくれた家だ。
そう気軽と移り住みたくはないので居残る理由は適当にはぐらかす。
「あ、ここが私の家よ。少し待っていてね。お父さんただいまー! ちょっとこっち来てー!」
ユリィさんは街の中にある立派な一軒家の中に入っていく。
丁度五分位待った頃に玄関の扉が開く。
壁? いや違う。これは人間だ。
身長は2mを優に越えていて、横幅も筋肉で大きい男だ。
頭は毛が完全に刈り取られていて一本も生えていない。
顔つきはユリィさんとは全く似ていなく、ゴツい顔に口周りに髭を生やしたダンディーな男が立っていた。
「お嬢ちゃんがイズナか」
「あ、ああイズナです」
「狩人になりたいんだってな。俺の出す試練を越えてみろ。そしたら認めてやる。挑戦するか?」
「勿論!」
「なら来い。試してやる」
これはあれだな、このゴツいおっさんと戦って光るところを見せれば認めてくれる的な熱い展開だな!
俺は武者震いをする。
三種の身体強化を覚えてからまだ一度も対人で戦闘をしていない。
緊張はするが負けるつもりは一切無い。
全力でやってやる。
しかし、俺が連れてこられた場所は広いキッチンだった。
まさかここで戦うつもりか?
「さぁ、試練の内容だが……」
俺は身構える。まさか屋内戦闘を想定した試練とは恐れ入る。
もしかしたらオリヴァーのおっさんはいきなり仕掛けてくるかもしれない。
緊張の糸を張り巡らせて相手を見据える。
「俺を満足させる料理を作ってみろ!」
俺はずっこけた。




