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狐面は伊達じゃ無い!  作者: 遮二無二
1章 開幕!俺!
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第1話 狐面と少女と対魔ギルド

初投稿です。優しく見守って下さい。

 鬱蒼(うっそう)としていて、人による整備が行われていないだろう森の中を一人の金髪の少女が歩く。

 少女は黒い長袖のシャツと同じく黒のカーゴパンツのような物を穿いていて、靴は丈夫そうな皮のショートブーツを身に付けていた。

 更にもう一つ少女が身に付けている中でも不似合いな物がある。それは()()だ。しかし顔全体を覆うものではなく、口元の部分が無い半面である。


 そんな不思議な格好で深い森を歩いている少女の前方から猪が現れる。

 猪は大きさが体長が3m程と非常に大きい。そんな巨大な猪が少女に目掛けて突進してきた。

 少女は所謂手ぶらで武器や身を守れるような物は何も所持していない様子だ。

 少女は巨大な猪に放心しているのか、猪の方を見ていてその場から動かない。


 鈍い衝突音が森に反響する。猪の目の前にはミンチになった少女―――ではなく両腕で猪の牙を受け止めている少女がいた。

 少女の小さな体躯からは考えられない程の力で、受け止めた場所から全く動いている様子が無い。

 いや、それどころか猪を押し返してすらいる。猪も負けじと踏ん張った時、少女は目の前から消えた。

 猪にはそう見えたが、少女は猪より高くジャンプしたのだ。押し返す力が突然無くなった猪は勢い余って少女の後ろ側にあった岩に頭を強かに打ち付けてしまう。

 猪は痛む頭を無視して後ろを向くと少女が視界に居なかった。そして猪が上空をちらりと見たときにはもう遅かった。

 少女の上空からの蹴りを頭上から受けたのだ。地面と少女の足で挟み、頭蓋骨を押し潰すように粉砕されて猪は絶命した。


 少女はブーツに着く脳漿を払いのけ事も無げに呟く。


「しばらく肉には困らないな……」


 500㎏近くは有ると推定する猪を簡単に引き摺りながら少女はまた森の中を歩いていく。




 私の名前はユリィ=サディストリ、22歳独身。

 世界に4つある大陸の一つ、アーネスト大陸の南西部の端の街、アルストで対魔物狩猟兼防衛組合――――通称対魔ギルドの()()受付嬢をしている。


 魔物とは人に危害を加える生物の総称である。

 これら魔物に対して村や街の防衛、哨戒はたまた、遠征して魔物の討伐を行うのが我らギルドのメンバーの役目である。

 また、基本的にどの村にも対魔ギルドが一つあり、ギルドメンバーが常駐して魔物からの脅威から人々を守る誇り高い仕事なのである。しかし……


「この街は平和過ぎて暇だわ……」


 私は退屈していた。アルスト周辺は開けた平原が広がっている。

 その為、見通しが良く、街を囲む外壁から遠くまで一望出来てしまうので警戒が容易い。

 しかも生息する魔物も繁殖期以外ではおとなしい性質のものが多く、急を要するような討伐任務は中々無い。

 街から出て南に10km程離れると【魔の森】と呼ばれる広大で危険な森があるが、そこの魔物はあまり森から出ない。


 要するに仕事が無い。だからアルストは街の規模に対して常駐しているギルドメンバーが少ないのだ。


「はぁ~可愛い男の子かイケメン、または妹系の女の子がこの街に来ないかしらねぇ」

「おい、ユリィ。心の声が聞こえてるぞ」

「あらマスター。それは失礼しました!」


 どうやら暇過ぎて心の声が漏れてたみたい。気を付けなきゃね。

 私に話しかけてきたのはこのギルド支部の一番お偉いさんであるガスト=ティーユ。僅か28歳でギルドマスターに抜擢されるほどのデスクワークのエリートである。

 因みにギルドマスターの平均年齢は53歳らしい。年寄りだらけね。

 忙しくないアルストでギルドマスターの経験を積んで他の支部に行く、これが鉄板らしい。


「暇ですねーマスター」

「ああ、最近は魔物の被害報告もまるでないしな。だが平和とは尊いものだろう?」

「うーん、平和は素晴らしいですよね。どちらかと言えば私は魔物よりも新しいギルドメンバーが誕生しないかなーと思っているのですよ」


 アルストではとあるギルドメンバーが強く、礼儀に厳しい。

 そのお陰で他のギルドメンバーも礼儀正しいし、荒くれものも居ない。しかし若いギルドメンバーはここで礼儀を学び、経験を積んだらより稼ぎの良い王都等に流れていってしまう。

 何故なら若い子は世界を回りたがるからだ。ワクワクするもんね冒険って。


 そんなわけでアルストの対魔ギルドメンバーはことごとくおじさんばっかり……目の保養にもならない&変わらない面子と私も飽き飽きしていた。


「可愛い女の子のギルメンとかいないかなぁ」

「この稼業は女子供には体力的にキツイだろう」

「でもロマンありません? 可愛い女の子が魔物相手に無双するのは」

「王都なら強い女性の魔術師が沢山いるのだがな」

「アルストにも来ないかなー強い女の子」

「わざわざ大陸の端っこのアルストまでは用がないと来ないだろうな」


 そんな雑談を続けていたらギルドの扉が開かれる。どうせいつものおじさん連中だろう。私は気だるげに顔を入り口の方に向けた。


 しかし、そこに居たのは全体的に黒っぽい服装をしていて、不思議なお面を着けていて、背中まで掛かる金髪の小さい女の子だった。

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