第六話〜〜立ちはだかる雷光〜〜
「お前に試練を与える!」
そう言って師匠はわたしに試練を与えた。内容は、ランペッジさんから一本取る事。
「え、ランペッジさんから? まだ早いんじゃ……?」
「なーに弱気になってるんだ。無理だと思うのか?」
そこでわたしは昨日の自分を思い出す。
「いえ……やります!」
「うん。よく言った!」
「じゃあ、ランペッジさんを呼んでください!」
「え?」
「え?」
「ランペッジは村にいないぞ?」
「ズコー!」
師匠が言うには、現在ランペッジさんは『ロッキ』という街にいるらしい。
「なるほど。その街への道程も試練の一部という訳ですね」
「いや、行くのは簡単だぞ? そこの山を越えれば……はい、到着!」
「……」
うーん。なんだかやる気に満ちてたのにちょっと拍子抜けだなぁ。
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こうしてわたしはランペッジさんに会うために山を一つ越えた場所にある街『ロッキ』にやって来た。
「でも、この街なかなか広いな……この中から探すなんてある意味、試練かも」
現在の時刻はお昼前くらい。その気になれば日帰りも可能だ。
「とりあえずお昼でも食べようかな。お腹減った……」
お腹が空腹感を訴えてきたので素直に従っておく。何をするにしてもまずは腹ごしらえをしなければ。
「お?」
そんな時、わたしの目に飛び込んできたのは『ロッキサンド』の看板。この街の名物らしい。
「へぇ……あれにしようかな。新メニューの参考にもなりそう」
という訳でお昼はロッキサンドに決定。お店の横にはすぐに食べられるようにテーブルが設置されていた。
「すいませーん。一つお願いしまーす」
注文するとすぐに出てきた。
「お、ジュースまで付いてるのか。なかなかやるね」
ロッキサンドは絶品だった。スパイシーな味付けがたまらない。
「ふぅ、美味しかった。なんかもうこれで終わりでもいいやって気分になってきたな……」
「なにが終わりなんだ?」
「いやーランペッジさんから一本取れって言われたけど美味しいもの食べたしもういいかなって……」
「ひどすぎる!」
「うわっ、びっくりした!」
いつの間にかわたしの背後にランペッジさんがいた。探す手間が省けた。
「ちょっと……驚かせないでくださいよ」
「それはこっちのセリフだぞ。見覚えのある姿を見つけたと思ったら妙な扱いされてるし……」
「この広い街でランペッジさんを見つけるのが面倒だったんです。だからちょうどよかったです」
「ぶつぶつ言っていたみたいだけどオレに何か用なのか?」
「師匠にランペッジさんから一本取って来いって試練を与えられました」
「試練……」
わたしの言葉を聞いた途端、ランペッジさんが不敵な笑みを浮かべた。
「そうかそうか。思ったより早かったじゃないか」
「え、どういうことですか?」
「実は以前、師匠に頼まれてね。『いつかサトリに試練を与えるからその時はよろしく』って」
「はぁ」
「となると……よし」
そこでランペッジさんはニヤリと笑い……
「すいませーん。一つお願いしまーす!」
「ズコー!」
ロッキサンドを注文した。
まったく……この人達はとことん人の気合いを打ち砕いてくれるなぁ。
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あの後、ランペッジさんとは一度別れた。『一時間後にここに来てくれ』と地図を渡されたのだ。
「えっと……この辺かな?」
そして道を曲がると人集りが見えた。
「なんだろ? ちょっと見てみようっと」
幸い待ち合わせの時間まではまだ余裕がある。すると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「さぁさぁ! 誰かこのオレから一本取れる人はいないかい!? 見事一本とることが出来たらロッキの木に希にできる、ロッキの結晶をプレゼントするよ!」
「何やってんの、あの人は……」
ランペッジさんだった。
「よーし、俺様が相手だ! オラァ!」
「オッケー! まずはそこから好きな武器を選んでくれ。全部木で出来てるから安心してくれ」
「はっ! 舐められたもんだぜ!」
ちょうど誰かがランペッジさんに挑戦するところだった。いかにも『ザ・小物』みたいなイカつい男の人だ。
「それにしても木か。懐かしいな」
そう。最初ランペッジさんと手合わせした時、あの人は拾った木でわたしを打ち負かしたのだ。
「なんだか、あの日の恩返しみたいな気分になってきたな。これに挑戦して一本取れってことかな?」
そんなことを考えているとあっという間に勝負が終わった。ランペッジさんの圧勝だった。当然か。
「よーし、今日はここまでだ。挑戦者、そして見物客の皆さん。またいつか会おう!」
「ちょっと待ったー!」
「!?」
「次はわたしが相手です!」
わたしのまさかの登場に、ランペッジさんが驚いている。待ち合わせの時間にはまだ早いもんな。
観客もまさかの挑戦者。そして女性ということもあり、かなり盛り上がっている。わたしは木でできた双剣を手に取り……
「では、いきます!」
「え、ちょ……!?」
「とーう!」
「ごふっ!?」
一本。そして試練も終了。ロッキの結晶も頂きました。
観客もすっかりいなくなり静かになった頃。
「あの、ランペッジさん……これって?」
「恥ずかしい所を見られてしまったな。ちなみにさっきのは試練の一本としてはノーカンな」
「えー」
「そしてこれはオレなりの特訓さ」
さりげなく流された。まぁいいか……不意打ちみたいなものだったし。
「でも一般人じゃ相手にならないんじゃ?」
「まぁな。だけどたまに旅の達人なんかが来る事があってな。それはもう色々な達人がいるもんだからいい特訓になる」
「へぇ……」
「でもこうやって特訓してるのは内緒な。一般人相手にして調子乗ってるみたいでカッコつかないだろ?(キリッ)」
「はぁ、まぁいいですけど」
こんなに強いのに特訓するなんてすごいなぁ……と関心してたけど、本人がそう言うなら仕方ない。
「よし、じゃあさっそく行くか」
「どこに行くんですか?」
「試練なんだろう?」
そうだった。これからこの人から一本取るんだ。やってやるぞ!
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わたしとランペッジさんがやって来たのは街の外れにある平原。ここなら思う存分戦えそうだ。
「それにしても時が過ぎるのは早いもんだな。初めて会ったのは師匠の店だったな」
「そうですね……」
ランペッジさんは柔らかい笑顔を浮かべながらそんな事を言ってきた。初めて師匠のお店で見た時から変わらない。そうだ、あの時……
「サトリはずっとこれを眺めてたよな」
「!」
そう。わたしが目を奪われた綺麗な黄色の透き通った双剣。結局、特訓の時に使わせることはできなかった。だけど今なら……
「サトリ。お前は試練を受けるためにここに来た。そうだな?」
「は、はい」
「それなら……」
ランペッジさんが双剣『カラット・カラット』を手に取った。
そうだ。わたしは今からはこの人と同じ舞台に立つんだ。ヤバい……ドキドキが止まらない。
「オレはこれを使う。遠慮はしないぜ?」
この日。
わたしはランペッジさんに真っ向勝負を挑む。




