第三話〜〜常連の女の子は魔女だった〜〜
ある日の、師匠との特訓中。
「ぼけー……」
「あ、馬鹿」
「ぎゃ!?」
特訓中にも関わらず、ぼけーっとしていたわたしの頭に師匠の一撃が入った。ちなみに師匠の武器は槍。それなりにキツい。
「おいおい。なにぼけーっとしてんだ? ついにボケたか?」
「いてて……すいません」
なんだか最近はこうしてぼけっとしてる日が増えてきた気がする。自覚はあるのだが、理由までは分からない。ほんとにボケてしまったのだろうか。
「うーん、こりゃ気合い入れ直さないとダメだな。特訓の意味が無い」
「うっ、すいません……」
返す言葉もない。こんな調子じゃランペッジさんに一撃入れることなんてできないぞ……
「よし、サトリ」
「は、はい」
「山の頂上まで走ってこい!」
「えー!」
仕方ない。たるんでるのは事実だ。ここらで気合い入れ直すか!
「それに行って帰ってくるくらいなら余裕っしょ」
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「はぁ……はぁ……!」
現在、わたしは山の頂上へむけて疾走中。しかし舗装された道は一切使ってはいけない。これが師匠が出した条件だ。
「ただ頂上に行くだけなら余裕だなんて甘く見てた……! まさか条件付きだなんて……!」
ひたすら山の中を走るのは予想以上に体力を使う。通常の道を何往復もした方が楽なくらいだ。
「くっそー! わたしのばか! 師匠の悪魔!」
と、その時。
「ん? あれは……」
茂みの奥に人影が見える……カフェによく来る女の子だ。この辺の森はスライムしかいないとはいえ、こんな所に一人でいたら危険じゃないか?
すると今まさにスライムが女の子の前に現れた。
「あ、ちょっと!」
『気をつけて!』と言おうとしたその時。地中から現れた氷の槍がスライムを貫いた。それもオーバーキルにも程がある威力で。
「う、うそ……!?」
属性の違いはあれど、あれはわたしの風の魔法に匹敵する威力はあった。
「いや、あれは下手したら姉さん並かも……」
「……ん?」
「あ……」
わたし達は目が合った。それから数秒後。
「こんにちは」
「あ……こ、こんにちは」
「今日はカフェじゃないんですね?」
「あぁ……わたしはちょっと特訓中でして。山の頂上まで走ってる最中なんですよ」
「そうなんですか。呼び止めちゃってすいません」
「い、いえいえ!」
「それじゃあ私は行きますね。頑張ってください」
女の子はそう言ってまた別の場所へ行ってしまった。
「あ、魔法の事聞いておけばよかったな。またカフェに来た時にでも聞いてみるか……」
わたしは再び走り出した。今は特訓に集中だ。
そして頂上に到着し、折り返し。あと少しで下山! という所で……
「あれ? また会いましたね」
「ズコー!」
次会うのは明日だろうと思ってたのにこれだ。なんだか気にしてた自分がアホみたい。
「あの、大丈夫ですか?」
「は、はい。まだいたんですね」
「これを探していたもので」
そう言って女の子は金色のスライムを見せてきた。
「あ、金ピカスライム」
金ピカスライムといえば、全身が金でできていることで知られるスライムだ。当然、かなりのお金になる。
「へぇーすごいですね。滅多にいないのに……」
「できればコンゴウセキスライムを見つけたかったんですけどね」
コンゴウセキスライムは金ピカスライムよりも見つけにくく、捕まえにくい。そしてお金も上。
どんだけお金欲しいんだ? と思ったがそれ以上に聞きたいことがあったのを思い出した。
「あの、さっきの事なんですけど」
「さっき?」
「はい。スライムを倒してましたよね? すごい氷で」
「あ、そうですね」
「もしかして魔法使いなんですか?」
「……」
あれ? 黙っちゃった。触れちゃいけなかったかな?
「あ、ごめんなさい。無神経に踏み込んじゃって」
「いえいえ。……私は魔法使いじゃありませんよ」
「え?」
そこで女の子は……
「私は魔女です。氷の魔女のルノと言います」
「えぇ!?」
常連の女の子はわたしと同じ魔女でした。
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それから会話すること数分。
「え、じゃあルノちゃんも不老不死なの!? 通りでずっと若いなーって思ってたよ!」
「そんなこと言ったらサトリさんこそ」
わたし達は魔女という共通の話題で盛り上がっていた。
「じゃあ良かったらさ、今度一緒に討伐行こうよ」
「はい。私もサトリさんの魔法みてみたいですし」
「決まりだね。いつ行くかはまた今度決めようか。またカフェに来るでしょ?」
「そうですね。その時にでも」
そういう事になった。ずっとこの子の事が気になってたからスッキリしたな。いや、変な意味じゃなくてね?ってか、ぼけーっとしてた理由はこれか。
「ところでサトリさん?」
「ん? 何かな、ルノちゃん」
「特訓は終わったんですか?」
「あっ!?」
すっかり忘れてた! ヤバい……ずっと師匠待たせたままだ!
「あわわ!? ご、ごめんね! わたしすぐに行かないと師匠に怒られる!」
「はい、気をつけてくださいね」
ルノちゃんと別れて急いで戻ったが進んだ時間はもう戻せない。師匠が笑顔で待っていた。
「サトリ。こんな遅くまで……よく頑張ったな」
「師匠……!」
そうだ! 途中寄り道はしてしまったがわたしだってちゃんと頂上まで行って戻ってきたんだ。そう、サボっていた訳じゃない!
「……なんて言うと思ったか?」
「ふっふっふっ……え?」
「遅すぎだ!」
「ぎゃあああ!?」
わたしはその後、たっぷりと師匠にしごかれたのでした。




