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第一話〜〜双剣見習い・サトリ〜〜

 

 


 ここは山の麓にある村『ヒュンガル』


 わたしの名前はサトリ。

 本職は魔女。現在の肩書きは双剣見習い。自分で言うのもあれだが、魔女としての実力はかなりのものだと思う。風の魔法に関してはわたしより上はそうそういないんじゃないかな。お陰様で、二十歳にして不老不死になり、ピチピチの見た目は今も変わらない。


 え、なんで双剣なのかって? それはかっこいいから。何かを始める時の理由はだいたいこれで説明がつくんじゃない?



「サトリ、そろそろ起きなさい。今日もカラットの所へ行くのでしょう?」


「んぁ……そうだった……」



 この人は三つ歳上の、わたしと瓜二つの姉さん。綺麗な緑色の髪。魔女で不老不死。そして、そうそういないはずのわたしより風の魔法が上の人。だけど姉さんは魔法をあまり使いたがらない。


 ちなみに両親はわたし達と違って不老不死ではなかったので、何年も昔に亡くなっている。



「んじゃ、今日も頑張っていこうかな」



 こうして、師匠との特訓が今日も始まる。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 わたしは自宅から出て、師匠が経営しているお店『武器屋カラット』を目指す。



「それにしてもなんだか師匠の特訓が厳しさを増した気がするなぁ。ここ最近はいい感じにくらいついていけてたと思ったんだけど」



 まだまだ修行が足りん! とでも言われているみたいだ。悔しい。



「ととっ……着いた着いた。おはようございます」



 わたしはいつものように店内へ入る。すると聞き慣れた声が聞こえてきた。



「どうです、お客さん! この武器はあの世界一の魔女であり、鍛冶師でもあるカラットが作ったものですよ!」



 燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。わたしの師匠、カラットだ。



「またのお越しをお待ちしておりまーす!」



 どうやらお客さんは帰ったみたい。



「おはようございます、師匠」


「お、サトリか。おはよう! もうちょっと待っててな」


「はい。ごゆっくりどうぞ」



 まだ仕事中みたいなのでわたしは店内をぶらぶらする事にした。師匠の武器は人気なのでこうして待たされる事もしばしば。


 すると、一人のお客さんが入ってきた。



「おっす、師匠。また良いロッキの結晶が入りましたよ」


「おぉ、ランペッジ。いつもありがとうな」



 ランペッジと呼ばれたその人は、雷を思わせる黄色い髪を逆立てていた。目付きは鋭いが師匠と会話をしている時に見せる笑顔はとても柔らかいものを感じさせる。同い年くらいだろうか。



「てか、あの人……今、師匠って言ったよね……?」



 他にも弟子がいたのか。わたししかいないと思っていたからちょっと意外。



「それにあの人も双剣使いだ。すごく綺麗な双剣……」



 ランペッジさんとやらの腰には綺麗な黄色の透き通った双剣がさされていた。わたしがつい夢中になって眺めていると……



「ん、なんだ? これが気になるのかい?」


「あっ……」



 しまった……つい見とれちゃってた。ジロジロ見て失礼な事しちゃったな……



「す、すいません……綺麗な双剣だなぁって」


「お? 分かってるじゃないか。これはな、双剣『カラット・カラット』っていってな!」


「え、あの……?」



 わたしの言葉に上機嫌になったランペッジさんが、肩を元気よく叩いてきた。



「おいおい、ランペッジ。私の可愛い弟子を怖がらせるなよ」


「え? この子、師匠の弟子?」


「あぁ、サトリってんだ。お前より優秀だぞ。ははは!」


「ちょっと師匠……! そんな事言ったら……」



 変に目をつけられたりしたら困るって! なんて思っていたら予想外の反応だったので拍子抜けだった。



「そっかそっか! それは期待できそうだな。オレはランペッジ。よろしく!」


「え? あ……はい、サトリです。よろしくお願いします」


「兄弟子としてこれからの活躍に期待してるぞ。サトリ!」


「まったく……なーにを偉そうに。気を抜いてたらすぐに追い抜かれちまうぞ」


「大丈夫です! オレにはこの双剣がありますから」


「武器頼みかよ!」



 第一印象があれだったからちょっと警戒してたけど、なんだか面白そうな人だ。



「そうだ……ランペッジ。この後は暇か?」


「いえ。暇を潰すために何かする予定でした」


「よし、暇だな。この後サトリの特訓に行くんだけど来るか?」


「へぇ、面白そうですね。兄弟子としてサトリの実力を見ておくのも悪くない!」


「え、ランペッジさんも来るんですか?」


「そういう事になった。今日はよろしくな!」


「はい、こちらこそ」



 そういう訳で、急遽ランペッジさんも一緒に来ることになった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 あの後、わたし達は特訓のために山に入った。いつもと同じ特訓場所だが今日はランペッジさんもいる。



「師匠、今日は何をするんですか?」


「ふっふっふっ。いでよ、ランペッジ!」


「はっ!」



 ランペッジさんが現れた。ただ一歩前に出ただけだが。随分ノリがいい人だな。



「今日はせっかくこうして自称・兄弟子がいる訳だからな。色々と教えてもらおう!」


「ちょっと師匠! 自称じゃないでしょ!」


「はっはっはっ! ならぜひサトリに色々教えてやってくれ、兄弟子よ!ごにょごにょ……」


「……ふむふむ。分かりました」


「二人とも、何を話してるんですか? なんか怖いんですけど……」



 二人ともわたしを貶める気じゃないだろうな。

 何やら話を終えたランペッジさんがこっちにやって来た。



「よし、それじゃ今日はオレと戦ってもらおうか」


「え、ランペッジさんと?」


「安心してくれ。そうだな……これなら安全だろ?」



 そう言って拾ったのはなんの変哲もない木の枝。



「オレはこれを使う。サトリはいつもの使い慣れたものを使うといい」


「いいんですか?」


「もちろんさ」



 ふむ。そういう事なら本気で行かせてもらおう。あの綺麗な双剣『カラット・カラット』を使わせてやる!



「よーし、じゃあ始めるぞ。危険になったら私が止めるから安心しろ。二人とも遠慮するなよー!」


「「はい!」」


「んじゃ、はじめ!」



 合図と共にわたしは双剣を構えた。ランペッジさんは兄弟子。なら決して油断はできない。



「ふむ……流石、師匠が認めただけはあるみたいだ。相手をよく見てるな」


「……ありがとうございます」



 雰囲気に飲まれたらだめだからな。まずは相手をよく見よう。



「だけど、そんな時間は無いぞ?」


「え?」



 ヒュッ……!


 消えた!? いや、微かにだけど右に……!


 トン。


 そう思った瞬間、頭に何かが当たった。



「はい、おしまい」


「!?」



 右に動いたと思ったらもう後ろを取られていた。よく見る暇なんてなかった。それほどのスピードだった。



「サトリはじっくり観察しすぎだな。戦闘は待ってくれないぜ?」


「戦闘は待ってくれない……」


「観察することは確かに大事だ。サトリはよく出来てる。だけど相手の動きに対応できるスピードがないとな?」


「はい……」



 何も言い返せない。何も出来なかった。今のわたしがどんな小細工をしても結果は変わらないだろう。



 その後もランペッジさんによる特訓は続いた。



「ほら、サトリ! 闇雲に手数を出したって意味が無い! 決め手の一撃が無きゃ相手は何も怖くないぞ!」


「は、はい!」



 この人、ほんとに木の枝でやってるの!? 未熟な攻撃だろうがこっちは金属の双剣なのに!

 そんな焦りが動きに出たのか。見事に隙をつかれた。



「はっ……!」



 キィンッ!



 双剣を弾かれた。ただの木の枝で。


 気付けばランペッジさんの枝はわたしの首元へ。



「はあっ……はあっ……」


「勝負あり……だな」






 この日、わたしは自分の未熟さを痛いほど思い知った。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「……」



 特訓からの帰り道。わたしはひたすらに落ち込んでいた。



「まぁ、そんなに落ち込むなって。ああ見えてランペッジは私の一番弟子だからな」


「はい……」



 一番弟子か……確かにそうかも。



「気にするなよ、サトリ。師匠はああ言っているが、認められたのはお前も同じだろ? 少しずつ何かを学んでいけばいいさ」


「はい……」


「そもそもオレは兄弟子だ。そう簡単に追い越されても困る。はっはっはっ!」


「むむ……」



 悔しい。やはり悔しい! 兄弟子だとか、自分が情けないとか関係ない。とにかく悔しい!



「決めました」


「ん?」


「いつか絶対にランペッジさんから一本取ってみせます!」



 わたしはいつの間にかそんな宣言をしていた。ランペッジさんの反応は……



「あぁ、楽しみにしてるぞ。それができた時には……そうだな。ロッキの結晶をプレゼントしてやろう!」



 そんな事を柔らかい笑顔で言われた。はぁ、しばらくは適いそうにないな。







 こうして、師匠の一番弟子。わたしにとっては兄弟子であるランペッジさんは越えるべき壁。そして憧れの人となった。






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