貴方を守るために騎士になりました!
連載にしたかったけど、難しかった。いつか挑戦したい。
事故にあって死んだと思ったら、いつのまにか全く見知らぬ土地に違う存在となって生まれ変わっていた。
銀髪碧眼というコスプレのような容姿に変わり、それでも近代的ではなく中世的な世界観ということから現実味ももてずに、ただただ日々を生きていた。
いや、これを生きていたとはいえないかもしれない。誰にも何にも興味を持てずに、呼吸だけを繰り返していたように思う。現に私は、今世での両親の名も覚えていないのだから。幼い頃に死に別れたといっても、私の中身は、精神は成熟した大人だ。年齢は言い訳にはならないだろう。
ずっと死んだように生きていた私の世界に色がついたのは、あの日。
私の村を戦禍が襲った。いろんな人間の叫び声。血や死体で溢れる土地。そして目の前で刺された両親。愛想もなく、いま思えば捨てられてもおかしくないような私のことを両親はよく可愛がってくれたと思う。そう、最後の瞬間まで私を守ろうと、盾になってくれたのだから。しかし、それでも私はどうしようもなく、リセットボタンでも押せば私の現実に、死ぬ前に戻れるような気がしていたのだから大馬鹿だ。だからこそ、目前に刃が迫るのを無表情にずっと眺めていた。
あれ、もしかして死ぬのかな
そう思った瞬間、大きな背中が私の前に現れて、私に迫っていた刃を剣でなぎはらった。
「無事かっ」
振り返ることもせずに、大声をはる男。
はい、と私は答えるように返事をした。男は、それからあっという間に敵を倒して私の方に振り返る。
そうして男の顔を見た瞬間、私を襲ったのは驚愕。金髪碧眼の凛々しい男。そう、まるでライオンのような絶対的強者といった雰囲気をかもしだす男。
「ぁ、ぁ、ぁあ…………」
声にならない声が私の口からもれる。
「私の名前は、ダリウス・ヴェルハイン。少年よ、怪我はないか」
少年じゃない、少女だとも言いたかったが、もうそれどころじゃなかった。名前を聞いた瞬間、確信に変わる。容姿が二次元から三次元になっていたとしてもわかってしまう。そして同時に、もうひとつわかってしまった。
ここは、「ゲームの中」なのだと。
こんなことを言うと、おかしいと思われるかもしれない。
でも私は、確かに画面の向こう側の彼に本気で恋していた。
誰にどんなふうに思われようが自分の信念を曲げない彼。例え嫌われようが、相手のことを想って苦言を呈し続けた。いくら相手のためでも嫌われてまで告げ続けることができる人が、どのくらいいるだろう。私には絶対できない。だからこそ、そんな姿に強く憧れた。
主人公達が強くなるきっかけとして、主人公達を庇って敵の刃に倒れるシーンを見たときには号泣したものだった。
こんなとこで死んでいい人ではないだろうと、死ぬなら私のようなつまらない人間であるべきで、彼のような人ではないのだと、もし私がそこにいたら彼を庇うことができるのにと本気で強く願った。
叶いはしなかったが。
だから、この瞬間は奇跡なのだろう。貴方が私の目の前で確かに息をし、生きているということは。
ー今度こそ、絶対に貴方を助けて見せる。
それからは必死に努力した。ゲームの知識で彼が数年後に騎士養成所の教官になることはわかっていたし、彼を助けるためには、まずは騎士養成所に入る必要があったからだ。騎士養成所は騎士になれるほどの一定の能力がないと入ることはできない。平民貴族関係なく騎士になれることはありがたかったが、つまりは能力至上主義ということだ。彼に近づきたい、そして彼を助けたい一心で騎士になるために努力を重ねた。
そうして現在、努力の甲斐もあり、私はいま騎士養成所でゲームの主人公たちの同期として肩を並べて、教官と話を交わすことができている。
「教官」
「ん?なんだ」
「私、教官に救われたことがあるんですよ」
「……俺に?」
「ええ」
「悪いが覚えてない」
首をひねりながら告げた彼に私は苦笑する。悲しくないわけではないが、仕方ないだろう。いまの私と昔の私では違いすぎるのだから。でも、それでも……
「今度は私が貴方を守ります、絶対に」
そう、貴方の死亡フラグは私が絶対に変えてみせる。
強い決意をこめて告げた私に、彼は呆気にとられつつフッと笑う。
「でかい口を叩くなら俺より強くなってからにしろ」
「ふふっはい!」
貴方が好きだとは言えない代わりに、私の命に変えても貴方を守って見せる。そのために私は強くなったのだから。