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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔物の潜む森

作者: でんし

初めて投稿しました。少し血が流れる描写があります。


魔物がいる世界の話。主人公は男二人。特に特化したところがあるわけでもない。しかし、盗賊団の一味である。二人は、公安から逃れるため、森へと入る。

この話は、森へ入って数時間経った後の話です。

夜、森はとにかく静かだった。まるで、これから何かが起きそうな予感もする。 風は止み、木々の軋む音さえない。動物がいる気配もない。


「おい、どうなってるんだ?」


「分からねぇ。森がおかしい。生き物のいる気配がない。」


二人の男は銃を担ぎながら森の中を歩いていた。


「そもそも、ここは何処だ?」


「ああ。今地図で確認する。」


一人の男が、背負っていた少し大きめのリュックサックを下ろし、リュックサックの中をヘッドライトで照らした。もう一人の男は周辺をヘッドライトで照らしてみる。


「はぁ…。こりゃ随分奥まで来ちまったらしいな。戻るのにかなり苦労しそうだ。」


「あった。」


地図を広げると、その地図にはかなり明確に等高線や地形などが載っていた。


「おいおい、こんなに細かく詳しい地図があるのなら、もっと早く出せば良かっただろう?」


「悪りぃ。いつも行っている山小屋だから迷わないと思ったんだ。」


「はぁ…。というか、その地図で分かるのか?確かに細かく明確に載っている地図ではあるが、それだけでここがどこなのか突き止められるのか?。」


「完全に特定するのは出来ない。だが、だいたいであれば推定出来る。」

男二人は、地図を覗き込んだ。





地図によるとどうやらここはこの森の中心にある丘の近くである事が分かった。


「という事は山小屋まではもうそう遠くはないな。早く山小屋の所まで行った方がいい。」


「いや、俺はもう移動すべきでないと思う。もう、既に暗くなっているからな。移動する方が危険だろう。」


一人は、地図をすぐに取り出せる様にズボンの中にしまうと直ぐに立ち上がった。しかし、もう一人は逆に自分のカバンを下ろしてこの場所で野営する準備をしようとする。


「俺は野営する方が危険だと思う。今日はあまりにも森の様子がおかし過ぎる。」


「だからこそだろ!変に動くよりは野営して日が昇るのを待った方がいいだろう?」


「普通に考えてみろ?ここは普通の森じゃないんだぞ。魔物がウジャウジャと身を潜めている。ゴブリンやトロール、オーガや巨人がいる。ここで野営をしたらどうなるか分かるか?もし、火でも焚けば魔物に完全に囲まれるだろうな。」


「は?火は逆に魔物を遠ざけるんじゃないのか?」


野営の準備に取り掛かろうとした男は自分の知識を確かめるが如く出発しようとする男を見上げる。


「魔物が火を恐れるのか?」


それ本気で言っているのかと言わんばかりに目を見開いた。


「プッ、ハハハハハハッ。」


そして、腹を抱えて笑った。勿論声を大きくすれば直ぐに魔物に気づかれるので声を出来るだけ抑える為に手で口を覆いながら笑った。


「何が可笑しい?」


「普通に考えてみろ?なぜ魔物が火を怖がるんだ?銃を持っている人間でさえ簡単に捕まえられる程の知能は持ってるんだぞ?それに、火は簡単に水の魔法を使われて消されてしまう。奴らは暗闇の中で動けるからな。俺たちはまるで雑草のように刈り取られ、そして最後には魂ごと喰われてしまうんだ。」


それを聞いた野営をしようとした男は直ちに片付け始めた。


「マジかよ…。そりゃ、知らなかった。じゃあ、もしここが本来通るべきルートと違うなら俺たちはもう魔物に囲まれている可能性があるということか。」


「ああ。もう既に本来通るべきルートからは外れている。もういつ襲いかかれてもおかしくはない状況だ。それに、俺らは遭難中だ。正直言って助かる可能性は皆無だろう。」


「マジか…。」




まだたったの数分が経過しただけだ。だが、先程よりさらにその異様さが強まっている気がする。もう囲まれているのだろうか。二人は生き延びたいという願望の為に最大限に頭を働かせようとする。



「この感じは…。」


二人で今後どう山小屋まで行くかを検討し始めた数分だけ経過した。急に生暖かいそよ風が流れてきた。そして二人はこの異様な空気をすぐに感じとった。


「間違いないだろうな。俺たちはもう逃げ道がないらしい。どの方向からも殺気が漏れてくる。」


「だから言ったんだ!森は危険だから行かない方が良いってな!」


「だが、この森に入らなかったら間違いなく 公安に捕まるところだったじゃねぇか。」


一人の男はもう一人の男性の胸ぐらを掴み腕に目一杯力を注ぎ込んで持ち上げようとする。本来なら身体が胸ぐらを掴んだだけで持ち上がる事は無いが、彼等は盗賊団の一味故にそれなりに鍛えてある為、簡単にもう一人の男を持ち上げる事が出来た。


「それでもだ。わざわざこんな危険を侵す必要は何処にも無かったはずだ!それに、お前が迷わず山小屋に辿り着けるという絶対の自信があるからこそ、俺はついてきた。そしたら迷って夜になっちまって、それに命の危険に晒される事になった。辺りは魔物がウジャウジャいる。もう助かる道はお前のせいで無くなったじゃねぇか‼︎」


「うるせぇ!その前に他の仲間と逸れた要因はお前にあるだろう⁉︎」


本当はここで喧嘩をしている場合ではない事は分かる。しかし、こんな事になる経緯を踏まえると二人は責任を押し付け合わずにはいられなかった。


「何だと⁉︎」


「最初の合流場所に何故行かなかった⁉︎最初の合流場所までに公安を撒いてそれから流達と合流するはずだっただろう?なのに、お前は公安に追いかけられていないにも関わらず合流場所に一度たりとも行こうしなかったじゃねえか!」


「お前まさかまだあんな奴らの方を持つ気か?冗談じゃない!あいつらは今回の作戦で完全に俺達を囮に使ったんだぞ⁉︎その時点で俺達を仲間だとは思っていないだろうな。」


「いや囮じゃねぇ。リーダーは俺たちが公安から逃げ切れるからこそ俺たちにこの役割を与えたんだ!俺たちにしかこの任務は出来な…」


もう一人の男は男の言い分を聞いていたがその言い分を遮って自分の意見を言った。


「確証はあるのか?リーダーが俺たちを囮に使っていないという確証は?」


「じゃあこっちも聞かせてもらうぜ。お前は俺らが囮に使われたという確証はあるのか?」


すると、囮に使われていると考える男の方は黙ってしまった。このままでは永遠に争い続ける気を二人は感じた。もう既に魔物の気配がすぐ側まで迫っているというのに。


「…。」


男は反論出来なかった。何も言えなかった。


「だろ?」


その言葉を言った瞬間、男の頭は消えた。

そして、首から下の体は動かなくなり、そのまま倒れた。


「お、おい…。あ…あ、あ、あ、あ、頭が、頭が! 頭がぁああ‼︎」


「人間!人間!人間!ニンゲン!ニンゲン‼︎ニンゲェェェン‼︎」


いつの間にか周りは魔物に取り囲まれていた。魔物は二足歩行をしているもの、四足歩行しているもの、牙が生えているもの、犬の形状をしているもの、角が生えているもの、形状がないもの、多種多様だ。


「うわぁあああああああ‼︎」


出来るだけ逃げようとするが脚が動かない。身体が震えている。


「止めろ‼︎来るな‼︎近寄るな‼︎俺は死にたくない‼︎」


男は只々叫んだ。叫んでも無意味である事を知りながら。そして、男は思った。なんて人生は不条理なんだろうと。


「あーあ…、俺の人生…つまらなかったな…。」


魔物は全方位から男を取り囲むと数秒足らずで男の体に噛みついた。血が辺り一面に飛び散った。男は、もう叫ぶ事もしなかった。


数時間が経ち、夜が明けた。辺りは木の葉がカサカサと揺れて、薄い霧に覆われ、人の気配は一切無かった。




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