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傷心3 変わる想い

ある夜。

俺は布団の中で寝ていた。

いつものようにティアのことを思い出し、涙で枕を濡らしていた。


さすがに子供達と寝ながら泣くのは恥ずかしかったので、俺はなるべく離れて一人で寝ていた。


ゴソッ


(!?)


何か温かい塊が布団に入ってきた。


多分、また猫耳っ子だろうと思った。

子供達はかなり距離があってもコロコロ転がってくるのだ。


(でも、なんだ…ちょっと大きいな。子供にしては大きくないか?)


俺は泣くのを一旦やめて、目を開けて布団の中を見ると…


な、なんと…


子供じゃない…リンだった。


「ど、どどどっ、どうしたリン?布団間違えたのか?」

「違うにゃ」


「?」

「寒いから一緒に寝ていいにゃ?」


ニコッと笑うリン。

ほっぺにえくぼが出来ている。


(かわいいな)


「いいけど…」

「ありがとにゃ。夜は寒いにゃ」


リンは俺の傍で寝る。

一緒の布団で寝るのだ。

一人用の布団なので、ほぼ密着した状態になる。


モフモフした猫毛とポカポカした暖かさが伝わってくる。

さっきまで感じていた寂しさ、ティアの悲しみが消えていく。

涙も乾いていく。


「リン、お前…あったかいな」

「獣人族はあったかいにゃ。エクトは熱くないにゃ?」


「大丈夫。ちょうどいいよ」

「よかったにゃ」


「ポカポカするな」

「エクトも温かいにゃー」


リンがふざけてぎゅっと抱きしめてくる。

肉球で頭の背中を撫でる。

彼女の猫毛がほほにあたってくすぐったい。


「こ、こら、リン、少しくすぐったい」

「我慢するにゃー」


「そう…だな」


俺はリンにぎゅっと抱きしめられながら、彼女の猫耳を見た。

すごくピクピク動いていた。


(気になる…)


「なぁ、リン」

「なんにゃ?」


「猫耳ってどういう時に動くんだ?自分で動かしてるのか?」

「違うにゃー。自分でも少しは動かせるけど、たいてい勝手に動くにゃー」


「たとえばどんな時だ?」

「嬉しい時とか、楽しい時とか、緊張したときとか…色々にゃ。心が動いたときにゃ」


「そうか…」


なら、今リンはかなり心が動いているようだな。

猫耳が激しくピクピクしている。


なんだか気になるので猫耳を触ってみた。


ピタッ


「にゃっ、にゃにするにゃ!?」


ビックリするリン。ビックリン。


「すごく動いてから触ってみた」

「あまり触っちゃダメにゃ。しっぽと猫耳は敏感で、くすぐったいにゃ」


リンは恥ずかしそうにする。

猫耳もよく動く。


「悪いな」


俺は直ぐに猫耳から手を離そうとするが…その前にリンが。


「でも、エクトは触ってもいいにゃ。特別にゃ」

「そ、そうか…ありがとう」


俺は手を離すのをやめ、リンの猫耳をモフモフする。


(なぜだろう、触っていると心が落ち着くな)


リンの猫耳は右が茶色、左が白色。

色違いの耳で、感触も僅かに違う気がする。


(この差、なんだか気になるな…)


俺がモフモフと両耳の感触の差を探っていると。


「エ、エクトぉ…そ、そんにゃにぃ…触っちゃ…ダメにゃぁあ」


顔を赤らめ、恥ずかしそうにするリン。

気づくと彼女の息が荒くなっていた。

はぁーはぁーしている。

気のせいか、体温も上がっているようだ。


(少しやりすぎたかな)


「リン、ごめんな」

「か、加減してくれたらいいにゃ」


「そうか。ならもっと優しく触るな」

「んにゃっ。優しくにゃ」


「分かってる。繊細に、ゆっくりと、慎重に。大事なものに触れるように触るよ」


俺は慎重に猫耳を触るが…それだけだと物足りなかった。


もっとモフモフしたかった。

もっと猫耳を感じたかった。

もっと近づきたかった。


で、思いついた。


「リン、敏感ならもっと大切に触るよ。さらに優しくなっ」

「にゃ?」


ピクッと顔を上げて、不思議そうに俺を見るリン。

俺の言葉の意味が分からなかったのかもしれない。


「動くなよ、リン」

「?」


俺は指の腹でサーっと猫耳の付け根から天辺まで撫でる。


触れるか触れない感触。

絶妙なタッチで触れる。

まさにバードタッチ。


「にゃぁぁぁあ~~~」


リンが力が抜けるような声を出す。


俺は指の腹でリンの猫耳を味わう。


(うん。柔らかいな)


(わずかに指腹を押し返してくる、リンの猫耳の振動)


「エクト、だ、だめにゃ、そんなに風に触られたら…だ、だめにゃ…やめてにゃっ~」


顔を赤くして興奮するリン。

さらに息が荒くなる。

はぁーはぁーと息遣いが聞こえる。。


(なんだリン?もしかして耳が弱いのか?)


(ただ耳を指で触っているだけなのに)


俺はさらに指を動かす。


サラーーーー


「んにゃっ!?」


ビクッと震えるリン。

腰を浮かす。

同時に、猫耳がビクビクと動く。


(なんだ、凄く心が動いているようだな)


さらに猫耳をバードタッチする。


「ふにゃにゃ…エクト…やめてにゃ…そうしないと…が、我慢できないにゃ」


(んっ?我慢?)


「もう…だめにゃっ」


次の瞬間。


ガブッ


(!?)


リンが俺の首筋にかみついた。

牙が刺さった。


(えっ、噛まれた?って、い、痛いっ!)


わずかな痛みが首筋に走った。

だがすぐにリンは口を離す。


「エクト、ごめんにゃー。あたし、興奮すると噛んじゃうのにゃ。野生の血が騒ぐにゃ」


「そうか…」


(猫の血がまざっているのだろう)


(でも、あまり痛くなかったからな。問題ないっ)


どちらかというと気持ちの良い範囲だ。

それにリンは欲求不満のようにソワソワしている。

ここはリンの不満を解消する方が大事だろう。


「大丈夫だ。リン、噛みたいなら、好きなだけ噛むと良い。挨拶みたいなもんだ。恥ずかしがることじゃない」

「い、いいにゃ?」


「勿論だ」

「歯型がついてるけど、ほんとにいいにゃ?」


サワサワと、噛んだ場所を肉球でさするリン。


「大丈夫、それぐらいの痛みなら関係ない。俺は冒険者だ」

「にゃら、遠慮なくにゃ」


ガブッ


リンは俺の首筋にかみついた。

甘噛をしながら、唇を動かす。

仄かな刺激が首筋にはしる。

ピリッと刺激的だ。


(痛みもあるが…なんだろう…リンの気持ちが伝わってくるな)


(卑猥とか、性的とかそういう意味じゃなくて、子供が指を吸うのと同じ感覚なのかもしれない)


(リンが一生懸命噛むことで、俺を求めているのが伝わってくるのだ)


(安心を求めて噛んでくるのが)


だから俺も…


パクッ


リンの猫耳を優しくマッサージする。


「んんにゃっ!」


リンがピクッと動き、反射的に俺の首筋を強く噛む。

口から動揺が伝わってくる。


ピクリとする刺激だが…


(これもありだな)


刺激に押され、俺はさらにリンの猫耳に触れる。

するとリンは、ピクッと腰を浮かし、時より強く俺を噛むのだ。


「にゃにゃ…」


涙目で甘い声を出しながら、俺を見るリン。

俺は目線で意味を送る。


(ごめんな。次は気をつける)

(にゃ)


リンは頷く。



こうして俺とリンは、お互いに慰めあった。

布団の中でリンは俺の首筋に噛み付き、俺はリンの猫耳に触れた。


なぜだかこうしていると落ち着いた。

今までよりも、リンと深い仲になれた気がしたのだ。

リンの存在を強く感じたのだ。



そしていつしか、俺はゆっくりと眠っていった。

リンの温もりと、フワフワした柔らかさ、ほのかな痛みと口の感触、温かい心遣いで癒されながら。


俺はついにティアのことを思い出すことはなかった。

さっきまで泣いていたのが嘘のようだった。


俺は久しぶりにぐっすりと眠れたのだ。

こんな夜は久しぶりだった。




朝起きると、布団の中にリンはいなかった。

もう起きて朝食でも作ってるのかもしれない。

でも首筋には、くっきりとリンの歯型が残っていた。


昨夜のことは夢ではなかったのだ。

確かに現実だったのだ。

リンが残した痛みが、ティアの痛みを上書きした。




こうして俺は、何度かリンと一緒に添い寝した。


夜寝る時が一番寂しく、ティアのことを思い出して心の傷がうづく。


それは毎晩ティアと2人きりで会っていた時の名残。

俺が一日の収穫を渡すとティアが優しく抱きしめ、頭を撫でてくれたから。

それが一日の楽しみだったから。


でもリンと一緒に添い寝することで、心の傷は癒えていったのだ。

新たな楽しみが過去の楽しみを忘れさせてくれたのだ。




そうして数日経てば、もう突然泣くことはなくなっていた。

ティアの傷から俺は回復し始めていたのだ。


まぎれもなくそれは、リンと子供達のおかげだった。

だからこそ、俺は孤児院でやり直せると思った。


ティアの傷を癒し、彼女を忘れ、やり直せると思ったのだ。





だがそんなある日。

事件は起こったのだ。




俺が孤児院の玄関で掃き掃除をしていると…見知った顔が現れた。

元同じパーティーのちっちゃな女の子、ウィズが現れたのだ。


ウィズは慌てた様子だった。

そして俺を見て叫ぶ。


「エクト、探したのですっ!大変なのですっ!ティアが、ティアが大変なのです!魔物に殺されちゃうのです!」


俺は衝撃を受けた。

数日振りにウィズを見たのもそうだし…彼女がティアの名を叫んだからだ。


(ティア…俺を…この俺を傷つけた…女の名前を…)


(せっかく…せっかくリンが…ティアのことを忘れさせてくれたのに…)


(その名を…俺に…いうなんて…俺にその名を聞かせるなんて………許せないっ!)


だから俺は叫んでしまう。

ウィズに嫌悪なんてない。

俺はウィズのことは仲間として好きだ。

不思議っ子だが、細かいところで優しく、仲間思いの彼女を。


俺がティアとグラントの衝撃シーンを見て宿から逃げる時、お菓子をくれようとした。

あれはウィズの優しさだったのだろう。


仲間思いのウィズだ、

多分、ティアのことを心配してここに来たんだと思う。

純粋に仲間のことを心配して。


でも…でも。

今の俺はティアのことなど思い出したくない。

その名前も聞きたくない。

ティアを忘れたいんだ。


(せっかく…せっかく吹っ切れたと思ったのに…リンのおかげで…次に…次にいけると思ったのに…)


(ティアから離れて……ティアを忘れて生きていけると思ったのに…)


(なのに…なのに…ティアだと……あの女の名前…俺を傷つけた女の名前を……)


(俺に…この俺にその名を…その名を…呼ぶんじゃねぇえええええーーーっ!!!)


だから俺はウィズに叫んでしまった。

悪いと思いつつも叫んでしまった。

想いのたけを叫んでしまったのだ。



―――「知らん!勝手にしろっ!俺は孤児院の運営で忙しいっ!!!」




エクトの叫びを聞き、ウィズはキョトンと硬直したのだった。



WEB拍手&感想&評価ありがとうございます。


やっと短編の終盤まできました。


次回、他のメンバー視点です。

ウィズが孤児院に来ることになった経緯です。


ここからは短編には無い内容になります。



■追記

再度、検索除外になりました。

現在、r15以内の内容に修正&確認中です。

OKが出次第、続きを投稿したいと思います。


■1/12 追記

無事、修正終わり、OKもらいました。

検索除外解除です。

本日夜から、投稿再開します。

※変更部分は1,7話になります。

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